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平成8年、新王子製紙・本州製紙が合併(第1072号/その2)

過去に書いたものを、ずっと後になって読み返すという体験は、普通、なかなか無いものである。いま、王子・本州合併当時の記録をお目に掛けている本紙の場合は、職業的に書きつづったものだから、特に異とするものではないかも知れないが、平成9年4月の消費税増税を前にした平成8年当時には、確かに景気回復への胎動が段ボール動向(消費需要動向)に感じられたことがお分かりいただけるだろう。その回復の芽、チャンスを、橋本内閣がうまく育て損ねた結果が、その後の「失われた20年」につながったなのかも知れない。

(平成8年5月20日)
【米国は仕切り直して値上げ】

▼レンゴーの3月期決算が売上高2,310億円、前期比1.6%増収、経常利益30億円、同79.5%増、当期利益10億円、同37.6%の大幅減と発表された。

▼長い不況が続いているが、特に昨年からは主原材料の段ボール原紙値上げと段ボール価格修正の不調により、段ボール業界は軒並み不採算状態への転落を強いられている。今期のレンゴー決算も正にその通りの状況を反映したもので、「何とかしたい」思いと裏腹に状況は一向に好転せず、まだまだ先の長い道のりを思わせている。

▼日本の場合と対照的なのがアメリカ。92年から3年あまり、ほとんど四半期ごとに原紙値上げがつづいて、95年の春までにおよそ85%も値上がりしたと思ったら、95年年央から崩れだして、Kライナーで400ドルも割り込み、その余りの上がり下がりの激しさに、彼我の業界の体質の差が改めて思われる状況。

▼ただ、原紙が強引に価格をつり上げ、それが段ボール加工に否応なしに波及して、段ボール価格も急上昇した結果、その後の原紙価格の下落で、段ボール価格が高値のまま置き去りにされ、当面は日本の業界とは全く正反対に、かつて無い加工部門の高収益状態が生まれている様子である。

▼米国の原紙メーカーが、生産調整に躍起の状況がこのところつづいて、漸く在庫の増勢は止まった様子だが、まだまだ建設中のいわゆるミニミルがこれからも稼働し始める状況で、また、それらには段ボール加工メーカー系の工場も多いため、波乱含みの情勢には変わりないようだ。

▼そうした中で、メーカーの巻き返しが始まりそう。IP社やストーン社が先頭に立って、まず6月から50ドルアップのアナウンスが行われている。

▼パルプもそうだし、流れが、またひとつ変わってくるのだろうか。

(5月30日)
【洋紙と板紙と段ボール加工】

▼本州製紙では5月28日、平成8年3月期決算案をまとめ発表した。売上高3,759億円、経常利益98億円で、この経常利益は平成5年の79億4,600万円を抜いて史上最高記録ということである。

▼しかし、この収益内容を見ると、稼ぎの主役は専ら洋紙で、前期比の販売価格を見ると、紙がキロ当たり11円18銭の上昇だったのに対して、段ボール原紙を主体とする板紙はわずかキロ当たり1円82銭の上昇にとどまっている。

▼これを売上高でいうと板紙は前期に輸出も多かったせいもあるが、板紙は965億円、1.8%増に対し、洋紙は978億円、15.4%増と格段の違い。販売数量で板紙は137万t、洋紙は72万tと板紙が2倍近いのだから、それでなおかつ洋紙の売上高が板紙の売上高を上回ったという近来にない状況となっている。

▼そのような内容から、営業利益段階で、紙・板紙平均のキロ当たり単価は5円87銭上昇、その寄与率が62億円。更に数量が2万8千t増えて、それにより12億4千万円。また人件費・そのほかリストラ効果などのコストダウンで18億8,400万円。しめて93億2,400万円の寄与に対して、加工の方は加工賃の下落などにより24億円の持ち出しになっている。

▼いかに洋紙の収益が良かったか、また如何に板紙の状況が洋紙に比べ見劣りするかだが、ひと昔前の製紙業界で、洋紙が極端に悪かった頃、「板紙を見習え」などと言われたこともあったことがいかにも不思議に思えるほどである。

▼産業需要に準拠する板紙や段ボール産業は、この産業の海外流出時代、当分厳しいことは覚悟せねばならない。だが世の中、全て回り持ち。とこうするうち、景気も動き始めている。

(6月10日)
【引き続き緩やかな景気拡大】

▼最近の景気動向に関連して、「カレンダー効果」のことがいろいろ取り沙汰されている。土曜・日曜を除く平日の、つまり実働日数の前年同月との違いを取り上げているわけである。

▼というのも、今年3月は1日が金曜日、31日が日曜日で、土日が10日、平日の実働日数が21日しかない。

▼これに対し、昨年3月は土日が8日しかなく、平日の実働日数が23日と多い。もっとも、全部の会社が全部土日休日なら、この2日の差がそのまま工業生産に響いてくるわけだが、事務所は休日でも、工場は動くとか、会社の休日制度が隔週土日休日とか、変則制とかいろいろだから、段ボールに限らず、ユーザー工場の生産も、カレンダー通りには必ずしもならないことも当然である。

▼段ボール生産は、この3月は前年比2.2%減と、かなり大幅なマイナスだった。景気は緩やかに回復だと言っているのに、生産がマイナスとはどういうことだと、段ボールに限らずさまざまな産業分野で疑問の声が出ているが、要はそういうカレンダー上の単純な理由なのだと思われる。

▼4月は、逆に今年が土日を除く平日日数が22日で、前年4月の20日より2日多い。その結果が4月の生産速報3.0%増だから、いずれにしても需要の現状はまだあまりはかばかしい動きにはなっていない。この状況から脱出して、それなりの手応えが出てくるのは今年秋ごろと観測されている。昨年の超円高をはじめとする悪材料がほぼ一巡し、頃合いもほどほどの感じになっている。

▼そして、これは見逃せないことだが、平成4年から下がりっぱなしだった段ボール価格が小幅ながら値上がりし、つれて、この産業全体の出荷総額もこの第1四半期に平成4年第1四半期以来実に17四半期ぶりにプラスに転じた。流れの変化が証明された形である。

(6月20日)
【平成時代に入ってから】

▼最近何が驚いたといって経済企画庁の今年1-3月のGDP成長率12.7%伸長という発表ほど驚かされたものはない。同庁も、決して八百長をしているわけではないし、実際に体験的実感として、そのような景気回復の恩恵を得たいこと、しきりである。

▼経済企画庁の説明は、前期比3.0%の伸びを年率に換算してということである。段ボールの場合は前期(10-12月)が年間最盛需要期で、1-3月は最閑散期。従って、前期比でいうと生産量は15%ほどマイナスだから、はじめから比較することも考えないが、個人消費の復調がこの主因だということだから、まずは今後の推移を見守るほかになさそうだ。

▼段ボール業界の不振を最も象徴しているのが、製函業界の停滞。いろいろ原因があると思われるが、いまの産業構造の変化が、製函業界の従来の得意先の需要業界全般の地盤沈下をもたらしているのも大きな原因の一つと考えられる。古くからのよい得意先。その地盤沈下だろうか。

▼簡単に1-4月の累計数字だけでいうと、不思議なことに、平成元年に初めてシート出荷合計が16億m2台に乗ったあと、今年1-4月までずっと16億m2台の上がったり下がったりで、それ以上に増えもしなければ減りもしないという状態が既に8年間続いている。

▼この間に、段ボール生産全体はじりじり増加して、つまり分母が大きくなったから、平成時代前の、昭和63年の段ボール全体に占めるシート出荷のシェア42.5%から、平成8年には39.9%と、遂に40%の大台を割ってしまった。

▼何度か述べたことがあるが、段ボール業界が本当に元気印の時期は、シート出荷も好調なとき。つまり、製函業界が活況のとき。

▼最近数年、それと逆潮の時代が続いている。

(7月10日)
【循環的な回復局面に来たか】

▼平成8年が早くも半分終わってしまった。今年で5年目の不景気は、相変わらず一進一退の様子。ただ、そうした中にも、少しずつ、少しずつ様子が移り変わっているようである。

▼4月の段ボールシート・ケースの出荷金額が前年同月比4.3%増と、バブル崩壊後ではおそらく初めてと思われるかなりの増加となった。5月、6月とこのあたりの推移がどうだったか、やがて、おいおい判明してくるわけだが、「バブル崩壊後初めて」のプラスの現象が、このごろ一つ、また一つと現れ始めて、さすがの不況も、ようやく循環的な上昇過程に移行し始めたか、との思いを深くするものがある。

▼段ボール産業は、本来なら、これほどの不況感に苦しむことはなかったはずである。もちろん、段ボールの需要業界が特に超円高で大変な事態だったから、それへの協力ということもあったわけだが、それにしても、まるでわが身を削るようなまでの価格破壊を、自らの手で行ったということが、最近数年の業界の苦境の本当の理由のように思われる。

▼需要数量は、他の産業界に比べ恵まれていたにもかかわらず、それがあまり寄与しなかったものが、価格が下げ止まり、数量がもう一段上昇の気配になった4月-5月に来て、かなり急速に効果を示し始めている。4月は、企業の売上高に当たる出荷金額が前年同月比4.3%増。この状態が続いてくると、不況の出口の始まりということになりそうである。

▼ところで、今号では、レンゴーの青島市での合弁事業の発表と、日本ハイパックのタイ・フィリピン工場の建設および海外事業の積極推進に関する中期経営計画の発表とが重なった。まさに時代を感じさせるニュースだろうか。

▼国内の不況だけをあげつらう時代でもないのか。