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平成7年、悪夢の泥沼から脱出 2010-09-15(第1062号)

(平成7年4月25日)
【好転のチャンスつかんだか】

▼景気が悪くなるときは、大方の予想をはるかに越えてどんどん悪くなる。逆に良くなるときも大方の予想外に良くなる場合がある。

▼アメリカの製紙産業、段ボール産業の場合がそうだろう。1993年末まで、ライナーの値上げアナウンスは何度もあったけれど、それが通るどころか、値上げアナウンスのたびに逆に値下がりするというケースが続いた。

▼それが、93年11月にはじめて通ったと思ったら、以後は四半期ごとに計6回の値上げがこの4月まで続いて、通算の値上がり幅が240ドル、実に80数%もの急激な上昇となっている。

▼日本では、とてもこんなことは考えられないようである。もっとも日本でも過去にこんな例がなかったわけではない。いわゆるオイルショックとチップショックが重なった時期だが、そんな異常事態でもない限りはということであろう。

▼同じ自由経済、資本主義国でも、資本主義の質というか、奔放さの度合いが彼我の間で根本的に違うようである。

▼それはともかく、日本もこのところすっかりツキが落ちてしまっている形だが世界経済の大きな展開の中で、やはり日本の経済も大震災や極端な円高にもかかわらずじわじわと回復・上昇への過程を歩みはじめているようである。

▼段ボールという素材は物流の活発さの度合いをそのままあらわす指標。いわば経済の動きをみる上では先行的な指標の一つと考えてよいが、それが2月に前年比6.1%増と、バブル期の最終局面だった平成2年10月以来の高い伸びが戻った。

▼悪い、悪いと言い合っているうちに、思いがけなく足もとでは事態が好転しつつある。既に段ボール原紙は2ケタ近い伸びが続いてフル操業なのだけれど、段ボールも2歩3歩の遅れで好転のチャンスをつかんだ形のようだ。

(5月10日)
【最適コスト操業度をさぐる】

▼過去3年あまりの悪夢のような泥沼から抜け出して、原紙メーカーの表情が底抜けに明るくなっている。4月出荷分からの段ボール原紙値上げも、この5月連休が最終的な確認のためのインターバルになった形で、全面浸透で決着した。

▼値上げ幅は大ざっぱに言えばほぼKライナー3円、ジュートライナー5円、中芯5円の線で、このほか下がり過ぎていた分のスソ切りとか、格差是正的な要素も加えてプラス・アルファが多少オンされる勘定という。

▼それはともかく、これまでの値上がり過程で、量を売ろうとして下げたメーカーと、そうでなかったメーカーとのメーカー間格差が市場でかなり大きくついていて、その格差をせばめようとしても実際には無理なので、大体新価格体系はそれぞれ平行移動のような形ででき上がるようだ。

▼国内での値上げ浸透を見きわめて、これまで東南ア市場向けなどにも熱心だったメーカーが一転、4月から輸出をカットする動きに変わった。段原紙の最近の平均稼働率は95%ぐらい。ということは、輸出を行っているメーカーではほとんど完全フル操業状態ということだが、このため特に3月ぐらいから古紙原料の調達面でショートしはじめたため、国内市場優先で輸出を切る姿勢に各社が転換したのだという。

▼輸出を行っていたメーカーは7-8社で月間約2万t。それが4月からは半減の状態とされ、早晩、輸出を続けるメーカーは2、3社しか残らないのではないか、とも。

▼これは「最適コスト操業度」をめざす動きなのだという。原紙もカルテル体質が抜けて、それぞれベストの経営の観点からは、今後何よりも原料価格と製品価格のバランス、つまり原料調達と原紙生産(操業度)の均衡をめざす姿勢に自然に変わるのだという。変われば変わるものである。

(5月25日)
【段ボール値上げの舞台装置】

▼段ボール業界の収益状況の移り変わりをそのまま反映しているとされるトップメーカー、レンゴーの平成7年3月期決算が発表された。段ボールの生産量はシートが前年同期比10.9%増、箱が10.7%増と数量は大きく伸びたが、これに対し売上高は0.3%の減少、また経常利益は同64.6%減、当期利益49.2%減となって固定資産の売却により赤字は免がれた状況という、かつてない最悪の決算内容となっている。

▼経常利益は平成5年3月期(前々期)が78億円だったから、最近2年間でほぼ5分の1に縮小した。売価の低下と、そして昨年後半から現在にかけての原紙の値上がりが、原紙部門を持つレンゴーさえも全く赤字の状態に追い込んでいる。

▼この決算内容が明らかになって、段ボール値上げもいよいよ本格交渉の段階に入ったと言えるのかも知れない。これまでは本格交渉ではなかったと言うわけではないが、景気の状況がこうで、大震災があり、円高で輸出が非常事態であるのは明白だったから、これまではどちらかというとユーザー先の事情が優先で、わが身の説明はどうしても遠慮がちにならざるを得なかったのかも知れない。

▼そういう過程も経て、これからはただ真っしぐら、危殆に瀕した収益の回復に向け段ボール業界が突進して行くことになるだろう。「夏までには何とか」ということになりそうだ。

▼折柄、需要の環境が大きく好転しつつある。昨年夏の猛暑は、いまから振り返ると、秋の段原紙値上げを可能にした第一要因だったが、あの7-9月の前年比伸び率が4.3%、それに対しこの1-3月の伸びは4.9%に達している。

▼値上げには、需要の少なくとも4-5%の伸びがないと難かしい。その舞台装置がどうやら整った状況でもある。

(5月30日)
【円高メリットはどこに】

▼話題といえばオウムとそれから「円高」である。円高の影響は一体どうなるのだろうかと考えてみると、最近の数年間というか、あるいは最近20年間はというのか、いつも円高が経済や景気の面で大きなマイナス材料として取り上げられつづけていて、いうなら日常思考の中にこれがすっかりインプットされてしまっているようである。

▼しかも、円高というのは何か非常に悪いものという観念ばかりが国民の末端にまでしみ通ってしまっていて、果たしてそうなのか、どうなのかという点が日本ではどうもあまりうまく、分かり易くは取り上げられていない気がする

▼そうした中で、住友系の金融機関だったと思うが、「円高メリット」が追い追い浸透するため、最近のこの猛烈な円高にもかかわらず、消費者需要の拡大を軸にした景気の回復はこれまでとあまり軌道を違えずに着実に進行してくるだろうーー確かそういう見通しを述べているのを、そう大きな見出しではない新聞記事で最近読んだ。

▼というのも、段ボール需要の量が、バブル経済の崩壊後も一向に減らず不景気は結局、製品の値下がりによる売上高の急減が中心だったこと、逆に最近はそれほど景況感が好転しているわけでもないのに、数量的には5%ベースの増加で、これなら「中成長」ではないかというような状況にもなっている。

▼円高メリットということは、だから数字的にそうはっきりとは証明しにくい事柄ではあってもそれなりに消費の末端までうるおし、その量を押し上げてくるもののように思えてくる。

▼平成5年-6年の頃、なぜ段ボールのマイナスがコンマ以下または逆に増加なのかがわからなかった。結局、製品価格の低下が、企業に不景気を強いる一方、消費には確かにプラスなのだろう。

(6月20日)
【段ボールは恵まれた産業】

▼6月16日、ハマダ印刷機械(株)上野工場で同社がこのほど新開発した「ミネルバーJ」(フレキソグルア)の公開試運転があり、長谷川昌社長にいろいろお話をうかがった。

▼同社はオフセット印刷機を主力に、新聞輪転機、そして周知の通り段ボール機械と、この3つの部門を持っている。過去3年間、毎年マイナスがつづいて、「売上高はとうとう3年前の実に半分になりました。段ボールとはまるで根本的に違う産業で、ただ、さすがに最近は少し良くなり始めた感じです」と。

▼そうした中で、同社は中国で合弁の印刷機製造工場を近く稼動させる予定。巨大人口を有する有望市場にいち早く進出、また世界の印刷機市場に輸出、気をはいているほか、特に韓国の新聞輪転機市場では圧倒的なシェアを持っている。

▼長谷川昌社長は語った。「段ボール業界にいた時は段ボール産業というのは随分しんどい産業だと思っていました。しかし、機械製造業に来てみたら、段ボールは生産がマイナスになることなど全くないし、売上げが半分になるなど想像も出来ないことです。段ボール業界は、いまコスト高の製品安で非常に苦しんでおり、ケース値上げが思うように進展しないので悩んでいますが、それでもなおかつ段ボールは恵まれた産業だと私は思います」と。

▼段ボール値上げの難航で、業界全般が悲観的な心理状熊におちいっているさ中だが、長谷川昌社長の言葉には「置かれた環境は決して思うほど悪くはないから頑張ってほしい」という段ボール業界への激励の響きが感じられた。

(6月30日)
【若い女子オペレータ大活躍】

▼(株)ISOWAが今春開発した最新型フレキソフォルダグルア「WING」の発表で東北旭紙業(株)を訪問した。工場内に入ると、コルゲータの管制室近くにも、フレキソグルアにも、プリスロでも、まだうら若い女子オペレータが現場作業に生き生きと働いている。カメラを向けるとVサインで答えるという具合で、屈託なく、そして大変可愛い。聞けば、今年春卒業の男子高校生5名、女子6名を採用した中で、うち女子4名が一般事務よりオペレータの方がいいと希望して、こういうことになったのだという。いまは段ボール機械は全てコンピュータ装備。

▼年配の男性諸氏はコンピュータが苦手でとかく逃げ回りがちだが、入社わずか2-3カ月の彼女たち、コルゲータのとび込みオーダーの処理(通常のオーダーは事務所のオフコンで処理している)とか、製函設備の操作盤のコントロールなど面白い、面白いと仕事に非常な興味を持って活躍している様子。

▼最初は工場長の提案がきっかけだったそうだが、意図通りか思いがけずか、おかげで男子社員たちも活性化、工場内全体が活気にみちて明るく楽しい雰囲気に変わったと。広く段ボール業界の方々にそれぞれご検討をおすすめしたいと考えて、彼女たちの笑顔を紙上にお伝えする次第である。

▼景気情勢の腰折れがいわれる中で、5月の段ボール生産速報が10億4,418万1千m2、前年比4.5%増と発表された。4月確報は速報より下方修正されて1.9%の増加と、1-3月の前年同期比4.9%増からガクンと落ち込んで心配されたが、これは上述の景気の問題のほか、操業日数の関係もありそう。

▼というのも、暦の計算でいうと、4月は前年より1日少なく、5月は逆に1日多い日数。4-5月平均は3.1%増になっている。

(7月15日)
【無包装が最良の包装か】

▼大手スーパーのジャスコが、97年度に施行される容器包装リサイクル法に対応し、直接仕入れている青果物を対象に集荷・陳列のための包装用段ボール箱やプラスチックトレーを廃止するとの報道が、日本経済新聞で伝えられた。

▼代わりに、繰り返し何度も利用する専用プラスチック箱を採用し、この箱に詰めた無包装状態で売り場に陳列する。今年中にホクレンや長野県経済連などの地域経済連や農家から仕入れる青果物のうち、レタス、タマネギなど約30品目で始め、来年中には全品目に拡大するという内容。プラスチック箱は、三菱グループが独シェラー社と合弁で設立したイフコ・ジャパンが貸し出し、経済連や農家は収穫した青果物をそのままプラスチック箱に詰めてジャスコに納入し、空になったプラスチック箱はイフコ・ジャパンが回収、洗浄した上で再び産地に貸し出す仕組みという。

▼何10年も前から「無包装が最良の包装」といわれてきた。それだけに、こんどのように「輸送包装容器としての段ボール箱」を何とか無しで済ませられないかと色んな試みがなされ、試験輸送などが実施された。しかし、結果からいうとこれらは全て失敗だった。結局、何が一番の原因かというと、段ボールはワン・ウェイのコスト(箱代)しかかからないのに、段ボールを何かに変えるとツー・ウェイのコスト(容器回収とその再輸送費)になることである。

▼それから、段ボールが高価なものだったら事情が別かも知れないが、何分にも紙代(古紙代+抄き賃)プラス何円かでお客を奪ったり奪られたりしている世界だから、これ以上安価な材料はほかにはない。

▼上記の新聞報道の字面だけからみると、ジャスコはコストがかからず手間も要らず、ベスト・プランのように見えるが、果たしてそうだろうか。

(7月25日)
【猛暑の次は収穫の秋に期待】

▼つい3、4日前、多摩でセミの声を聞いた。「今年は冷夏の年」とばかり思わされていたから、前夜来の雨上がりの朝聞いたセミの声に「やはり夏は夏で忘れず来るんだ」と少しほっとする思いでもあった。

▼学枚が夏休みになって初めての日曜日。台風3号の置き土産で漸く梅雨明けを思わせる青空が広がり、翌月曜日から始まった猛暑のなんと物凄いことか。「冷夏」どころか、こんな猛暑がしばらく続くそうだから、今年も、あるいは2年続きの猛暑の年になるのかも知れない。

▼「段ボールは暑い夏が好き」である。夏は暑ければ暑いほど、逆に冬は寒ければ寒いほど段ボールには良い環境ということである。寒くて、海水浴場が閑散とするようではどうももうひとつ冴えない。ということで、景気低迷の折ながら、段ボールはまた元気を取り戻すチャンスを得たようである。

▼暑い夏の最中のシーズン需要もさることながら「収穫の秋」も、また暑い夏次第。今年は、特に肝心カナメの段ボールケース値上げの成果がかかって来るだけに、秋の準備過程としての夏への関心もひときわ高そうである。

▼それにしても、今年は悪い条件の連続だった。素材の段ボール原紙が、世界的かつ長期的循環の流れとして昨年来、価格上昇の過程に入って来たのに対して、段ボールは原紙値上げを呑まざるを得ない一方、大震災があり、ユーザーの円高にともなう厳しい対応措置あり、天候不順で青果物が不作。オウム騒ぎも、段ボール値上げを何となく白けさせるのにひと役買ったような具合だった。

▼にもかかわらず、毎月赤字が積み重なれば、段ボールメーカーのアクションはみな同じ。まず、さっぱり切迫感のなかったシート値上げにメドをつけて、次はいよいよという段階。「収穫の秋」が期待されている。

(7月30日)
【ケース値上げも順調に進展】

▼前号に「ケースは秋需期に」の見出しで値上げ問題を取り上げたら、あちらこちらから抗議の電話をいただいた。

▼記事の内容や見出しからすると「シートはほぼ決着したが、ケースはまだ何も上がっていない。ケース値上げは秋需要期のことだ」と言っているように受け取られたようで、ユーザー先から「新聞にはこう出ているじゃないか」と、進行中の交渉の妨げになっているというのが、それらの抗議の趣旨であった。

▼記者の舌足らずをまずお詫びせねばならない。ただこれは常識の範囲内だと思われるが、原紙の値上げは全国で200件、シート値上げは2000-3000件に対して、ケースは何万、何10万件。かりにそれぞれ主な取引先の件数だけを拾い上げても、まるでケタが違うわけで、だからシートぐらいの件数まではともかく、ケースの主要取引先がみんなヨーイドンで片付くはずもない。

▼いいかえると、ちょうど坂道をのぼって行くときのように、日を逐って進行して行くわけであって、それをどう表現するのか非常に難しい。正確に言えば、今はまさに途中経過。ただ、今年の春ごろはまったく無理と思われた段ボール値上げが、情勢の変化も加わって、次第に進行速度を早め、現にシート値上げはほぼ浸透、この猛暑再来を大きな契機に、ケースもいよいよメドが見えはじめた状況がいわれている。

▼それに値上げの進展状況は、当事者以外にはなかなか分からない事柄。実は、今までもケース値上げの難航については何度も書いてきているわけだが、抗議を受けたのはこれが最初。つまり記者が言おうとするのは、謹んでお詫びを申し上げると同時に、難航を伝えられながらも、実態は既にそこまで進行しているということである。