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得能正照自叙伝「発明街道」

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第5章 段ボール開発

--それでは次に、得能さんがレンゴーさんを辞められてから後の技術開発の方に話題を変えたいのですが、レンゴーさんを辞められたのは、あれは何年でしたか。

昭和63年の10月です。昭和天皇が亡くなられるすぐ前です。私がレンゴーを辞めた直後から、陛下の病状が急に悪くなったという状況でした。

--2、3カ月前ですね。

そうです。それで、辞めた次の日に、三菱重工から電話がかかってきて、「うちの技術顧問をやってくれ」と言うんです。やってくれって言うから、いいよと言ったんですけど、そうしたら、すぐ次の日ですよ、次の次の日かな、私の家に契約書を持って飛んできて、色んな書類にハンコをつかされて、それで三菱重工の顧問ということになりました(笑)。

--三菱さんは、こんどは天下晴れてということだったんでしょうか(笑)。

さあ、どういう気か、よく分かりませんけど(笑)。それで私は会社じゃなく、個人でやりましょうかとなって、こういう契約を結んだわけです。報酬がどうとか、コンサルタント契約がどう、開発に関する何がどうとか、こんな契約書を交わしたんです。日付は、昭和63年12月です。こういう正式書類で来て、結んで、国外出張の場合はこうとか販売援助の件とか、これは平成元年ですね、こういうのがいっぱい来るんです。それから、これは割合最近のものです。平成9年10月31日まで技術顧問の任期の延長を頼みたいという内容ですね。こういう文書がいつも来ます。

だけど、三菱については、技術顧問とか何とかという立場じゃなくても、三菱の機械はちゃんとしてやらなきゃならないなという、一つの思いがありますからね。そういう感覚というのは、私は終始一貫しています。だから、こう話していても、7年前のインタビューのときと何も変わらないでしょう。私は、当時もいまも、全く同じ感覚で話していますから。

--変わらないですね。

結局、カネの問題でしているわけじゃないんです。小林さんとも、そうです。
そういうように三菱と契約したものだから、小林さんも、おい頼むと、こういうんです。それで、「小林さん、また個人でやるのはおかしいから、エス・ケイエンジニアリングとやろうか」となって小林さんとは一、2カ月後に契約を結んで、これも、ずっとそのまんまです。ですから、小林さんとは会社、三菱とは個人の契約です。

そして、私が70才を過ぎてからは、パテントを取れるような機械の開発をしても、もう私の名前を申請書に書いてくれなどと言いなさんな。私のことはいいから、全部自分たちで何もかも思うようにして出しなさい、と言っているんです。

--それでは、レンゴーさん以後の発明では、どこからお話しいただけますか。

三菱が始まってから、これは、段ボール関連が主ですから、段ボールを主力にやりだしたわけですね。やりだしたんですが、三菱自体の感覚としては、やはり私は個人ですし、以前と違って、段ボール工場を実際に動かしている立場ではありませんから、私に対するものの考え方というのは、レンゴーにいたときの得能と、辞めたあとの得能とでは、かなり違ってきたと思うんです。一応意見は聞くけれど、それがいいとか悪いとかじゃなく、一つの案として受け止めて、三菱自体は三菱独自の考え方でやっていくという方向になっているわけです。

それはそれでいいんです。まあ、そういう方向で進んできたわけです。私もしょっちゅう行って、三菱に意見を言ったり、いや、それはおかしいから、こうやった方がいいよとか、こういう新しいものがあるから、こうやったらどうかという提案を出してくるわけです。そして、彼らはある程度、それを受け入れているわけです。その中で一番大きい例は、ベルトプレスのシングルフェーサですね。

私が、シングルフェーサについては新しいものを考える必要があるということで、とにかくあんな段ロール2つで、もう一つプレスロールがあって、それをカチカチやりながらやるよりも、抄紙機のプレスと一緒ですよ、あんたたち、ENPを知ってるって聞いたんです。エクステンド・ニップ・プレスのことです。

私は、ENPの日本での最初のころの機械を入れた本人ですからね。これがそうです。これを段ロールとすると、こういう風に幅広く、ベルトで抑えているわけです。これは、開発されたのはもう大昔ですよ。こういうENPの考えを紙工機械に導入する必要がある、これを採用しようじゃないかと私は言いました。だから、ベルトプレスは、私の一つのアイデアで、プレスロールをなくして、ベルトで抑えようということで始まったのです。昭和60年には、すでにBHSにも説明してありました。ところが、このベルトの材質の問題とかなんとかが、大変なことなんです。

--大変だったらしいですね。

当然あることですよ。だけど、いざ、そういうことでやったら、もう、世界中でそうなってきたわけです。
そういう流れというのは、フィンガレスのシングルフェーサを、私が最初にやりましたし、それから、ENPを利用したベルトプレスも、私が世界で最初にアイデアを出して、三菱がベルトプレス方式ということで完成させました。それが、最初からずっと繋がって、ここまで進んだわけですね。

それから、段ロールの交換についても、私が初めてやったわけですが、交換をなるだけ早くやれるようにしようということで、その開発を、三菱がいまでも続けているわけです。それで、最近はまた、もの凄く新しい方法を考えています。2分で交換できるんです。

--2分で、ですか。

そうです。そういう機械の開発というのは、一番最初の頃から開発をやった人間でないと、なかなか出来ないんですよ。三菱には、私と最初からやった人が数人おりますけどね。

--連続性の問題でしょうか。

そう、連続性の問題です。ベルトプレスのシングルフェーサね、これもそうなんです。

--抄紙機をやっていないと、結局、こういう発想が出てこないんですね。

そうです。それから、もう一つ、もの凄い問題があるんです。先ほど言いました段ロールの交換の早さをどうするかという問題ですが、これは非常に重要なことになってくるんです。交換が早ければ早いほど、例えば、こう簡単に一分か2分で出来たら、Aフルートをやっていて、次はEフルート、次はBフルート、Cフルートと、何でもバンバーンと切り替えられるわけです。そうすると、いまのコルゲータにシングルフェーサがこうありますと、これ全部に、それを入れておくと、4種類のフルートが何でも出来るわけです。また、これ一つは従来のシングルフェーサで、もう一つの方に交換の早いのを付けておけば、3種類出来ます。

色んなことが出来るんで、それはユーザーの欲しがり方一つですから、如何に早く段ロールの交換が出来るかということと、その考え方として、どうやるのが一番いいかということを考えないといけません。

この間、図面を描いて持って行って、これでどうですかと言ったら、「いやあ、これはスゴイ、これはどこそこへ持っていったら、すぐ注文が貰えるけど、いいか」と言うから、「あんたたちの感覚でどんどんやりなさいよ」と言ったんです。

--そりゃあ、喜ばれたでしょう(笑)。

三菱でも、私のように一番最初からの色んなことを踏んで来ている人は少ないですからね。だから私は、ずっと最初からのつづきを見ながら、どうやったらいいとか、こうやったらどうかとか、いつも考え続けているんです。
それと同じように、シングルフェーサです。私はフィンガレスをやりました。ほかに色んなことをやりました。その間に、加圧の問題が出てきました。エア加圧でやるとか、ノーフィンガーの問題とか、色んな問題が出てきました。私は、フィンガレスのシングルフェーサをやった直後から、実はバキュームを使ったり、加圧するなんてダメだなあと思っていたわけです。常にそれがアタマにあったんです。

それじゃあ、どうやったら良いのかということは、問題はどこにあるかということになるわけですね。この考え方は、みんなにも言ったんですが、「あんたたちの産業機械は、製紙も段ボールも、これは全部、私に関係するものだけれど、みんなはいつも、メカニカルとエレクトロニクスを一緒にして、どうだ、こうだと考えている。そういう時代になったんだし、そういう時代だからテンションコントロールも出来るようになったし、あっちもこっちも色んなことがやれて、だんだん、だんだん、いい機械になってきたんだ、と。「だけど、何か一つ足りないと思わないか」と訊いたんです。「なんですか」と言うから、「それをもう一つ入れたら、今度は機械の様相が全くガラッと変わるよ」と言ったんです。「何ですか」というんです。それは「ケミカルを入れる」ことです。ケミカル、つまり、化学を入れて、メカニカルとエレクトロニクスと、この3つを一緒にして考えた機械を作らなければダメだ、と言ったわけです。

いままでは足が2本しかないから、こんな具合で、ふらふらしながら立っているんです。ケミカルが加わったら、3本柱で、こういうように全く完成するんです。こういうことを考えろと言ったんです。「なるほど、そうだ」と、みんな言っていました。ところが、逆に、ケミカルの人たちは、メカのことを全然知らないんです。

--専門家というのは、そういうものでしょうか(笑)。

それがおかしいと言っているんです。だから、メカと、ケミカルと、エレクトロニクスと、三本立てにするようなものの考え方というのは、その3つが分かるアタマの人でないと困る、と言ったんです。3つとも分かれば、世界に突出したものが出来ます。
ですから私はいま、メカとエレクトロニクスをわきにおいて、ケミカルの勉強をしているんです。この間、どの本が一番いいかと思って、段ボールについては、接着技術が非常に重要なことですから接着技術の本を探したんです。もう、いっぱいありました。それで、ほぼ半日かけて、どの本が私にとっては一番プラスかと全部調べて、やっと、この本を探して買ってきました。これには、色んな技術がいっぱい書いてあります。

--「接着技術」ですか。

それで、何のために接着技術に話を持っていったかということを、三菱のみんなに話したんです。これが、フィンガレスのシングルフェーサですね。これを作るときに、それまではメカだけで、こんな具合にフィンガーでやっていたんですが、このフィンガーをなくすには、バキュームするか、エアで加圧して押しつけるかということだけでしょう。それをやったら、うまくいったんです。私が世界で初めて、先鞭を切ってやりました。

それでは、こんどは、これのどこに問題があるかというと、バキュームのポンプが要るし、段ロールに穴を開けて、スジを付けてと、ややこしいものを作らなければならない。そのため段ロールを作るのに2倍も3倍も値段がかかるし、エネルギーが余計必要だし、スジが入るから段ロールの寿命の問題、ベンディング(曲がり)の問題と、みんな大きくなってしまう。そういう問題があります。

私は、これはいかんということを、やった最初のときに、すぐ思いました。これは、いずれ切り替えなければならないと考えていたんです。それで、先ほどの三菱との話ですが、つまり、段をこうやって、こう回転するから、紙がこう飛び出るんです。飛び出るから、中でバキュームして止めよう、或いはこっちからエアで加圧して、押しつけるわけですね。私自身が、そういう感覚しかなかったために、本来行われるべき開発が遅れた、という話をしました。

--遠心力をどう抑えるかですね。

そうです。それをこう接着する方法で止めたら、メカによらないでも、紙が全部ついて行くじゃないかというんです。

--なるほど、そうですね。

そりゃあ、そうだ(笑)となりました。要は、また簡単に剥がれるような接着方法を考えれば全部それで行っちゃうじゃないか、バキュームも何にも要らないということなんです。それでね、遠心力の飛び出しの力なんて、たかが知れているっていうんですよ。

--接着力からいうと、そう大した力は必要ないんですか。

もうホンのちょっとの接着力で十分です。ですから、ケミカルの感覚があったら、そこへ話が持っていけるということです。世界中で、そういうことを考えている人はまだいないと思います。こんなものが出来て、バッとやって、うまくいったとなったら、世界中のシングルフェーサが全部、バキュームも、加圧も無くなります。しかも、安い機械になります。1年か2年で、どーんと世界中に広がるでしょう。

--みんな、遠心力と戦っているわけですね。

それをテストするには、いま使っているバキュームを止めて、その接着方法がケミカルの場合ならどういう接着剤がいいのか、一時間ぐらいテストをすればすぐ分かります。テスト結果を見て、スピードが幾らでも上がると思ったら、その接着剤の塗布の仕方とか、どれぐらい塗布すればいいとか、色んな問題がすぐ分かります。べったり付ける必要はないんです。ところどころ付いていれば0分なんですよ。

--飛び出さない程度に、ですね。

それぐらいの感覚がね、あるような人間を育てないとダメです。「オレが生きている間はオレがやるけど、そのあとの人間はどうする。これからは製紙も、段ボールも全てそうだけど、メカとエレクトロニクスと、そしてケミカルとの3本立てということを常に技術屋に教え込まないとダメですよ」と、三菱の上の人たちにも言ってきました。みんながそういう風な方向に行けば、日本全体がまた世界のトップに出て行くチャンスになるんです。だから、まだ考えているわけです。

これが、レンゴーを辞めてからの、いまの私の人生です。最初からのつながりを、ずっと引き続き全部やっています。

--全部つながっているんですね。

そう、製紙にしても、全てにわたって、やめているわけではないんです。製紙もやめていません。もっとスゴイやつを、段ボール以上のやつをやっているわけですから。プレスの問題だとか、抄紙機の問題だとかですね。そりゃあ、止めるから悪いんでね、それでまた新しくやり出すなんか、愚の骨頂です。いままでの、大昭和・レンゴーにいて、ずっとやって来た開発の考え方が、大昭和・レンゴーを辞めたあとも、そのまま、ずっとつながっているわけです。

あらゆるものがそうでしょう。最初は、メカしか知らなかった。それを、これは電気屋も一緒にしなければダメだと思って、それで電気屋も技術部に入れて、一緒の技術部にして、電気も機械も両方とも、みんなが分かるように教育して、一緒にやれと言ってやらせました。それで、日本リライアンスに話して、ダイレクトドライブカットオフをやり、スリッタースコアラをやり、あれをやり、これをやり、メカとエレクトロニクスを一緒にして、どんどんやりだしたんです。そのとき、もう、こんなシングルフェーサじゃダメだと思いました(笑)。

--やっぱり、ご自分で最初からやったことだから分かるんですね(笑)。人から教わっただけだと、これが絶対なんだと思い込むんでしょうか。

そうなんです。だから、そのずっとの継続が大事なんです。

--ということは、何にもこだわらない発想を生み出せる人というのは、一番の大本を考え出した人でないとダメだから、結局は得能さんに戻ってきてしまうんですね(笑)。

まあ、そんなことはないでしょうが、一人で考えたって時間がかかるから、みんなに考えなさいよと言っているんです。そのためには、亘理さんにそういうことを書いてもらって、みんなに読んでもらって、なるほどそういうことか、我々もそうやろうというように、みんながケミカルを入れて考えてくれれば、まだまだ日本は良くなると思うんです。

抄紙機の方もそうなんです。ケミカルの考えを入れることによって、排水ゼロの工場になります。抄紙機から排水が出なくなります。そうすると、工場をどこにでも作れることになるんです。紙1tを作るのに、水1tあればいいんです。紙を100t作るときは、水が最低100tは必要です。
というのは、水分50%でドライパートに入りますから、100tの紙に対して100tの水は、ドライパートで蒸気になって空中に蒸発してしまうんです。それで、最低1tは要るんです。それを回収して、また水にするなんてことはムリですけど(笑)。

--自然が雨を降らしてくれますから、それを回収するほかありませんね。

そうです。抄紙機の排水をゼロにする技術にも、やはりケミカルの考えが入るんです。私はそれもやっているんです。もう排水はありませんよというのが、もうすぐ出来ます。こういうことも、やはり今までずっと抄紙機をやり、開発をやり続けた人間でないと、なかなかそっちの方向へは行けないんです。

--そうなんでしょうね。私はケミカルの話もずっとうかがっているから分かりますけど、これを人に説明するというのは、時間がかかりますね。

ええ、かかります。とにかく、メカとエレクトロニクスとケミカルと、3本立ての企業でないと新しいことは出来ません。これをやれば、やったところが世界のトップに躍り出ると思います。いままでは、メカとエレクトロニクスを一緒にしてやりました。それを、こんどは、こういうように、3本足でしっかり立った、安定した構造の技術体系になると思いますね。

--そうすると、色んなところが、見直しになりますね。

全部変わってきます。世界をリードしていけますよ。私は、レンゴーにいるとき、一時は世界をリードしたんですから。

--まさにその通りでした。

辞めたからといって、リードできない立場じゃないんです。だけど、表面に出て、私がリードしようとは思わないんです、そんな欲望も何もないですから。それよりも三菱だとか、色んな会社とそういうことを開発しながら、日本の段ボール産業に世界をリードできる立場に返り咲いてもらいたいと願っているわけです。

それで、これがいま考えているベルトプレスの新しいシングルフェーサです。これが段ロールで、こっちがAフルート、これがBフルートです。それで、いま使っていたAフルートをポッと上へ上げるでしょう、そして、ぐるっとこう回転すると、Bフルートが上に出て来て、Bに変わるんです。そして、これをバッと下ろすと、もう段ロール交換が終わりなんです。

たった2分ですよ。ここの糊装置の部分は、これをセンターにして、ぱっと逃げて、段ロールの交換が終わったら、くるっと回って、またもとに戻ります。
そして、段ロールがガタガタ動かないように、テーパーでこうやって、このエアシリンダーで、油圧でパチッと押さえつければ、キチッとこう来ますね。これがセンターになっていますから、ここでぱっと回転するわけです。これは、止める必要はないんです。それで、はい、終わり言うたら、小さいギヤードモーターでパチャッと、こうくるっと回して、はい、交換終わりとなるんです。

--そうすると、段ロールは、前みたいには、外に引っぱり出したりしないんですね。

もう、全くそんな必要ないんです。

--いつも、シングルフェーサの内部に組み込まれているんですね。

そう、2分で交換できます。段ロールを引っぱり出したり、また入れたりはしません。

--簡単ですね。みんな更に複雑で、もっと高級な機械をというように作りますが。

これは、うんと簡単です。ギヤードモーターでグーン、パチンですからね(笑)。ドライブは、これとこれです。これは前回転です。こういうことを、今でもやっているんですよ。

--簡単ですね。着想、ヒントの問題だけで、こうも違うんでしょうか。

それに、この方が、よっぽど安いんです。

--そうでしょう。

これに、接着剤でくっつける方法をやったら、更に簡単なんです。

--何にも要らなくなりますね。

なんにも要らないんです。スジも何にも要らない、バキュームも要らないんです。そういう感覚を持ってもらいたいんですよ。

--引っ張っているから、テンションは、紙自体にあるわけですね。

そうです。

--テンションに問題がないと、あとは、離れないように、どう押さえるかだけですか。

そうです。ものすごく簡単になります。それで、この接着剤の勉強をやっているんです。それで、私はヒマなときは、これをちょこっと見ているわけです。そういうことが、非常に楽しいんですよ。また、みんなにも、そういうことが分かって貰えるように、今度の本にぜひ書いていただきたいんです。私は、自分で自慢するために言っているわけじゃないんです。

--ええ、もうそれはよく分かっております(笑)。

私は、大昭和以来ですから、ずっと大昔からの開発の続きをやっているんです。その続きです。これが、会社にいたらね、出来ないんですよ。

--そうでしょうね、会社は、儲からなくてはいけませんから(笑)。

例えば、世界のために、人のために、如何に尽くせるかということですね。まあ、幼稚園もそうですけれど、どう「世の為、人の為」に尽くせるかというのは、機械の開発も同じです。日本人は、いまは負けているわけですが、私がレンゴーにいたときには、日本の段ボール産業は、世界のトップに躍り出ていたんです。それで、海外からみんな見に来てね。いまは、どうですか、こっちから見に行くだけでしょう。開発をやらないと、日本はこんな風になっちゃうんです。

だから、「世のため、人のため」ということですね、それが、私の一つの願いです。それで、みんなが胸を張ってね、「技術は3本柱でなくちゃダメだよ」とかいう時代に、早くなってほしいです。

--まあ本当に、威勢の良い時代から、威勢の悪い時代になりましたね。得能さんの時代はいちばん威勢が良かった時代でしたが。

それはね、本当は威勢の良い時代が続くはずだったんですが、高度成長期が終わり、大変な経済の構造変化で、開発が出来なくなったんです。やれば損すると思っちゃうからです。それで、日本ではダメな会社が多くなりました。

--日本の機械も、高くなり過ぎましたか。

この間、私はロングビューファイバーのオーナーのワルトハイマーに、最近の開発の説明をファックスで送ったんです。その返事がこれですけど、2月15日に奥さんが病気で手術するもんだから、それが終わってから来てくれと、このファックスが来ました。親しい友だちですから、今回の開発の是非をききたいのです。ロングビューファイバーというのは、良い会社ですからね。このワルトハイマーがオーナーです。3月の終わりか、4月の初めに来て下さいという内容です。家族同士の交際で、私の家内も親しいですから、家内を連れて、お見舞いかたがた行って来る予定です。

--それじゃあ、またアメリカにも行かなくちゃあなりませんね。忙しいですね。

ええ、今度の新しい機械の説明です。親しいですからね、スマーフィットでも何でも。こうしてファックスを打つと、パッと返事が来ます。それで、新しく開発した機械の説明をしますと、オーナー連中ですから、オーナーがこれはすごいと言ったら、もうすぐやろうというようなもんです。すぐ持ってきてくれ、ウチでやるからと、そういう友人が多いですよ。

そうすると、コストがドーンと下がるんです。やっぱり、日本は世界最高だったんだから、また世界最高へ盛り返さないと絶対ダメです。そうなるためには、一番初っぱなからの、ものの考え方というものを貫いて行かないと出来ないんです。だから、以前のダイレクトカットオフのドライブだってそうですよね。
あれだって、全然違う感覚でものを見て、すぐこれでやろうと、バッと切り替えたんです。それでDDSRを世界に発表して、ウソだと言われて、そんなら来て見ろと言ったら、みんな大勢で来てみて、いやあ凄いと言って、みんな買ったんです。
一刻も早く、そういう時代に日本を持って行かないと、日本が潰れると言っているんです。日本は輸出立国です。その輸出をするためには、世界にない素晴らしい機械を作って、世界に供給するというのが、日本人の使命なんです。

--コメ以外の基本的な食料を、みな輸入に頼っている国ですから。

そうなんです。それはもう非常に重要なことだと思います。

--否応なしに買わざるを得ないような商品を作らないと、いかんのでしょうね。

ですから、私の昔の考え方と、いまの考え方は、同じ延長線上にありますし、自分で考えていることというのは、全く何も変わっていないんです。

--段ボール機械がどんどん複雑になって、コストも高く付くようになるということには、日本では、ユーザーが細かな注文を出しすぎるということがありませんか。

そう、出し過ぎます。だから、余計人も要るし、あれもする、こうもとなるんです。もう、シンプル・イズ・ベストなんです。だから、三菱なり、日本のメーカーが、そういう機械を海外に輸出するとなると、海外ではダメになるんです。というのは、海外の工場では、日本の運転員とは、まるでレベルが違うんです。
アメリカに行ってご覧なさい、アメリカの段ボール工場では、いまはどうか知りませんが、昔は暑いいうて、ハダカで、こんな大きい入れ墨したおっさんが、フィーダーなんか要らないんです、ごついシートを軽々と、こんな風に手で積んでやっているんです(笑)。

--日本のような、きめ細かな注文もこなせる機械では、却ってダメですか(笑)。

使いこなせません。それで、事故を起こしたりすると、何億という損害賠償を取られますから、そんなもの、付けられないですよ。だから、そういうのと、日本式をミックスしたような色んな機械を作るから、アメリカへ持って行って、試運転をやったら、うまくいかない。ああだ、こうだ言って、やっと一カ月、2カ月後に回り出すというような問題があります。
それだと、もう日本の機械は要らないよということになって、売れないんです。産業機械は試運転後に、直ぐ営業運転に入れませんとね。そうするために、今回は、非常にシンプルにやり直したんです。
もう既に、先ほどお話したような機械の開発に取り組んでおります。三菱のみんなが、今ごろ、盛んにやっているでしょう。

--最近は、段ボールの技術革新も、なにか一つの限界に突き当たったような感じが世間一般に持たれているようです。もうすぐ21世紀が来るというこの時期ですが、これからの技術開発の見通しとか、展望という観点ではいかがでしょうか。

まず、海外の状況が分かっていないと、日本はどうあるべきかということが分からないと思うんです。特にそうだと思うのは、段ボール関係でも、製紙関係にしても、海外がどういう開発をやっていて、どういう機械が出来ているかということを、現実には、日本の人はあんまり知らないんじゃないかと思うんです。

--一時は、得能さんの発明のお陰で日本の段ボール技術が世界を圧倒しました。しかし、最近10年間を振り返ると、バブル後の不況の関係もありますけれど、全体にアメリカは元気なのに、日本の段ボール産業は、技術的にも、世界を席巻した勢いというか、雰囲気が全くなくなっていますね。

段ボール関係について言えば、開発というのは、すべていままでの延長線上にあると思うのです。フィンガレスシングルフェーサにしても、スリッタースコアラにしても、カットオフにしても、ドライブ方式は全部、私がやってきたやつですよね。それが定着して、それを基本に世界中にダーッと増えていったわけです。そして途中からは、いま現在のところ、その延長線ではアメリカの方、ヨーロッパの方が、機械自体は日本より進んでいると思うんです。
それを、やはり変えなければならないと、私は前から思っているわけです。延長線ではダメだということです。もう一回、原点に戻って、段ボールはどうあるべきかというものを考えないとダメだろうと思うのです。
特に段ボールなんていうものは、加工機械ですから、原紙をいろいろ形を変えて、箱にしているだけの話です。この問題をもう少し深く取り上げて、どういう風な機械で、どうやったら、更にコストが半分になって機械代が半分になる、それから作業員も楽になる、生産量が飛躍的に多くなる、というような機械の開発をやらなければダメだろうと考えるわけです。アメリカでも、ヨーロッパでも、それを目標にしてやっている会社というのは、随分あるわけですけれど、やっている方向が、私の考えと全く違うんです。私はそう思うんですよ。

--要するに、ポイントを外している感じですか。

ポイントが外れていると思いますね。現実の問題としては、機械自体のスピードはどんどん上がっているんです。例えば、300mなら300mのコルゲータが出来ました、400mなら400mのコルゲータが出来ますよ、というように宣伝されているわけです。だけど、その400mのマシンが導入されて、実際に回っているスピード、平均スピードというのは、現実には、ぐーんと下がっているんです。

--あくまでも瞬間的な話ですね。

そう。トータルで見ると、そんなには上がってないんです。だから、200mのものが、例えば400mのコルゲータになりましたと言っても、その工場としては、200mのコルゲータの時の生産量と、400mの時の生産量とでは、本来は2倍になるはずです。ところが倍になんか、とてもなってないんです。いくらかは上がっていますけれども、半分ぐらいしか増えてないんです。
それでは、倍の生産ではないじゃないですかということ、機械の開発についておかしいじゃないかということです。実際には、200mの仕様の工場と、400mの仕様の工場とで、生産量が倍になりましたという会社は、一社もないんです。
それは、つまり加工産業に対するものの考え方がそうなるわけです。これが装置産業だと、加工産業とはまた違うんです。抄紙機の場合は、100tなら100t、400tなら400tのマシンなんです。だから、製紙産業とか、製紙機械に対する製紙の感覚で、もう一度、段ボール機械の開発をやる必要があるんじゃないか、という考え方が出てくるわけです。

では、どこに問題があるかというと、実際に海外に行って、みんなの意見を聞いた
り、いろいろして、はじめて分かってきたのは、そこですね。
どこに問題があるか。いま、回っているコルゲータ、私がどんどん開発をやってきたコルゲータの中で、一番問題があるのはスプライサーです。原紙のつなぎ方の問題や、テンションの変動が大きいなど、色んな問題が出ます。原紙のつなぎをキチッとやるために、スピードをドーンと落とす。スプライスを終わったらまた上げる。だから品質的にいくらか差が出るという一つの問題があります。

もう一つは、スリッタースコアラです。それから3番目にカットオフと、この3つに非常に大きな問題があります。この3つが、いままでやってきた中で一番の問題点なんです。この3つに対する見方が、私は、製紙の見方をしているから、みんなと違うんです。段ボールの見方じゃないんですよ。

--スプライサーは、得能さんが一番最初に開発されたものですね。
そう、まだやっているんです(笑)。

テンションの変動のない、どんなスピードでも、どんなにスピードが落ちようが、シングルフェーサに入るテンションが常に一定ということになると、シングルフェーサ自体は非常に楽な機械になるわけです。あれはギザギザを付けるだけの機械ですから、そんなに大きな問題にはならないんです。

--製紙も段ボールも、紙には変わりないわけですね。

そうなんです。全く変わりません。もう一つは、原紙が一本ずつ終わったら、スプライサーというのが付いていて、原紙を替えます。それは、まあ、いいです。
それからシングルフェーサも、いままでAフルートだったのが、こんどはBフルートに変わる、BフルートからCフルートになる、複両面になるとかいうように、色々あるでしょう。それで、そうして出来る片段のスプライスを、なぜやらないんだということがあるんです。

--片段のスプライサーですか。

そうです。A段からB段に変わると、ここからこっちがAフルート、ここからこっちがBフルートとなります。その時、人がいちいちブリッジの上に上がっていって、悪いところを切って継ぐわけです。それを、なぜ自動でスプライスしないのかと私は言うんです。原紙のスプライスは、わざわざやっておきながらです。

--片段は、なぜやらないのかということですね。

片段のスプライサーがないんです。

--そういうことですね。

この間も、三菱の連中に、なんで片段のスプライスをやらないんだと言ったんですが、「それが、最近になって、そういう話が出始めたところです」というから、思わず「今ごろになって、やっとそうか」と言ったんです。

--だから、こうして、昔の資料が出てくるわけですね(笑)。

そう(笑)、これはタイトルが「シングルフェーサの自動運転システム」ですね。この頁は、ブリッジをどういう風にするかということで、この頃、昭和57年ですね、すでに片段のスプライサーというものを開発しているんです。というのも、原紙のスプライサーをやっていたとき、片段もスプライサーをやらなきゃダメだということを考えて、どうやるかの案を、このころから考えていたんです。そういうことは、一つのものの考え方の基本なんです。

--自動運転システムに関連した一連の機構の中身ですね。

原紙はスプライスするのに、なぜ片段はスプライスをしないんだ、3人も4人もブリッジに上がって行って、切って、貼り付けて、それがうまく行かないとかなんとか、あるいは怪我をしたとかですね、そういう問題が幾らもあるわけです。
私は前からそう思っているから、こういうことを昭和57年当時にもう全部やっていたんです。それで、ついこの間です、三菱に、シングルフェーサでは、片段のスプライサーぐらいやらなきゃダメだと言ったら、いやあ、そう言われればそうだなんていうんです。誰も、そこまで頭が行っていないんです。私は、本当はなにも気にしないで、遊んでいられれば良いんですけどね(笑)。
まあ、シングルフェーサにも、まだ問題点はあるんですよ。しかし、一番の問題はスプライサーです。それから、スリッタースコアラです。

--スリッタースコアラは、なぜイン・ラインで、コルゲータにくっつけているのかということですね。

そう。抄紙機だと、ウェットパートからプレス、ドライパートがあって、キャレンダー、ポープリールがあってという、そういう一連の抄紙機の中に、スリッタースコアラみたいなスリッターの付いている機械はありますか、というんです。ポープリールで巻き取って、あとはワインダーでスリッター掛けて、オーダーに合わしてスリッターに掛けて切っているわけです。だから、原紙は年中、400tなら400t、千tなら千t、それだけのスピードでどんどん回って行くわけです。
そういう問題があるんです。ですから、製紙サイドから見たら、スリッタースコアラはコルゲータの中に要らないじゃないかということです。
そのことを、アメリカへ行って言ったら、みんな、そうだと言い出したんです。

--アメリカでも、それを感じているんですか。

感じているんです。まあ、一日にそんなにオーダーを変えない、ロットの大きいやつをドーンとやっている工場は別ですよ。だけど、たとえアメリカでも、ロットの小さいやつも、年から年中やるわけです。日本では尚更そうですけど、スリッタースコアラをオン・マシンでやると、それがトラブったら、コルゲータ全体が、みんな止まっちゃうわけですからね。

--その場合、いまはコルゲータのオン・マシンでやっているのを、スリッタースコアラの単体でオフ・マシンでやるとしますね。そうすると、どういう装置が必要ですか。

何にも要らないです。スリッタースコアラを外したら、ドライパートからカットオフになるわけ。それで、大きな判で出て行きますから、まあダブルカットオフでも、スリッターは必要ですよ、簡単なスリッターが2個あればいいわけですから。それでダブルカットオフの場合は半分に分ける、シングルの場合は全判の大きさでドンと出すわけですから、デリベリーは非常に簡単になるわけです。
だから、いまみたいに、コチョコチョ、コチョコチョと、いっぱい細かいやつがダダダッと出て行くようなことがあり得ないわけです。アメリカでこの話をしたら、みんな、そうだ、そうだと言っていました。

昔は、ポープリールの場合でもそうでした。白板紙の抄紙機の場合は、カッターがキャレンダーの後にあって、細かい寸法で出していたわけです。そうすると、裏と表の水分の差がある板紙なんていうのは、ひっくり返ったり、反ったりなんかするわけでしょう。その問題で非常に困ったのです。それで、カッターで取る人が、みんな一緒になって何枚かをこうやる、こんどは次のやつは裏返しするというようにやったんです。一方積みには出来なかったんです。そういうマシンでした。それを私が、若いときに、全部切り替えたんです。

--ご自分でやってきているからですね。

そういうアタマがあったから、コルゲータを見ても、初めから、いやあ、これは外した方が良いと思っていたんです。それで、テストをしたら、大判シートを積み重ねていると、上と下とのバランスがマッチして、5時間経ったらシートが真っ平らになっちゃうんです。

--大判シートならですか。

そうです。

--自分の重量で、でしょうか。

そう、自重で。上と下、上と下で水分が変わっていたって、みんなこう一緒になっていますから、やがてバランスして来るんです。

--そういうことですか。

その代わり、一番上のシートに、ベニヤ板をぽんとかぶせておけばですね。そうすると、あとは、真っ平らのものがスリッターにかかってきます。
スリッターを外して、別のところに置いていますから、出てきたものを全自動のコンベアでこう送って、あるものをゆっくり製函すればよいのです。いままでは、交互にするようにコルゲータの中にタンデムに、2つあったわけですね。それを2台置けるようなものですから、そんなにスピードは速くなくても良いんです。半分のスピードになります。2台の、両方が使えるわけですから。

そういう考えでいたわけです。製紙の考え方で行けばですね。ただし、人が一人ぐらい余分に要るかも知れません。だけど、一人余分に要るぐらいの経費なんていうのは、コルゲータの生産性が猛烈に上がるから、2直でやっていたコルゲータが一直で済むというような状況になる可能性が非常に高いわけです。

--どうして、誰も、そういうことを考えなかったのでしょうか。

製紙の人が誰もいないからですよ。製紙の感覚がないんです。段ボール関係、コルゲータでの一番のトラブルはスリッタースコアラなんです。それに比べると、カットオフは、私のやったあのダイレクトドライブで瞬時に変わりますから、ポープリールみたいなもので、別にどうということはないんです。

--スリッタースコアラは、刃と罫線輪の移動時間が必要ですね。

だから、移動時間だけれど、スコアラーをやって、スリッターをやってとなると、それが位置が変わる、どうだこうだ、スコアラーの種類が違うとか、何とか言い出したら、もうごちゃごちゃになってしまうわけです。それで、細かく分けて、ジャーッと出ていって、こんどはカットでしょう。バラン、バランみたいなやつを、ボンボン、ボンボン切るわけですから、トラブルが多いわけです。そうして、トラブっちゃうと、機械が全部止まるんです。

--問題点を整理しますと、まず第一番目がスプライサーですね。

そう、テンションの変動です。スプライサーのスピードを上げた、下げたの変動に耐えられないということです。そのために、ミルロールスタンドを変えて、ガチャガチャやるけれど、それはダメです。

--どういうものに変えれば解決できますか。

テンションカット方式があるんです。私はもうやっています。

--テンションをカットする方式ですか。

これはもうすぐ出ますよ。全世界に出て行きます。

--三菱さんですか。

三菱ではないです。どこへでも出します。やれと言っているんです。私はボランティアみたいなものですから、いままでの常識をどんどんひっくり返しますよ。ボランティアでやっているんです。カネを取るわけじゃないんです。ロイヤリティーを寄越せと言っているわけでもないんです。アメリカでも、どこでもそうです。私は、いまはボランティアです。

この間も、アメリカでそう言って来たんです。私は「とくのう学園」の幼稚園を、一つは世のため人のためということで、ボランティアの精神に徹してやっているんです。だから、私が分かっている製紙・段ボールの技術も、何もかもボランティアで、ぜんぶ教えると言い切っているんです。アメリカの連中が、もう、ぜひ頼むと言っています。ボランティアですよ。スプライサーも、あの資料を持っていって、全世界に教えます。テンションコントロールから、スプライサー関係の色んなやり方ですね。計算方法から、こういうのを全部英文にして、近いうちに、これを説明にアメリカに行かなければならないんです。

--得能さんが一番最初にスプライサーを開発して、紙継ぎの自動化を実現されましたね。あれから、もう30年近く経っていると思うんですが、当時のスプライサーと、いま現在、世間一般で稼働しているスプライサーと、どれほどの違いがあるんですか。

違うのは、スピードだけだと思いますね。

--基本的な原理のような点についてはどうですか。

あんまり変わりませんね。私がやりだしたのは、製紙の考え方を入れたスプライサーですから、原紙をプレ・ドライブしてスピードを合わしておいて、ポッとこう継ぐというやり方だったわけです。その方がテンションの変動がないわけです。ところが、テープが剥がれないようにするのに、貼り方がややこしいんです。
それと、もう一つは、テールが長いことです。それをびしっとゼロテールにできるスプライサーにしようとすると、こんどは全く別の性質の問題が出て来るんです。そうすると、そっちが出来ると、こんどはテンションが大きいとか、また別の色んな問題が出て来るんです。

--ゼロ・テールにすると、それでまた新しい問題が起こるということですか。

そうです。

--予め助走をしておけば、ゼロテールにはならないんですか。

いや、新聞輪転機だって何だって、みんなプレ・ドライブしておいて、ばっと紙継ぎをするわけです。全部そうですから。

--段ボールの場合は、そこのところが非常に遅れているということですか。

と思いますね。

--新聞輪転機のやり方が、コルゲータには出来ていないということですね。

だけど、新聞輪転機のやり方というのを、段ボールには持って来れないと思うんです。

--紙の厚さが違うということですか。

厚さが違ったり、幅が違うし、色んな問題があります。

--ということは、段ボール原紙の紙継ぎの場合は、もっと別な知恵を凝らさなくてはいけないということですか。

そうです。それでテンションの変動の全くない、原紙が止まった状態で、こっちも止めておいて、パチンとやって、それでテンションロールの移動がありますよね。ああいうやつが全部ついているスプライサーというのは、段ボールしかないわけです。

--それを動かすモーター自体には、相当のパワーが必要ですか。

いや、かえってプレ・ドライブの方が小さいんです。ただ回転させているだけですから。

--そうすると、新しい、もう一段の技術革新時代がやってくるということですね。

やらないと、前に進まないんです。余りにも、いままでのやり方を、そのまま引きつづいてやってきたに過ぎなくなっていますから。そんなことでは、ダメなんです。
このカタログは新聞輪転の場合です。新聞輪転機は毎分スピードが千t以上ですからね。

--新聞輪転機のカタログも、みんな揃っているんですね(笑)。

そうです。こういうことを、段ボール屋さんは何も知らないんです。だから困っちゃうんですよ。まず、スプライサーをやらないとね。

--スリッタースコアラの方は、もっと簡単ということですね。コルゲータから外せば良いんですから(笑)。

外せば良いんです。

--経営者が、そういう生産方式でやると決断して、あとは実行すれば良いわけですね。

それで、安いスリッタースコアラを2台入れて、そっちで回しておいて、外したやつをバラして、2つにして、またどこかに持っていってね。そんな話をアメリカでしたら、いやあ、お前の言う通りだ、早速やろうと言っているんです。

--やり出しそうですか。

やると思いますね、アメリカで。アタマを下げていましたから(笑)。それから、段ロールね、例のプレスロール。あれもこの間、行ったときに言ってきました。いやあ、すぐやりたい、何とかして呉れと言うんです。

--ベルトプレスの話ですか。

そうです。それで、あれは前にお話ししたように、自動車のタイヤのようなやつを、こう乗せるだけですから。

--幅はコルゲータの全巾ですか。

そうです。2500なら、そのサイズで作れば良いんです。

--タイヤメーカーにでも発注するんですか。

いや、ベルト屋に作らせます。長いベルトを短くすれば良いんですよ。その中を、チューブにしておけばいいんです。

--なるほど、簡単ですね。

ドーンと出だしたら、世界中がこれに変わるでしょう。だから私は言うんです。鉄の段ロールに、鉄のプレスというのはどういうことだ、カチカチ当たってと。それをタイヤにして、こうソフトに当たったら、全く問題解決です。アメリカでは、「そうだ、すぐやりたい」と言っていました。
それで、もっと大きい効果は、いままで使っていた古いシングルフェーサでも、プレスロールをこれに変えることが出来るでしょう。ベルトプレスと同じ効果が出ます。小さいやつも出来ますから。自動車タイヤだって、小さいのから大きいのまで、なんぼでもあるんですよ。

--技術革新というか、まるで革命ですね。

それに切り替わったら、そうですね。まだ分かりませんけど。

--どこが一番早く、やりそうですか。

知りませんが、私はどこでもいいんです。こんな、タイヤのカタログもみんな揃えているんです。ぜんぶ計算しました。チューブから何から、みんな済んでいるんですよ。そうすると、こういうプレスロールになるんです。これが段ロールで、これだけべったりプレスで凹んで、カチカチしないんです。

--その内部張力はどれくらいのものですか。

10キロです。

--そんな程度で良いんですか。

そんな程度ですよ。

--この本が出る前に出るんですか。

まあ、少し後でしょうね。

--そんなら良いです(笑)。

古い段ボール工場に入って行くとね、いままでカチカチやっていて、スピードが上がらなかったわけです。そうすると、今度はそれがなくなったら、いままで120mか150mかしかスピードが上がらなかったコルゲータが、200m以上もバーッと出るようになります。プレスロールを替えただけで、それぐらい生産が上がっちゃうんです。

--凄いことになるんですね。

これからは、ものの考え方を変えないと、絶対ダメです。産業界自体のものの考え方を変えないとダメです。いまは120mか150mしかスピードが出ないコルゲータが、全国どこででも、200mでも出るという状況が想像できますか。だから、そう言っているんです。製紙もそうです。もう、水の要らない抄紙機、水は紙一tあたり水一tあれば良いんです。排水路は無し、何にも無い。それで、古紙を持ってきたら、ライナーでも中芯でもダーッと抄けるような製紙のプラントが出来れば、もう町のど真ん中でも製紙が出来るわけです。

そういうものの考え方を、この間、アメリカに行って話したんです。段ボール会社で、同じ機械、2500なら2500のコルゲータがあったら、2500巾の抄紙機をそばに入れろと言ったんです。そうしたら、原紙の運賃を払わなくても済むじゃないか。自分のところから出る古紙と、近所から出る古紙をそれに使って、ライナーと中芯を作ったらいいじゃないか。その全体を動かす人間は、原質が2人、抄紙機が2人、合計4人で運転できるよと、そう言う機械をやればいいじゃないかと言ったら、「ミスター・タイガー、それが出来たら、大変なことになる」「アメリカには段ボール工場の大きいところがなんぼでもあるから、その空いたところに抄紙機をぼんと置いてやれば、排水路は要らない、ボイラーは同じ段ボール工場のボイラーと一つで良い、いやあ、そりゃあ凄い、これからそうなる可能性はあるな」と、そう言っていました。

「それじゃあ、その抄紙機をウチが買う」と言うから、「イヤ、ちょっと待ってくれ、いまはとても忙しくて」(笑)と言ってきました。だけど、あと4、5年もしたら、そういう超ミニ・ミルの工場が、アメリカには何台か出来ると思いますね。

--ところで、タイガーフォーマーはいつごろ出来るんですか。

もう終わったですから。

--そうですか。

だから、そういうものがポッと入ったら、もう出来ちゃうんですよ。そうなってくると、大変なことになります、コストが。コルゲータだって、スリッタースコアラを外してこうやったら、生産効率はまるで違ったものになります。そういう時代になるんです。大きな目で見ればですね。

だけど、いま現在の目で見ると、段ボールというのは、装置産業ではないですから、それほどのニーズは無いとも言えるんです。そんなら、ちょっと部品をこう交換して、こうやることによって、いままでのマシンが2割、3割、4割も生産が上がる、コストがダウンするという風な機械を考えて、作ってあげなさいということを、私は言っているんです。 テンションカット方式、もうすでに3年前から

--もう一度整理しますと、まず問題点はスプライサー、それからスリッタースコアラ、カットオフと、あとはシングルフェーサのプレスロールの問題ということですね。

そうです。スプライサーはスピードのアップダウンとか、紙を継いだ時とか、運転中のテンションの変動を一切無いようにしたいということです。
そのために、テンションカット方式、つまり一つひとつのスプライサーのあとに、テンションをカットするところと、それからテンションカットのあとは、そのテンションを合算して平らにして送り出すところを持った装置を付設することです。これはもう出来て使っています。全然問題ないです。変動はありません。もう3台入れました。

--いつ頃ですか。

もう、3年前ぐらいです。よそには一切、黙っています。

--よそには教えたくないわけですか。

そうなんです。言わないんですよ(笑)。

--それを今度、オープンになさるんですか。

そうです。オープンにします。もう、何もかも全部です。ボランティアですから。

--要するに、そのスプライサーのところだけで、テンションコントロールが出来ちゃうということですね。

そうです、簡単にね。非常に簡単です。

--スリッタースコアラはコルゲータラインから外して、別工程にすることですね。

そうです。それで、大半は全判でとり、寸法の短いものは倍判でとって、スリッタースコアラに掛けるわけです。そうすると、コルゲータのスピードは落ちないですよね、生産量がぐーんと上がります。抄紙機と同じになります。

--予想では、どれぐらい上がる計算ですか。

おそらく、3割か4割上がると思います。常に一定スピードで走るようになります。
--コルゲータのスピードのアップダウンの問題は、スリッタースコアラと、先ほどのスプライサーと、ダブった形の問題ですが、結局、両方とも解決できるということですね。もう、一挙に解決します。

--あとは、カットオフですか。

寸法の問題は仕方がありません。短いサイズのものは、結局、倍判でとって、あとでカットするしかありません。短いものは、どうしても、スピードを落としていますから、どう仕様も無いです。カッターによりけりですが、大体600mmから700mmが限度でしょう。だけど、その倍判でとれば、全く問題は無いです。

--ということは、コルゲータの問題は、こういう考え方でやっていかなければならないということですね。これはワンセットですか。

そうです。製紙の場合の、一つの抄紙機として見ているわけです。

--一つひとつやっただけでは、意味がないということですね。

意味が無いです。取りあえずやりたいのは、スプライサーとスリッタースコアラです。これはもうすぐやるべきことです。シングルフェーサは、別の問題です。シングルフェーサは、こういう関係ではなくて、しかし、とにかく早くやらなくてはならないことです。スプライサーとスリッタースコアラだけを先にやるというのは、一つには、経費がかからないんです。いままでの設備に、新しいものをドーンと入れるわけじゃなくて、いま回っているものをチョコン、チョコンと直していって、生産量をどっと上げるわけですから。そうすると、まさに21世紀に合致したやり方になると思うんです。

--もともと、みんな、得能さんの発明されたものなんですが、それを、みんながこうでなくてはいけないと思い込んでやっているわけですから、今度は当のご本人から、そうじゃないよと言われたら、ショックも大きいですね(笑)。

日本ではそうかも知れません。しかし、アメリカに行って話したら、いやあ、お前の言う通りだ、全くそうだと言って、それでもう「ゴー」をかけるんですよ。日本じゃ、「ゴー」はなかなか掛からないんです。ところが、海外でやりはじめたら、いままで見向きもしなかったのに、急に、「さあ、遅れちゃいかん」となるんです。日本人というのは、変な民族なんですよ。とにかく、向こうの連中は、良いとなったら早いです。もう、「ゴー」がかかったから、また来てくれ、来てくれと言ってね。

--得能さんは世界に一人しかいませんからね。とにかく、あれもこれも、基本はみんな得能さんの発明でしょう。

まあ、色んなものが、どういうようにして開発されたのかとか、昔からのことは全然知らないんだから、こうやらなければならないという一連のそういうことは、亘理さんの、この本でも読まなければ分かんないと思いますよ(笑)。

--それに、最近は、なにか不景気で萎縮しちゃったみたいで、非常に残念ですが。

そりゃあね、萎縮じゃないんですよ。高度成長の時は、あのまま、すっと行っていたわけですね。ああいう全体の状況が、バブルが弾けたあとは、方向が変わって、こっちへ行きだしたんです。それを、まだあっちだと思って、萎縮したと思ったら大間違いで、どうしてこっちへ行かないんですかということなんです。

いまは、こう横に走っているんだから、横に乗らないと、向こうに取り残されたままになっちゃうんです。だから、みんながアタマをこっちに切り替えないとダメです。この3点セットがそうでしょう。コストはかからない、生産はダーッと伸びる。それで、またもとのような時代が来て、前のようにやりたかったら、そっちに切り替えれば良いんで、いまは過去のそんな時代じゃないんです。

--それにしても、これからの技術革新の先導も得能さんでしょうか。誰か、得能さんに代わる方が出てきてもいいと思うのに、結局、世界中でも発明家は一人しかいない(笑)ということですね。

私は、段ボール機械の開発を、製紙サイドからものを見てやったから、スプライサーから始まってああいうようにドドドッと行けたわけです。それで、そのままに置いておいたんですが、今度また出てきて、もう一度最初の原点に戻って、当時のように製紙サイドに戻って、全部見直してみようと思っているわけです。取りあえず、こういうことでやっていますけど、この機械を基準に、考え方としては、製紙サイドの方へばっと戻ると思います。

段ボール機械もそうですけれど、段ボール工場の経営も、製紙サイドの感覚でみると、いままでとは随分違った形で、見直されて来るんじゃないでしょうか。結局、段ボールサイドだけの感覚では当たり前のことが、製紙サイドの感覚では当たり前じゃないんですよ。そういうことも言えると思いますね。それで、段ボール会社も、いまはリストラだ、なんだとやっていますけど、そうする前に、機械がシンプルになって、こうやれば一人でやれるとか、それを進めないとね。

抄紙機では、アメリカ、ヨーロッパの良いところに行くと、たった3人です。抄紙機を3人で運転しているんです。ワインダーから何から全部入れて。日本では7人も8人もいて、もう信じられないほどなんです。経営のものの考え方が、全く違ってきているわけです。だから、自分らもリストラだと思ったら、黙ってそうやって行けば良いんです。ただ、リストラをするためには、機械を直さなければ絶対に出来ないです。いまある機械に対して、それじゃあ2人にせいと言ったって、2人にするためには、こことここを、こう変えれば2人で出来るということを考える人間がいれば出来るんです。営業でもそうです。考え方の差です。

私の息子の会社なんていうのは、ものすごいですよ。ビックリしちゃうんです。アメリカ資本の会社ですが、大変な利益があるんです。それで300人ぐらいでしょう。息子の上は社長ですから、役員やなんか、仕事のラインには、ほとんどいないんです。