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平成3年、山から谷へ逆落とし 2009-10-15(第1040号/その2)

原紙が漸く減産体制

(平成3年10月10日)
【原紙各社が減産体制に突入】

▼何という天気だろうか。毎日毎日雨ばかり。確か10月10日は毎年必ず晴れるという気象上の特異日だったはずで、だから東京オリンピックの開会式の日に選ばれたとも記憶するが、今年ばかりは、そのジンクスさえ通用しなかった。

▼テレビを見ていたら、何でも7月から10月現在までの100日ほどで、快晴の日は3日か4日、そしてところどころが曇りで、残りの確か70日以上が5日続きとか1週間連続の雨だったそうである。これでは、さすがの段ボール需要もマイッタ!というしかないだろう。景気減速で工業生産がダウン、そして台風被害と雨で農業生産がかつてない大打撃を蒙った。当分、段ボールは前年比マイナスがつづくと覚悟する必要がありそうだ。

▼そうした中で、一番の不安材料だった原紙が、大型新マシンを稼動させたセッツの増産延期の決定を皮切りに、メーカー各社がそれぞれ自主的に操短体制に入り、どうやら需要減に対して原紙の元栓を締めることで、市況不安が避けられそうな雲行きとなってきた。

▼段ボール加工段階の市況は、統計上も上昇傾向が続いて極めて安定しており、以前とは業界の体質が一変して、よほどのことがない限り状況は変わるまい。ただし、この安定も平均単価でいえばわずか4円50銭/m2ほどの上昇により得られているもの。頼りないほど薄く、か細く、それだけに一層貴重ないわば段ボール産業界全体の命綱だろう。

▼過去の歴史をひもとくまでもなく、この産業界の一番の根底を形づくっているのが原紙需給。そこのところで、巨額投資の新マシンを背負いながら、あえて増産しないセッツをはじめ、予想以上の減産に走り出した各社と、原紙業界もずいぶん変わった様子である。

▼能力の自然増分が2〜3%。それを下回る需要では他に道はないのだが。

(10月20日)
【台風19号が残したツメあと】

▼8月度の段ボール生産確報が、前年同月比1.9%の減少と発表された。つづく9月度の生産速報は月末に発表されるが、それに先だってまとめられた製紙連合会の板紙統計によると、9月の段ボール原紙の国内払出は70万5千 で前年比1.0%の減少となっており、これからみると、やはり段ボールは9月も引き続いて前年比1〜2%程度のマイナス状態だったことが確かめられる。

▼今年は、全く異常な気象の年だった。前にも述べたことがあるが、不思議に猛暑・好天つづきの年は景気も好調だし、その逆に、天候不順の年は景気も思わしくない。今年は、景気のサイクルも勿論あるのだろうが、それに天候不順が輪をかけたような形で、どちらがニワトリで、どちらがタマゴか知らないが、ここに来て"加速的"に景気が急下降しつつあるような気がしてならない。

▼九州、四国、中国から裏日本一帯、北は青森までの地域に激甚災害をもたらした台風19号は、その後、調査すればするほど特に青果物問題の被害額がふくれ上がってくる様子のようだ。塩害で葉がダメになると、植物の炭酸同化作用ができないから、果実が実らず、葉菜類などはそのまま直接枯れてしまう。しかも、始末の悪いことに、塩害にあった果樹は立ち枯れたり、樹勢が衰えて、何年も、果実の生育不良が続くことになる。

▼被災地の方々は試にお気の毒で、お見舞いの言葉もないが、段ボール業界にとっても、この災厄はストレートに影響を及ぼしてくることで、決して他人事ではない。

▼上記の激甚災害地は、同時に青果物が主要需要というめぐり合わせ。このため場合によっては3割、4割の需要減ということも起こりかねない。そうした中でも、あるいはだからこそなのか、段ボール価格は全く平穏に静まり返っている。

(11月10日)
【みかんと柿とりんごの被害】

▼ようやく秋晴れの好天が回復して、ほっとした気分である。日本が冬型の大陸性高気圧の張り出しで台風から守られるようになったのと反対に、フィリピンでは数千人の死者が出る甚大な被害。今年は、よくよく台風にたたられた年のようだ。そういえば、アメリカのブッシュ大統領の有名な海浜の別荘も、つい先ごろハリケーンのため大被害だったとか。

▼さて、日園連の調べでは台風による今年のみかんの最終被害状況は、主要産地別に、当初の予想収穫量に対し、静岡が1%、広島29%、山口47%、愛媛11%、福岡27%、佐賀7%、長崎8%、熊本18%、大分5%、鹿児島12%となっている。

▼九州の福岡、熊本、鹿児島、四国では愛媛、それに中国では何といっても山口と広島の甚大な被害がめだつが、これで全国トータルではどれくらいの減産になるかというと、大体「10%」程度の様子である。不幸中の幸いで、今年産みかんは味がよい。市場での人気もかなり良いようだ。

▼また、予想以上に台風被害の大きかったのが、ちょうど収穫期直前だった「かき」で、福岡55%、愛媛40%、香川20%、新潟40%、山形20%、それに愛知5%と、名産地は軒並みの被害状況だった。この全国合計での減産予想が11%ということである。

▼こうしてみると、みかんとかきはまだ救われるが、りんごの場合は全国合計での減産割合が43%という大打撃。重い果体が細い柄にぶら下がっている構造だから、強風で実がバタバタ落ち、また鈴なりに重い実をつけて、いまにも折れんばかりだった木が実際に裂けたり折れたりした被害とが重なり、この結果だった。青森が70%、秋田60%、岩手50%、山形15%、長野6%とされる。

▼もっとも、りんごは落果被害で一過性。塩害のみかんの方がむしろ深刻とも。

(12月15日)
【業界の変身の大きさを思う】

▼平成3年がもうすぐ終わる。振り返ると、本年は世界的、歴史的に大変な年であった。湾岸戦争に始まりソビエト連邦の解体に終わるという、文字通り世界情勢が激しく揺れ動いた年だった。

▼歴史上かつてない二国間関係といわれる日米関係においても「真珠湾50年」の大きな区切りの年だった。その関連か何かの報道で、誰かが日本人の生き方について「まるで人生を2度も3度も生きたようなもの」と、戦前戦中の生活、戦後の暮らし、そして東欧・ソ連の変化を目のあたりにしている現在を評しているのを聞いて、まさにその通りの感慨を覚えた年でもあった。

▼そういう世界史的な関係ばかりではなく、われわれの身近かな段ボール業界においても、前例のない変化が訪れ、それが日増しに定着していくのを文字通り実感したという年であった。

▼"前例"というのは、段ボール業界では、かつては談合とか競り込み防止協定とかのカルテルが市況対策の中心で、それがなければ値は上がらなかったのだが昨年から今年にかけて、そういうものが100%ないのに価格は上がり、しかもいま量的にはゼロ成長状態なのに、小口もの、商品のニュータイプへの切替えなどに際した値上げが進み、全体的にみるとじわじわ小刻みに値上がりする"強含み"状態がつづいている。

▼以前だと、業界ベースの値上げ交渉が一巡したら、そのあとは即座に市況が反転し、値下がりが始まるのが普通だった。だから、現状のように安定的な水平移動の段ボール市況が現象として現われたのも、まさに業界始まって以来のこと。

▼世間では、景気調整の波の中で、価格ダウンの悲哀を味わっている業種が実に多い。そういう世間と段ボール業界の現況とをかえりみて、改めて業界の"ヘンシン"の大きさを思う年でもあった。

(12月25日)
【年初のトンネルを抜けると】

▼「どうやら持ちそうだ」「うん、何も変わらんのじゃないか」といった会話が業界のあちこちから聞こえてくる。かねて、段ボール市場情勢のヤマ場と目されてきた来年1〜2月不需要期についての観測である。

▼バブル経済の夢はすっかり冷め果て、今はもう"いざなぎ"がどうという言葉も聞かれない。景気はまさに調整期、後退の局面で、加えて今年は夏場の100日ほどの間に80数日は雨という長雨・冷夏。しかも、それを追いかけるように9月から10月初めにかけては台風17号、18号、19号の連続パンチで、特に台風19号はわが国の損害保険の歴史上にも正に記録的な大被害をもたらし、段ボール需要に大きなマイナス効果を及ぼしたことは疑いない。

▼あれも、これものマイナス材料ばかりなのに、年間の段ボール生産量は結局、1〜6月の前半に1億m2強あった増加分が、後半のマイナスでなし崩しに取り崩されて、10月までには8,500万m2ぐらい(0.9%)しか残っていない。

▼このあと11月、12月も取り崩されるが、しかし、それでも最終的には今年の方が前年より6,000万m2ほど多い0.5%増ぐらいのプラスが残る勘定となっている。

▼ということは、景気もさることながら、あの悪天候の条件下で、むしろこれだけのプラスがよく残ったというべきだろう。日本段ボール工業会長谷川会長の説く「基盤産業」の、その基盤的な強さが、このあたりにも発揮されているとみてよいだろう。

▼しかも、この強さは、消費社会がより高度に、より成熟していくにつれて更に高まってくる。最近の業況安定の一側面でもあるといわれる。

▼明年1〜2月のトンネルを抜けたら、そこには、更に明るい確信にみちた世界が待っているような気がする。とにかく、業界の自信のボルテージがどんどん上がってくるようである。