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平成6年、石油危機後と似た状況に 2010-05-15(第1054号/その1)

平成5年がバブル崩壊後、最も不況色の濃い情勢のまま暮れ、平成6年も先行きが混沌としたまま。段ボール生産量は平成3年後半からマイナスに落ち込み、平成4年がマイナス1%、平成5年が0.5%の増加。つまり、平成2年まで4%以上の伸長を続けてきた実態からすると、はなはだ冴えない状況が長く続くところから、業界中、「不況に飽き飽きした」空気でいっぱいであった。それでも、平成5年末ごろからは、やや好転の気配も。結局、平成6年は2.6%増で、平成2年の水準まで回復することになる。

(平成6年1月10日)
【なにかが動きはじめたのか】

▼大不況の年、平成5年は終わったが、平成6年もまだまだ行方が一向に見えない霧の中。ただ、年明けとともに、平成5年中にはなかった少し前向きの期待感が周辺の空気の中に滲み出してきたように思われる。

▼段ボールの生産は、平成3年後半からマイナスに落ち込んだが、それでも年間でいうと同年は前年比0.4%の増加、そして平成4年が1.0%のマイナス。平成5年はまだ確実なところは分からないものの、1〜10月累計で0.2%の増加1〜11月累計では0.4%の増加だから、12月度の状況次第で0.3〜0.5%の範囲内での「増加」が確実である。

▼この状態、つまり過去3年間にわたって文字通りの横ばいというのは、かつての高度成長期はいうまでもなく、石油危機に振り回された時代、円高不況時、その他もろもろの波瀾万丈の時代には、まるで想像を絶する環境であったに違いない。それにしても、改めてこの数字を見詰めてみると、「市場」の力でコント口—ルされた段ボール需要の精妙さを思わずにはいられないようである。

▼さて、あの第1次石油危機の時代から20年が経過したが、当時の昭和47年〜50年は需要が一時絶頂に昇りつめ、そして次にドン底まで転げ落ちた時代。その通算4年間の年間平均生産量は62億8千万m2だった。つまり、いまは当時の約2倍の産業規模にまで拡大している。

▼そういう中で、11月は3.5%の増加。何かが動きだした気がするのだが、どうなのか。

(1月30日)
【ちょうど20年前の悪夢と今】

▼ちょうど20年前の昭和49年の今ごろは、折柄のオイルショックでトイレットペーパー騒動が起こったり、市場には何もかも品不足でまるで奪い合いのような仮需騒ぎの真最中だった。

▼おかげで47年暮れごろから値上がりの続いていた段ボール原紙、および、つれて段ボールシート・ケースが一気に上昇、段ボール原紙では一挙にキロ25円とか30円といった荒っぽい値上げアナウンスがあったり、段ボールもm2当たりの平均単価で結局、1年間に30円とか、そういう驚異的な価格上昇となった。

▼当時、段ボール会社のセールスが「生まれて始めて電話一本で値上げが通った」と語っていたのがいまも鮮明に思い起こされる。

▼記者の記憶では、その仮需買いは49年の2月ごろまでだったように思われる。全国の倉庫という倉庫に思惑買いされたあらゆる物資が山積みされ、そればかりか段ボールもユーザーの倉庫に山ほどため込まれた。

▼しかし、そのあとの反動がまた激烈だった。春から段ボール生産は毎月毎月どんどん落ち込むばかり。最初は10%台が、やがて20%台のマイナスが普通になり、更には30%もの大幅な減少で段ボール工場はヒル過ぎにはもう何もやる仕事がなくなった。そういう状況の中で価格もはじめはゆるやかに、しかし次第に下げ幅も大きくなって、明けて昭和50年春には価格は半値近いダウン、数量はピークの4割減とか、正にさんたんたる状況となった。

▼あれを「大不況」というなら、この3年間、確かに数量はほぼ横ばい、というよりマイナスは平成4年だけで、平成3年も平成5年も僅かプラス。そんな「平成大不況」を段ボール業界は不況とは呼べないような事情にもなっている。

▼段ボールという包装材にとって、解説できない「大不況」が進行中である。

(2月10日)
【設備投資"抑制"の緩和を】

▼5兆4千7百億円の所得税・住民税の単年度減税を目玉とする総額15兆2,500億円の総合経済対策が、2月8日まとまった。バブル経済崩壊後の景気後退局面で、これまでに既に4回の景気対策が打ち出されており、今回は第3次の総合対策だという。

▼だが、以前だとこの種の景気対策が打ち出され、金利も低め誘導で金融緩和されると、大体半年後ぐらいからじわっと効果が出てくるといわれていたものが、いままでの4回は何だったのかというぐらいに一向に効き目がなくて、こんどの減税、総合対策の効果のほども、どうも国民の信頼感はもう一つのようである。

▼信頼感がないから、減税分の大半は貯蓄に向かうのではないかとの説がある。日本国民の貯金好きは明治以来の教育の輝かしい成果なのか、老い先不安な国だから何より貯金だけはしなければならないのか、とにかく以前は諸外国から羨望された国民の貯金好きが、いまはこの大不況からの脱出の大きな障害となっているのも確かなようだ。

▼同じことが、段ボール業界では設備投資の極度の抑制という形で、特に昨年来急速に生じて、この産業の生産手段そのものを作り出す段ボール機械メーカー各社を極端な苦境に追い込んでいる。世間の不況ムードにもかかわらず、段ボール部門の収益はそう悪くはない。それに、もうそろそろ景気も早晩回復に向かって来るだろう。従って、段ボールメーカー、製函メーカーに、いま意識的に抑制されている設備投資態度を、逆に意識的に緩和、正常化してはいただけないかというのが本稿の趣旨である。

▼設備は集中の弊害の反面、逆に抑制過ぎの後々の反動も大きい。不況のもたらす弊害を、せめて段ボール産業内部の自助努力で防ぐとするなら、「生産手段を作る企業」を守る行動が肝心と真底願う次第である。

(2月20日)
【段ボールでみる日米経済力】

▼アメリカの経済が、一般に伝えられる通りの回復ぶりの様子である。「本格回復の軌道に乗りはじめた」という評価がされているが段ボール統計の動きからみても正にその通りのようだ。

▼FBAがこのほどまとめた93年12月の米国の段ボール出荷は、数字だけでいうと前年比実に10.1%の2ケタ増加で、しかも11月は同12.3%だったから一般に伝えられる以上に迫力ある回復ぶりが表面化している様子である。

▼このため、93年の年間出荷も前年比5.4%の増加と、羨ましいくらい高い伸びである。わが国の場合でもそうだが、前年比で「5%」を越えるほどの伸びになると、3%や4%では出なかった好循環が不思議にどんどん出てくる。アメリカの段ボール原紙市場が様変わりに強含んできて、つれて段ボール値上げスケジュールも浮かびはじめたのも、「5%」のマジックが強く影響していそうである。

▼時を同じくして、わが国の昨年の段ボール生産実績も発表された。合計123億2,759万8千m2、前年比0.5%の増加だった。上記のアメリカの年間出荷量はm2に換算すると328億6,494万7千m2、ざっと日本の生産量の2.666倍である。このスケールで前年比5.4%増というペースでアメリカ経済が走りはじめた。自動車産業をはじめ、さまざまな製造業、サービス産業を含めてみんな一斉に走りはじめたいうことなのだろう。

▼日米経済包括協議が決裂して、何やらギスギスした空気に包まれているが、いま明らかなのは、日本経済がかつて思われていたほど強くはないということと、アメリカ経済がかつて思われていたほど決して弱くはないということだろう。

▼それにしても、いまの日本は少し悲観し過ぎだと思うが、どうだろうか。

(2月28日)
【不況にはもう飽き飽きした】

▼「もうはまだなり」とか「まだはもうなり」という言葉がある。まるで正反対の非論理的なこの言葉が、そのような場面、場面にピッタリした、含意の言葉に変わるのだから面白い。要は、相場も所詮は勝負ごとで、丁半のサイの目に賭ける運否天賦だから、理屈はすべて後追い説明ということなのだろう。

▼いま、景気はいよいよ浮上への非常に微妙な段階に来ている。「微妙」というのは、例えば日銀とか、政府とか、景気それ自体に対して公的な責任を持つ人たちの言い回しであって、われわれ一般庶民の言い方ではないが、段ボール統計の推移からみると、十中八、九はまずこのまますんなり「浮上」の段階を一歩一歩上がって行くに違いないと思うものの、残り10%ぐらいは"もしや"の不安も残るというぐらいの意味である。

▼先述の言い回しでいえば、平成5年は「もうはまだなり」だったが、いま現在は「まだはもうなり」まで辿りついた感じと思われる。というのも、段ボールは前途に昨年のような悪材料がないこと。たとえば、昨年の円高騒ぎ、長雨・冷夏が段ボールの需要を何ポイント減らしたかを考えてみれば簡単である。1%か2%か、3%か、人によってそれぞれ判断は違うだろうが、そんな低いものではなく、案外、4〜5%ほどもあったのかも知れない。

▼そういう圧迫材料がなくなると、人々の景気マインドが明るくなり、企業の経営マインドも前向きに変わってくる。景気の賽の目がころころと動きはじめると色んな相乗効果が加わって需要も当然加速されてくる。だから、回復期に入ると停滞期にはとても期待し難かった数字が何の前ぶれもなく現われてくる。

▼という明るい展望が新春から開けはじめた。誰もが不況に飽き飽きしたと思っている中で。