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大日本紙業(株)東証2部上場記者会見(その2)1993-10-30(第603号)

<塗師>それから、先ほどの高収益、たとえば11%、12%というような利益率を9年間続けるという根底のところを、ちょっとお話しておきたいと思います。当社の第31期決算報告の貸借対照表をみますと、その1番下のところの「資産合計」は287億9,220万1千円で、約288億となっております。昨年の12月31日現在で、これは前年(296億6千万円)に比べ少し総資産が減っておりますが、これはバランスシートの貸借の両方にざっと8億円ほどの借入金と預金の両建てがありまして、それを昨年6月の中間決算で解け合いまして、名実ともに無借金経営に切り替わりました。

ですから、負債の部を見ますと、第30期(平成3年度)には短期借入金が8億円となっておりますが、第31期(平成4年度)のバランスシートでは、ここに横線が入って無くなっております。現実には、相当前から無借金経営だったのですが、帳面上にもそうしようということで、銀行のご了解も得て解け合いまして、この形がこれからしばらく続くだろうと思います。

この総資産288億円について、うち約100億円が「余資」でございます。この余資が年間で5.3-5.8%で回っています。貸借対照表の中では、流動資産の項目の預金勘定とか有価証券とかそういうところに約100億円の余資が含まれております。勿論、これだけの余資が出るというのは、資本勘定が総資産288億円のうち200億円を越えて72.5%という資本勘定がこの余裕を作っているわけです。

そして当社は、平成2年にリスクのある運用は一切やめました。ですから、平成2年2月に、上の欄にありました有価証券の中でも株式、あるいは投資信託とか、そういうものを全部売りました。これは東証に上場ということを目指したために、収益の安定ということをしっかり持って投資にのぞもうとしたことが基本でございます。そのおかげで、幸いにしてバブルがはじけた段階での損失は1銭も出なかった状況です。ですから、東証をめざすということを決めた段階でそういう方針をとったのは、全く私にとっては幸運なことであったと思います。

それから、もう一つ、固定資産の中に有価証券が46億-47億円あります。これがいま簿価にして約2%ぐらいの配当収益を支えております。ですから、これの配当収益と、それから余資の100億円とが、いまは低金利時代ですが、何とか5.3-5.8%で回っているというのことが、営業外の収益を底上げして、コンスタントに10%以上の業績を残しているということで、これが私どもの特長です。それから、今期の利益計画ですが、売上高は200億円と前期を若干下回り、経常利益は24億円の見込みです。ぱっと見た目でも12%の経常利益率で、先ほど9年連続になるだろうと申し上げたのはこのことです。

ただ、5月ぐらいからでしょうか、原紙が下がって、そのことが製品価格を押し下げております。従って、200億というのは少し難しいかという感じもないわけではありません。当社としては、結局、今期は減収・増益で終えたいと考えております。本当は、今期は東証に上場して、その弾みをつけてひと回り骨格の大きい、250億円の売上高で、25億円ぐらいの安定的な収益を出せる会社に向けて来年から踏み込むというように内部を指導し、今年4月に東西にトータルパッケージをコーディネートできる専任の部長クラスのスタッフを用意し、組織を分解している最中なのです。

しかし、まだ私は景気が当分悪いだろう、この数年の間、1件も不良債権を出さずに来れたのですが、この不況があと1年半も続くようなら、あと1年間は次の業務拡大への準備期間として足踏みしようということで、この秋の入り口のところで結論を出しまして、これから作る中期計画については、1年間はもう1回、踊り場で足ぶみしようと決めております。ですから、私どもが本当に積極拡大策で具体的に行動をするのは、あと1年先になるだろうと思います。

しかし、この1年の足ぶみは、決して私どもの体力、体質を劣化することにはなりません。このまま行きましても、余資はおそらく増大して行くでしょうし、充分に拡大のための準備ができるだろうと思います。東証上場から順調に会社の経営を考えていたのですが、この春に底入れするだろうとみていた景気が、この春から計算するとまだ2年は不確かな感触で、この悪い時期に無謀な積極拡大策を打つのは自重しよう、この自重できるのも、足ぶみしていても体力が落ちない会社になり切っているためで、そういう方針で社内を指導しているわけです。小さな会計ですが、できれば"いぶし銀"のように光る会社にしておきたいと思います。ご承知の通り、私は長い間商社にいて、ギンギラギンに仕事をして来たのですが、この5-6年で漸く大日本紙業の在り方みたいなものが身につき、また悠々と、しっかり経営をして行ける素地が会社全体の中にも出来上がったと、いまのところそういう自信も持っております。東証上場を厳粛に受け止めて、ますます良い形の発展をめざし、株主と社員のために全力を尽くして参りたいと思う次第です。何かご質問があれば、どうぞ。

<問い>先ほどのお話の余資の問題についてもう少し。

<塗師>バブル前後の財テク失敗の例の中には、余資が沢山あったから、かえって財テクに失敗してしまったという会社もあります。余資ばかりでなく、借金してまでやったとか。しかし、名古屋の会社というのは、結構、歯止めがかかっていたのです。余資のうち何割しかそれを回さないとか。だからウチはいまリスクのあるものは全くありません。平成2年の2月にやめて、いま宝のように持っているのは、その10月に買った5年ものの8%のもの。これはいまだに8%で回っているんですが、ですから余資を100億とすると非常にわかり易いんですが、5.3%で回ると5億3千万円、200億の年収があると、それだけで2.7%ぐらいになるわけです。そのような形になるように会社の経営をリードして来られた名古屋の経済人というのは、非常に多いんです。

その延長線でいうと、余資は幾らあってもかまわない。現実に余資というのは50%近く税金を払った残りのおカネなんです。だから、その形なら、なんぼあっても構わない。私どもの会社が年収200億で、資本勘定が200億というのも、決しておかしくないです。私は、これから先拡大して行くのに、例えば相応の段ボール工場を作ろうとすると40億ぐらいかかるんですね。いつかやりたいと思っています。これはちゃんとファイナンスをして、そこで調達したおカネをコストにして、その段ボール工場を経営させようと思います。いまある余資を投入して、タダのおカネだから構わんじゃないかというような考え方はしておりません。おカネはいま現在、これほど低金利で、公定歩合が1.75%、おそらくこれは未曽有の公定歩合ですが、もう1回下がりますよ。それでも5%をキープできるような余資運用が出来ているわけですから、こんな大切なおカネを使うわけにはいかんのです。

いま、外債を手当てすると、スイスはもういっぱいですが、経費も入れて1.6か1.7ぐらいで出来るんじゃないですか。そのカネで段ボール工場を作るなら作る、しかも独立採算でですね。ただ、営業利益が7%以上回らないとダメです。会社全体が8.6で回っているんですから、新規工場といえども7%以上で回らなければ決してよくないと、そういう指導をするわけです。

まあ、「余資」というのは言葉が悪いですが、私のところは営業利益を出す総資産288億のうち、100億は余資ですから、180億ぐらいの総資産でコンスタントに17億前後の営業利益を出しているという具合にご理解いただけるといいと思います。

<問い>海外の問題についてはどうお考えですか。

塗師実は、当社の課題の中に、海外投資というのは正確にはもう入れてあるんですが、先ほど申し上げたように「いぶし銀のように光りたい」ということであまりケバケバしく宣伝することではないとも思っております。というのも、一つはこの会社の特性だし、包装材料の持っている商品性がそうだろうということでもあるんですが、私どもは芝居でいうと役者ではなく、黒子なんです。私どもの商品の中に大日本紙業という名前はどこにもありません。強いて言うと、箱の底をひっくり返してみると、大日本紙業の「D」というマークがどうかするとついているぐらいで、みんなお得意先の名前です。お得意先という役者に良い芝居を、いい業績をあげてもらえるように私どもは黒子の仕事に徹しているわけです。

ですから、適者生存と言いますか、黒子はやはり黒子に徹して、お得意先に尽くせる会社にしておこう、したがって、海外問題についても得意先が海外に出る時に、来いと言われたらついて行きます。

ただ、アメリカには実は私のところの得意先が出たんですが、これはお断りしました。いま、アメリカで独立系の段ボールメーカーがうまく育つとは思えません。それよりも、私の知っている先を頼って、そこにきちんと段ボールを供給してもらう方がいいだろう、なぜなら、アメリカではいま全体の87%近くがインテクレーテッド(製紙一貫系)になっていて、日本から出て行くと、どうしてもインデペンデントになりがちです。そういう形から言って、アメリカのそういうインテグレーションが関与した段ボール工場から段ボールを分けてもらえばいいでしょうということで、アメリカに進出することは避けました。これからは、例えば中国に得意先が出て行くとすれば、出て行くだろうと思いますし、そういう検討はずいぶん重ねております。ただ、発表していないだけです。発表というのは、私どものお得意先が情報を出すことだし、いまは情勢がなかなか難しいですから。

<問い>以前に、堤さんから「カゴメ紙業部に徹する」というお話を聞いたことがあるんですが。

塗師カゴメの紙業部に徹すると本人がもし言ったとしたら、40年代以前のことだと思います。私は堤さんのつき合いは相当に古いことになりますが、そんな話を聞いた記憶は全くありません。例えば、昭和37年にこの会社を作った時に、内部の思想統一をするためにそういうことを言ったかも知れませんが、私は40年代に非常に中身の濃いつきあいをしましたが、彼がそんなことを言ったことは全然ないです。

ただ、その言葉を裏返して言いますとね、顧客第一主義というか、先ほど申し上げた黒子の役割ですが、日本はその頃、本州さんが例えば段ボール企業の買収とか、いろいろなことがありましたが、川上との提携ではなくて、もっと先の川口から先の、海に相当する需要家との接点を強化して行くということが言いたくて、そのようなことを言ったかも知れません。その証拠に、当社の大株主の中にはポッカコーポレーションさんも入っています。カゴメとポッカとは、ある品種によっては競争相手でもあるんですが、うちの会社をはさんで仲良くしてもらっているわけです。カゴメの売り上げは2割もありません。いま、全体から言ったら14-15%ぐらいです。

<問い>いま、減価償却はどれぐらいでしょうか。

塗師6億ぐらいで、少ないです。実は、この3年間は、東証に上場するために、基本的に収益の安定をはかったのです。その基本的に収益の安定をはかったことが、この不況にぶつかりまして幸いしました。この前に設備投資をして、不況に入っていたら、これだけの収益は出せなかったと思います。だから、先ほど申し上げたように、非常に幸運に恵まれたと思います。不況に入る前の平成2年に、株の暴落が起る前ですが、その時期に東証上場をめざした段階で、東証というのは増益基調でないとノーですよとおっしゃっていましたから、私どもの会社は原料が50%ぐらい占めますが、原料が2割下がるとゆるやかに売上高が下がってきます。従って、増収増益に固執されると私どもは東証をめざすことはできません。ですから、減収でも増益基調まで持って行くならいいですよというなら、まあ、そういう対話を申請するまでに色々やっているわけですが、そのふんぎりをつけた時にたまたま景気が悪くなったんです。景気が悪くなることを見越したのではなくて、東証をめざした段階で設備投資をぎゅっと圧縮したのです。ですから、本当なら、景気が底入れしているなら、来年からは少し設備投資を増やして、積極拡大への、骨格をひと回り大きくするための作業に入りたいと思っていたのですが。

<問い>今後の拡大戦略についてはいかがですか。例えば関西はどうかとか。

<塗師>段ボールだけではないですね、たとえば、紙器とか軟包装も含めたひと固まりででしょうが、中京のメーカーは西へ進出する人は少ないんです。段ボールでは多分、山田ダンボールさんだけじゃないでしょうか。中京人というのは、「江戸は家康が作った」と東京を向いているんです(笑い)。冗談はともかく、経済がそう動いたからでしょうが、私も関西はあまり考えておりません。むしろ、少し遠い将来に岡山を考えております。これはうちの得意先が岡山でも色んなことをやっておられるためで、いつか出て来いと言われれば、出ていかざるを得ません。それは上海でも深せんでも同じように出て行くスタンスをとっているわけです。ただ、いま考えている設備投資というのは、中京地区と関東がもう目いっぱいになっていますから、その中間点です。その中間点だけで月間200-300万m2を東西から売っていますから、その中間点にコンパクトな性能の高い加工工場を作りたいというのは、原案として持っております。