特大


ア・ラ・カルト

ホーム > ア・ラ・カルト > 本州製紙(株)栖原亮社長にインタビュー (昭和51年)

1976-10-15(第26号) 本州製紙(株)栖原亮社長にインタビュー (昭和51年)

栖原亮本州製紙社長
栖原亮本州製紙社長

段ボール原紙からケースに至るまでの安定価格を目指す第三次値上げ問題がいよいよ"正念場"にさしかかった折柄、本紙では14日、本州製紙栖原社長にインタビュー、当面の情勢並びに今後の見通しについてお話をうかがった。本州製紙は現在、釧路工場でマシンー台(三号機・中芯)の中質紙への転抄、並びに晒パルプ(BKP)設備の建設計画を推進中であり、また最近伝えられる財務体質の改善計画、及び明春に予定される第四次値上げに伴う国内Kライナー価格の国際価格への接近など、それに古紙価格の安定問題等、話題が山積しているため、それらについても幅広くお話をうかがった。以下、紙面構成上、第2めん、第3めんにもまたがって対談内容をお伝えする。なお、注目の明春の価格改訂について、「本州製紙は"何月何日からこうしたい"ということを少くとも年内には打出したい」と語った。

−−本州製紙の釧路工場は、これまで段ボール原紙専抄工場ということでしたが、今年に入って晒パルプの製造、マシン1台の中質紙への転抄などの計画が伝えられております。まず、この点についておうかがいします。

段ボール原紙専抄工場からの転換
栖原 段ボール原紙の設備能力は、ご承知のように、現在かなり過大な状況になっております。幸い、今年に入って、需要も相当回復して参りまして、今年末の需要期には更にもう少し出るんじゃないかと思っておりますが、しかし、それにしても、中期的にみてやや過大であるということから、四台あるマシンのうち一台を中質紙に転換することに決めたわけです。その背景には、実は、釧路工場における原料問題がありましてね。
昭和40年代は、段ボール原紙の需要が年率15%ぐらいの割合で伸びるという状態でした。ですから、その量を間に合わせる供給体制がわれわれメーカーの責任だということで、各社さんとも増設・増産に努力されたわけです。ところが、48年の石油ショックで、49年、50年は逆にマイナス成長に変ってしまった。そこで、大きなパニック状態がこの業界では起ったのです。
それまで量を追うことに専念して参りましたから、釧路工場でも発足の当初は道内の材だけでまかなっていたんですが、どんどん、どんどん拡張を重ねて、これはもう日本全体がそうでしたが、現状では輸入チップへの依存度が、日本全体で40%以上に達するという状態になりました。

結局、国内材はもうこれ以上増産できなくて、増量分はどうしても輸入材でまかなわなければならないということで、本州製紙も、パプアニ・ニューギニアに原料チップ工場を作って、まあ色んな努力をしながら原料を世界中からかき集めてきたわけです。その結果、釧路工場の輸入材依存度も非常に大きくなって、50%は輸入チップというような状態になりましたが、その中には、皮をはいだ上質なチップ、従って高価であるというものも相当量入っている。という形になりますと、いまの段ボール原紙の売価が仮りに正常化しても、そういう高い原料を使っては仲々ソロバンがとりにくいという背景も出てきます。

加えて、この春から、段ボール原紙の中に、一部古紙を混入して使うという体制をとり出したわけです。そうしますと、そこでまた原木・チップを煮る木釜に余力が出てくるという事情があって、そこで私の方としては、余力の出来た一本の木釜は上質のチップを使って晒パルプを製造することに決めて、それも来年から動くわけです。本州製紙全体では相当量の晒パルプをこれまで購入して使っていたのですが、それを自製するということです。
それから、もう一つ、4台あるマシンのうちの1台を中質紙に転抄します。中質紙は江戸川工場と富士工場で抄いておりまして、一部不足分、主として中質紙ですが、この不足分は海外から輸入して得意先のご要望に応えているというような状態ですから、かねて印刷用紙を増産しようとも考えていたわけです。
そこで、釧路工場の段ボール原紙の設備に、若干の余力が出てきたのを機会に、思い切って中質紙に転換して、既存ルートの得意先の需要の「増」のご要望にお応えようと考えたわけです。
同時に、いま申し上げたように、やや付加価値の高い紙を抄いて、釧路工場の収益向上に役立たせたいというのが、私どもの基本的なネライなのです。

そういうことで、段ボー原紙は四台のマシンのうち一台分の能力が減りますが、私どもは関連の段ボール原紙会社を持っておりまして、例えば北海道でいうと天塩川製紙、北見パルプ、それから九州には佐賀板紙、さらに最近われわれの系列に入ってきました鶴崎パルプ、ゴ—ルド製紙−−こういう系列の会社がありますので、そちらの方の能力を動員すれば、仮に、いままで通りお客様の需要が増量になっても、ご迷惑を掛けることはないという考えで、思い切って釧路工場の計画に手をつけたのです。
来年の春から中質紙マシンを動かしたい、同じころBKPの生産もはじめたいということで、いま一生懸命にすすめているところです。

−−そうしますと、たとえばKライナーの需要が増加して、能力に余裕がなくなったという場合にはいかがでしょうか。

栖原 四号機の能力アップを考えておりますし、さらに、たとえば中芯原紙は天塩川、北見にも能力がだいぶん余っておりますので、そういうところで抄かせて、釧路工場は、将来はクラフトライナー専抄工場というような姿もとり得るし、まあ、需要の今後の動向によって、いかなるご要望にも応えられる体制がとれると思っております。

−−次に、当面の原紙市況の問題ですが、今春以来、たとえばジュートライナーではごく短期間に一次、二次、三次と三回も、またKライナーも既に2回の値上がりをみております。市況の変り目からの急激な変化が注目されますと同時に、いわゆる"川下"に行けば行くほど、或いはユーザー段階では特に、去年あったこと(反落)が今年もまた来るんじゃないかといった懐疑がまだ残っているかと思います。そこで、当面、この年内一ぱいぐらいの原紙市況について、栖原社長のご判断を伺いたいのですが。

栖原 いまのご質問の中で、特に重要なことは、昨年起ったようなことが、これから年末にかけて起るんじゃないかというような心配——これは100パーセントありません。私はこれは断言してよろしいと思います。
ご承知のように、メーカーは、二年半以上に及ぶ赤字経営を続けておりまして、経営はもうぎりぎりの断崖絶壁に立っているといってもいいくらいのものです。われわれ紙のメーカーというのは、段ボール原紙を安定供給する責任があるわけです。安定供給するためには、紙の再生産に必要な価格がとれなければ、どうにもならないということですね。

たとえば、非常にまともな経営をやってこられた中型の原紙メーカーさんが、仲々独力では経営が難しくなってきている、あるいは大メーカーの傘下に入るとか、系列化とかいうような動きが随所に起こったことはよくご承知だと思います。そういうことでありまして、何といっても、再生産に値するよう価格がとれるようにならなければ、とても、もう業界はやっていかれないということで、話し合いの場というのはずっと持っているんですよ。ただ、需要が余りにも極端に落ち込んでしまって、40%も50%も操短しなければ需給が均衡しないという状況ですから、生産をしぼる、それぞれ自主的に生産をしぼるといっても、自ずと限界があって、絶えず過剰生産という背景だったものですから、原紙の市況があのようにガタガタに落ちてしまったのですね。

加えて、段ボール業界でも相当シェア争いの過当競争があったということは事実だと思うのです。しかし、この春からは確実に段ボール原紙の市況が回復してきた。というのは、需要量がはっきり定着してきましたね。大体、三月ぐらいからは、五億平米台に段ボール箱の需要が漸く定着する、とい形がずっと進んできました。そういう状況の変化をみて、もうこれ以上、こんな赤字経営を続けていられないということで、段ボール業界にもわれわれ色々お考えを伺った上で、まあ一次、二次とかおっしゃるけれど、一次、二次なんていうのは文字通りの復元ですよね。例えば、ジュートライナーを例にとってみれば、今年のはじめには恐らくキロ75円ぐらいだったのではありませんか。それが50円そこそこにまで落ち込んで、まあ五月に55円になり、六月に65円になりということですから、一次、二次といっても、これは復元のごく一部です。
それで、まあ三次といわれているんですが、私はどうもこういう一次とか、二次とか、三次というのはあまり好きじゃないんですが、実際には、三次ではじめて今年のお正月より幾らか高いということなのです。

ジュートライナーをひとつ例にとって申し上がましたけれど、そういうことですから、例えば、こんどの秋の値上げを完遂しましても、われわれ段ボール原紙業界は水面の上に顔が出せない状態なのです。この秋の値上げで、水面の上に顔が出せて、安定経営ができるような線に本州製紙としては持ってゆきたいわけだけれど、これまでの混乱がひどすぎて、そこまではよう持って行けなかったから、まあ一応これで引き下がって、ただし、これはぜひ呑んでいただきたいということで、いま色々お話しているわけです。
勿論、年か変りましたら、できれば来年からは価格改訂というのは年1回にしぼりたい、私は個人としてはそう思っております。1回にしぼり切れないで、2回ぐらいになる可能性がないとは申せませんが、可能な限り年1回にしぼりたいと考えております。

われわれには、それは色々なコストアップの要因が出てきます。例えば、電力料金が上がるとか、物流経費が上がるとか、手近かには国鉄運賃の値上げにともなう物流経費などですね。その他諸々のコストアップ要因がどんどん出てくるから、こういう環境の中では、やはり年1回は値段を見直さなければ、われわれの経営はできません。来年、一ぺんはぜひ価格改訂をお願いしたいと思いますが、とりあえず、いまの第三次の値上げは、段ボール業界のご理解も得て、まあ大体浸透できると、そう私は見ているわけです。

−−その辺の決着がどうつくかについて、特にケース段階などでなお懐疑的な心理が残っているのが現実の問題なのではないかと思いますが。

栖原 そういうことは確かにおありだと思いますがね。たとえば「川下をよくみて、川上から水を流してくれ」というようなことをおっしゃるわけですよ。しかし、冒頭に私が申しあげたように、段ボール原紙業界の経営は、もうギリギリの限界まで来ています。これ以上経営の状態が悪くなったら、それこそ倒産が方々に出る。水が流せなくなってしまう。だから、川下のことも十分気を使いますけれども、水が流せるようにして下さいということです。やはり、段ボール原紙がなかったら、この業界は成り立たないんですから、原紙が抄造できる状態にして下さい、それだけの価格を我々に取らせて下さい、ということです。
そのためにも、我々は、例えば本州製紙の場合は「一貫メーカ—」と称されていますね、系列の段ボールメーカーを持っておりますから。その私どもが率先して段ボールケースの値上げに全力を尽しますということで、いまやってきているわけです。まあ、まだ色々難かしい問題があると思いますが、これをやり通さないと我々の経営が成り立たないのです。

私どもは、紙だけよければいいということは全然考えません。紙と段ボールは完全に二人三脚で行かなければならないのですから、充分に話合いもしましょうという形の中で、まず紙が安定経営できる、その上に立って、段ボール業界も安定経営ができることを二人三脚でやって行きましょうと、色々呼びかけもしているのです。

−−先ほどお話の出ました明春の価格改訂問題については、巷間でもいろいろ伝えられておりますが、一方で、まだ責任ある当事者から公式に宣明されたものは何もないようです。これについてはいかがでしょうか。

栖原目下のところは、明年の春、価格をいくらにするかというところまでは、まだ本州製紙は煮つめておりません。勿論、われわれの頭の中には大体の数字が浮んではおりますけれども、もう少し、もろもろの様子を見た上で、年内には、明年の何月何日からこうしたい、ということは打出したいと思っております。

−−一説には「Kライナー120円」という話も伝わっているようですが。

栖原 まあ、クラフトライナー120円ぐらいの線が、いまの段階では、国際競争力を考えた上で妥当な価格ではないかと思っておりますが、しかし勿論、それにまだ決めたわけではありません。

−−その国際価格との関連の問題でございますが、国内価格が国際価格と接近してくれば、当然、輸入という問題も拡大されてくるかと思います。こういう原紙の輸入についてはどう判断しておられるのでしょうか。

栖原 段ボール原紙の輸出余力のある国は、いまは、もうアメリカだけですね。少なくともヨーロッパでは、段ボール原紙のような原料を余計使って付加価値の低い紙は余り抄造しないし、もちろん輸出など考えられないという情勢になっているかと思います。しかし、そのアメリカでも、今のところ、やや景気も中だるみの状態のようですが、景気が完全に定着してくれば、段ボール原紙はむしろ足りなくなるんじゃないかという風に私は見ているわけです。いま現在は、この春に相当作りすぎた、国内景気は中だるみだということで、クラフトライナーについても若干輸出余力を持っているようで、あるいはチョコチョコ安いものが入ってくる可能性がないとは申しません。しかし、先ほどお話ししました明春の価格改訂に見合うものは大体いける−−つまリアメリカ品とおっつかっつの値段だと、そう思っているわけです。

ライナーは輸入しにくい紙
それから、将来、特殊な輸出品の包装用に、ある決まった米坪で、決まった寸法のもの等の輸入は、これはあり得るでしょう。しかし、段ボール原紙というのは、元来が輸入し易い銘柄じゃないのではありませんか。新聞用紙のように、米坪が決まっている、寸法も決まっているというような紙ではありませんから、米坪もバラバラ、寸法もバラバラだし、だから表面上、キログラム当りの単価が同じだから、では輸入に切替えるかということは、ちょっと難かしいのではないでしょうか。非常に特殊なものに限定される可能性が強いのではないかと思います。
新聞用紙のような紙にしましても、新聞社さんにとっては日常の主食ですから、これを向うの紙に頼っているということは膨大なストックが要るし、そして、ストライキがはじまれば、日本と違って向うは相当長期に及びますから、主食はやはりあくまでも日本のメーカーに頼らざるを得ないのではないでしょうか。段ボール原紙の場合は、その度合いがもっと大きいと私は考えております。

しかし、もちろん、われわれの今後の価格設定については、国際比価という事柄は絶えず念頭に入れておかねばならないと、そう思っております。ですから、私の方では国際価格の動向を絶えず慎重に見ております。

−−市況問題とも直接絡む事柄だと思いますが、先日、日本経済新聞に出ました本州製紙の「財務体質改善」のご計画についてはいかがでしょうか。

栖原 あの日経の記事は、ウチの財務担当の役員が申し述べたことを、ある程度、向うさまの判断が入った中でお書きになっていらっしゃるわけでね(笑)。いまここで具体的な数字は申し上げない方がいいかと思います。要するに自己資本比率が非常に低いから、そういう角度からは、財務体質を今後改善してゆくことは経営者として当然考えなければならないことです。いま色々と作業を行なっておりますが、ちょっと新聞にやや先がけて出されたもので(笑)、いま私という責任者の口からはっきり数字をこうだ、ああだと申し上げる立場は、いまのところないわけです。
しかし、いずれにしても、財務体質をよくしなければいかん、非常に借金過多だということで、財務体質を長期にわたって良くするとい計画の具体化は、いま急いでおります。
それとウラハラに、つまり財務体質の改善という問題と、もう一つは、更に借金が増えても何か色々設備投資をしなければならないという裏腹の問題があって、そこら辺がこれからの非常に難かしいところです。

−−昨晩、たまたまテレビで映画の「ゴッドファーザー」の放映がございまして、明日お目に掛る栖原社長はこの業界のゴッドファーザーではないかと思ったりもいたしましたが(笑)。

栖原 あなた、それはとんでもない話です。この業界はみんなドングリの背くらべでいるわけですよ。それはね、ほかの銘柄でもそうです。完全にリーダーシップのとれるようなメーカーはいないですよ。上質紙だってそうです。みんな群雄割拠というか、むしろ弱小乱立といっていいかも知れません。特に段ボール原紙業界というのは、構造的にも非常に複雑ですよね。大・中・小のメーカーがある。原木・チップからの一貫メーカーもあるし、あるいは古紙を主体にしたジュートメーカーさんもあるし、古紙を主体とした特芯メーカーさんもある。クラフトライナーだけなら問題ないですよ。そうじゃなくて、いろいろな体質のメーカーさんがあるし、背景には商社さんも存在するという非常に構造の複雑な業界です。
ですから、誰か一人の指導者がいて、リードしていけばいいとというような、そんな全体主義的な考え方なんか、出来るはずがないです。そうい体質は全然ないですよ。しかし、あくまでも協調の場というのは一番必要ですね。どういう場所が必要かというと、我々紙のメーカーと、段ボール業界とが、絶えず接触して相互理解を深める、お互いが安定経営ができるようにしよう。もう一つは、我々の原料の古紙業界などとも、絶えずわれわれが接触するというような、話し合いの場がどうしても必要です。いまそれを盛んにやっておりますけれども。

−−大分むかしのことになりますが、本州製紙が釧路工場を開設されて、その後、幾年も経たない頃でしたが、「本州段ボール構想」というものが伝えられて、私もその記事を書いたことがあるのですが、当時、大変、壮大なご計画だと感じもし、また日本の産業構造が米国と同じように、将来はそうした方向に進んでくるだろうと思いまして、以来、本州製紙の段ボール加工事業の展開を見まもってきているわけです。世間一般には、本州製紙が加工まで出るのはけしからんという声も、実際問題としては多いかと思います。本州に限らず、製紙メーカーが段ボール加工部門をもつことに対して、段ボール専業の方々の抵抗は非常に強いようです。しかし、その一方で、これとある程度矛盾したことになりますが、政策的な立場からして、レンゴーに匹敵する規模の安定勢力が段ボール業界にできないものかというような声も、現実にあるか存じます。いま現在、本州製紙の段ボール加工事業に関しましては、事業所数もかなり沢山お出来になったわけですが、レンゴーさんの一元的な会社組織にくらべますと、業界全般の声といたしましては、レンゴーと並び立った加工事業という具合には、必ずしも受けとっておられない部分があるかと思います。今後、本州製紙として、当然、加工事業の強化の方向に行かれると思われますが、どういう方向にこれが進んでこられるのか、段ボール業界全般のみなならず、ユーザー段階でも、代理店段階でも、おそらく最大の関心の一つではないかと存じますが。

栖原 私がいつもいっていることは、本州製紙は紙のメーカーである、段ボール原紙という素材を売ることが主体の仕事だといっているわけです。やや、私どもの方のグループの加工を世間は過大評価していらっしゃると思うのですが、私の方の紙の全生産のたかだか20%ぐらいしか使っていないのです。そして、その上に申し上げたいことは、いま日本のコルゲーター能力というのは、いまの実需からみれば相当過大な情勢です。もう新しくコルゲータを増やすということ、スクラップ&ビルドは別にして、新しく増やすということは日本の産業的にみてマイナスですね。もう既に過剰設備があるんだから。
そういう角度から申し上げて、私は、私の方の加工事業のジャンルを更に急速に伸ばすということは考えていないんです。

しかし、おっしゃるように、幾つかの安定グループが出てこないと、この業界はいけませんよ。レンゴーグループさんだとか、大王グループさんだとか、大昭和グル—プさんだとか、高崎グループさんだとか、そういうグループがやはり出てこないと、この業界は仲々安定しない。だから、資本関係は出来なくても、われわれが経営権は持たなくても、友好的な段ボール加工メーカーさんというものはだんだん増えて行く、ということは考えられると思うのです。
各グループでですよ。本州グループだけではなしに。そういう中で、安定勢力を増やして行くという形は、いやでも応でも、今後出てくると思います。
何といいますか、いまはまだ過剰設備が背景にあって、原紙の製造設備もそうだし、コルゲーター能力もそうだし、そういう中ですけれども、おそらくあと二、三年経てば、世界的にみて紙はだんだん足りなくなるでしょうね。そういう中で、やはり紙の安定供給ということが段ボール加工業の方々が一番希求されるところだから、どうしても寄らば大樹のかげで、自然に友好グループみたいなものの幹が太ってくる、ということは進まざるを得ないのではないかと思います。私どもは、それを不自然に、幹を太らせるということは、いま全然考えておりません。

日本の資源として古紙は非常に大事
−−次に、国内の資源問題についてですが、栖原社長は日本製紙連合会の古紙部会長もつとめておられます。さる48年のパニツクの際、原紙も上がったけれど、古紙はそれ以上に値上がりしたということで、一時はキロ60円のような気違い沙汰の現象も出て、何とかこれをコントロールする方法はないものかといわれました。最近、また段ボール古紙が30円の呼び値がかかる状況になりまして、メーカーが価格安定にのり出すという場面を迎えております。この古紙価格の安定は可能なのかどうか。

栖原 古紙の回収率は、大体、いま40%といわれています。これは段ボール原紙関係(段ボール古紙)だけのことではなくて、古紙全般でですが、日本の資源として古紙は極めて大事なものです。この40%の古紙を回収して、恐らく日本の製紙産業の原料の37〜38%を占めている、という状態なのです。
本州製紙は、従来、白板紙を作り、それから一部印刷用紙を古紙だけで作っているということから、新聞古紙については非常に古い、大手のユーザーなのですが、段古紙を使い始めたのは、この春からです。釧路工場に段ボール古紙処理設備を作りまして、全体の紙の中ではたかだか7〜8%なのですが、そういものを使い出しました。
これは数年前からの我々の企画で、幸いに釧路工場の製品を運ぶ専用船が二隻出来たものですから、その帰り船で都会地から釧路に段古紙を持って行って使うという体制をとり出したわけです。

古紙の場合には、各社さんともこの6月から公害規制による水質基準の問題が非常に厳しくなったために、古紙を余計使わなければならなくなった背景だとか、あるいは、われわれのようなクラフトライナーメーカーがごく一部ではあるが段古紙を使うというような形が出てきまして、段古紙の需給が相当逼迫しているわけです。しかし、長期の数字をとってみますと、そう足りないという形ではないわけです。勿論、そう余るといういう形でもない。まあ、段古紙が60円にもなったというようなことは、これは石油ショックのときの非常に異常な状態のことで、石油ショックがさめて、古紙の需要量ががたっと減ったら、こんどは逆にゴミ以下の値段になったという逆の異常状態もあったわけです。
しかし、これからは、高度成長が安定成長に切り替って、それが定着してくれば、向う一年ぐらいの景気というものは、まあ一年ぐらいをみればということですが、多少中だるみだとか、上ったり下ったりはあるだろうが、大体そのゆるやかな上昇でいけるだろうと思うのです。そうすると、大体、ご承知のようなGNP相関関係で紙は伸びてゆくのだから、そう極端な需要のアップダウンはないと見ているわけです。

だから、古紙という一番大事な資源をぜひ安定させなければいかんということで、いろいろなメーカーさんとよりよりお話したり、古紙業者さんとお話したりして、何とか安定する線に持って行こうじゃないかということを、非常に強く考えております。私は必ず安定できるものだと、そう考えております。
それに、いままでは、古紙の買付けにしても、ひとつの会社を例にとってみても、割合にトップ層がそれに関心がなかった、或いは担当だけにまかせておくという姿勢が多かったと思います。しかし、こんどほ非常に大事な原料だということの実感が、みんなの頭の中に入ってきまして、いまは古紙を使う紙のメーカーのトップで古紙に関心の薄い人は一人もいませんよ。それぐらい古紙に関心を持つようになりました。われわれトップの会談の中で、なんとかこの古紙の価格を安定させようじゃないかという空気が澎湃として出ておりますから、私はこれからはそう大きなバラツキなしでいけるんじゃないかと思います。

−−ちょうどいま、この10月という時期が、今回の段ボール原紙からケースまでの一つの安定価格形成の胸つき八丁といいますか、正念場のところにさしかかった状況のようですが、こうした時期に当って、段ボール業界あるいはユーザー業界に対して「こうお願いしたい」と要望される点はいかがでしょうか。

栖原 そうですね。先ほど来、申しあげている通り、段ボール箱を安定供給することがわれわれ原紙なり、段ボール業界の責任なんですから、安定供給できるような価格はぜひ頂戴いたしたいということですね。しかし、同時に従来繰り返したような極端な混乱は今後は絶対に繰り返しません、そういう形を作って参りますということを、特にユーザーさんにご理解賜りたいということで、これは原紙業界も、段ボール加工業界もいま盛んにそれをPRしている最中です。
むしろ、お客さんのご要望ではなくて、われわれの中でのお互いの足の引っぱり合いっこということで、過当競争を繰り返す中で値段を下げたり上げたりしてきました。確かに、われわれの方に充分責任があるわけですから、まあ、一応経済の方もどうやら、安定のメドがついてきたし、もう今後は従前のような極端な混乱を起こすようなことは絶対にいたしません、ということをお誓い申し上げたいと思うのです。