特大


コラム・コラム・コラム

ホーム > コラム・コラム・コラム> 平成3年、第1次イラク戦争 2009-08-30(第1037号/その1)

平成3年、第1次イラク戦争 2009-08-30(第1037号/その1)

「段ボール事報」の新聞だけの時代から、ITサイトも同時に作るようになって、一番の大きな違いと感じるのは「読者層」の広がりで、おそらく何百倍かになったことですが、二番目には「スペース」が無限に変わったことです。無限だから、現在のニュースも、過去の記録も並べて読んでいただくことが出来ます。

本紙サイトには「歴史の証言」のタイトルで過去の新聞記事やコラムなどを開示しておりますが、いまちょうど作成中の18年前「平成3年」は、思えば正に歴史の転換点でした。その記録を新聞にも掲載します。

米国、中東泥沼化の始まり

(平成3年1月10日)
【何もかもイラク次第の正月】

▼世界経済の今後の展望も日本のいまの"いざなぎ景気"以来の息の長い景気の先行きも、そしてあらゆる産業の、勿論、この段ボール産業の今年の需要動向、市場動向もすべて今やイラク、フセイン大統領如何にかかった形となっている。

▼フセイン大統領は決して狂人ではないし、むしろ恐怖の瀬戸際ぎりぎりの"条件交渉"をしているはずなのだから、負けると決まっている戦争に突入することは絶対にないはずである。

▼ただ、絶対ないはずと思っていても1月15日が刻々近づくのに、クウェートの戦力をまだまだ増強しているのを見ると、本当に絶対ないのかということも何か一抹の疑念が生じてくる感じである。

▼有り難いことに、日本は悲惨だった戦争の教訓をタテに一切の軍事紛争から身を避け、平和経済に徹してきたおかげで今日の経済繁栄を成し遂げ、われわれ国民の一人一人が気楽な"イラク評論家"で済んでいるわけだが、その一方で、特にアメリカ国民から「ずるいじゃないか」といわれたら何と返事をしたらよいものか、国民一人一人が内心悩んでいる風でもある。

▼さて、段ボール需要の伸びは相変わらず好調だ。10月には史上初の11億m2大台に乗せたあと、11月も11億m2台、そして12月も年末までゆるまず繁忙状態がつづいたことから推測すると、多分6%台の伸びではなかったかとみられ、とすると12月も11億m2台という計算になってくる。

▼そして、年が明けて、これから先はもちろん"イラク次第"ということなのだろうが、底流としてはイラクが片づいたらまたとび出そうという気配が、株式や円や、その他もろもろの経済現象の中に散見されるところ。つまり、段ボールの場合もそれが片づきさえすれば懸案の春の値上げへといった流れに一気に弾みをつけてきそうに思われる。

▼この次の本紙の発行時期には、イラク問題は2つに1つの結論が出ているのだろうか。昔の日本もイラクのようだったのだろうか。

(1月30日)
【90年の日米段ボール生産】

▼日米の1990年の段ボール生産動向が時を同じくしてまとまった。それによると、米国の90年の段ボール出荷量は合計293億3,600万m2、前年比0.8%の増加で、これは過去最高だった前年の出荷量をさらに上回る年間最高記録となった。

▼これに対して、日本の段ボール生産は合計123億4千万m2で、前年比4.2%の増加。パーセンテージでみると、日本は米国の5倍も伸びている。もっとも米国の段ボール産業は、絶対量の規模でいうと、日本の約2.4倍で、この割合は過去数年来あまり変わっていない。圧倒的に巨大でパワフル、そういう米国の段ボール産業のイメージは何も変わっていない。

▼ただし、そうはいいながら、日米の"車間距離"はわずかながら縮小しつづけている。たとえば、90年も日本の段ボール生産はちょうど5億m2伸びたのに対して、米国は2億2千万m2しか増えていない。つまり、90年には2億8千万m2分だけ両者の距離が接近したわけである。

▼これをぐっと広げて、10年単位でみると、10年前の80年には米国の段ボール出荷は224億2千万m2、これに対して日本は80億4千万m2だった。つまり、過去10年で、日本の段ボール産業は(収益不振をかこちながら)実に53.5%、43億m2も伸びたのに対して、米国は絶対量では69億m2増と日本の増加分より6割も多い伸びだったが、伸び率でいうと30.1%に過ぎない。そして、日本の場合、更に12年前の1968年(昭和43年)には40億m2足らずだったから、つまり以後の22年間で3倍の規模となったわけである。

▼さて、日本の段ボール産業は、西暦2000年には年間200億m2の生産規模に達する可能性がある。つまり、それには年率5%の伸びが必要だから、2000年は無理でもその2〜3年以内には可能だろう。

▼但し、米国は今明年にも300億m2に達しよう。段ボール産業をマスにして測ると、日本はまだまだ足許にも及ばないのだが。

(2月10日)
【中東湾岸戦争あれやこれや】

▼毎日、日に何度かは時刻を見はからってニュースを聞き、湾岸戦争の戦況を確かめる。それが日課になったという人が多い。

▼初めは、ベトナムと違って、あんな隠れるところもない砂漠の国だから、圧倒的に優勢なアメリカの空軍の前にひとたまりもないだろうと、世界中の人が考えていた。まさか戦闘機も戦車も大砲、ミサイルも、そして師団単位の軍隊までも頑丈に作られた地下シェル夕ーに隠されていたとは、アメリカのペンタゴンさえ知らなかったのだろう。

▼しかし、戦争の帰趨は、開戦から20数日経って、もはや誰の目にも明らか。向こう1カ月かかるか、かからないかの議論は軍事評論家にまかせるとして、湾岸戦争が終わったあとの世の中がどう動くのか、その辺が一番肝心なはずである。

▼ただし、終わり方が大きな問題であるに違いない。アメリカがフセイン政権の存続を認めるはずはないから、アラブの英雄が英雄でなくなる日が来るのかどうか。アラブの人たちがわずか向こう1カ月や2カ月で考え方をすっかり変えてしまうことはないように思われるし、とすると中途半端な勝ち方ではダメという軍事評論家の言う通りなのだろうか。

▼あれやこれや考えてみると、この戦争は終わったあとが相当厄介そうに思えてくる。日本が負けたあとの単純明快さと、かなり違うものになりそうである。

▼しかし、それにしても戦後の復興需要は、物理的には何の変わりもなく急速に盛り上がってくるだろう。いいかえると、かつて貧しかった中東湾岸諸国が、石油価格の上昇につれて豊かになり、つれて膨大な中東特需が生じて世界経済に大きな刺激を与えたその繰り返しがまたやってくるのだと思われる。要は、石油という支払財源を持った国々が戦禍を蒙り、被災国になったということで、戦争の破壊のあとの建設で経済がひと回りもふた回りも大きくなるというのは、経済の持つ本来の奇妙さなのか。

▼アラブの人は、日本人と違って「敗けてよかった」とは決して言うまいが。

(2月20日)
【中東湾岸戦争が終わったら】

▼中東湾岸戦争のおかげで仕事がさっぱり手につかなくて閉口しているというのは、日本中はおろか、世界中のことだろう。実際、仕事というのは、ある程度、先行きを瀬ぶみし、確かめ見通した上で進めて行くものだから、湾岸戦争が終わったら、俄然、展望が開けてくるだろう。しかし、片付かないうちはそう思い切ったことも出来やしない、ということに違いない。

▼世間が、そういうようにみな湾岸戦争の終わるのをいまかいまかと待っているのだから、それなりの決着がつくと、一斉にとび出すような雰囲気が生まれてくるかも知れない。

▼さし当たり、いまは少し頭打ち気配に変わった段ボールの需要動向も、いっぺんに勢いを盛り返して来そうな気がするし、また、段ボール原紙の再値上げ問題にしても、メーカーはノド元まで出かかった声を、いまはまだ時期ではないと、辛うじて押しころしているような気配でもある。

▼とはいえ、ともかく生命には別条がないのだから何ということもないのだが、茫漠たる砂漠の砂嵐の中で生命を賭ける戦いを余儀なくされている約百万人の人々のこと考えると、ふと「英雄」とは一体何なのだろう、というようなことも思われてくる。

▼先にイラン・イラク戦争を起こし、こんどまた湾岸戦争の発端をつくったイラクのフセイン大統領は、間違いなくアラブの「英雄」のようである。しかし、ジンギスカン、ナポレオン、ヒットラー、スターリン、あるいはわが国の古来の英雄たちを引き合いに出してみても、一人の英雄のかげでどれほど多くの命が失われたことか。などと考えながら、国会をテレビで見ると、英雄にはほど遠い人ばかりで、改めて安心する思いもある昨今である。

▼さて、段ボールおよび段ボール原紙をはじめ、平成2年の生産実績値が出揃ってきた。段ボール生産は123億4千万m2、対前年比4.2%の増加、また段ボール原紙の需給も初めて800万tの大台を越えた。収益的にもようやく実が入って来て、万事これから。

(2月28日)
【段ボール動向も中東に直結】

▼湾岸戦争がようやく終わった。このあと、フセイン政権がどうなるのか、中東諸国の復興の経過はどういうコースをたどるのか、あるいはパレスチナ問題はどうかなど、遠い中東湾岸問題がこの段ボール産業の運命にも直接的に響いてくることを実感した7カ月であり、またこれからの歳月でもあるだろう。

▼中東以上に不透明なのが「ソ連」ということで、あと1カ月半後のゴルバチョフ大統領の訪日が「吉」と出るのか、「凶」と出るのか、何とも気にかかる状況だろう。しかし、ともかくサウジアラビアの油田が無事だったことで、第3次オイルショックは避けられたし、少し時間はかかるだろうがクウェートの油田火災もやがて一つ、また一つと消し止められることになるだろう。その火災が一つ一つ消し止められるたびに、クウェートの資産、そして人類の資産が一つ一つ復活してくるということなのだろう。同時に、世界の経済に、その復興を通じて大きな活力を呼びおこし、活力が活力を生み出す循環を通じて先進国、中進国、後進国のそれぞれに相応の波及効果を及ぼしてくるのだと思われる。

▼いままでは、それが逆に逆に働いた。わずか7カ月ではあったが、世界全体の経済損失、得べかりし利益の喪失はどれほどの金額になるのだろう。とてつもない天文学的な数字だろう。

▼絶好調だった段ボール生産の伸び率も、昨年末からかげりをみせはじめ、年初以来はがくんと落ち込んでいるようだ。1月の生産速報は8億5,731万m2、前年比1.9%の増加で、昨年3月に、その前年の消費税実施にともなう駆け込み需要の反動でマイナスとなった以外では、最近、ほとんど見かけない低率の伸びとなっている。

▼2月いっぱいも、中東湾岸の戦況に振り回されて、おそらく更にダウンしたとみられる。そのあと、少しずつ回復するコースなのだろうか。そうした中でも、段ボール箱価格の修正はじわじわ進行している。基調が本当に変わったようだ。