特大


番外日誌

ホーム > 番外日誌 > 「業界内外紙」への跳躍

「業界内外紙」への跳躍 2008-07-15(第1010号)

段ボール業界は「一兆円産業」と呼ばれる。実はずっと以前、一兆五千億ほどの規模があったが、段ボール価格の下落で、近年、一兆円を割り込む時代がつづいたあと、昨年でほぼ一兆円を回復、今年は一兆一〇〇億、更に10月からの段ボール値上げを見込むと、来年は一兆一千億を超える規模に回復しそうである。

これは、例えば昨年の段ボールケースの平均単価が69円53銭で、シートで出荷された分まで全部含めて、この単価だったとすると、年間生産の139億7千万m2で9,700億円ほどになる計算だからである。

細かい詮索はさておき、「一兆円産業」のイメージはどうかというと、本紙は従来、一兆円の高さの塔のようなものが日本の産業界の中に立っているように感じつづけてきた。例えば、鉄鋼とか自動車、電器産業など何十兆円もの巨大な塔が立ち並ぶ中で、そういう意味ではわずか一兆円だけれども、この一兆円が無いと、あらゆる産業が立ち行かなくなると考えていた。

だが、最近はすっかり見方が変わってきた。というのも、よく考えてみると、「一兆円産業」という言い方は、生産する側からだけの表現法であって、一方に「一兆円需要市場」があって、はじめて成り立っているという現実である。

ということは、一兆円産業の塔の目の前に、一兆円需要市場の塔が「ツインタワー」のように立っているという構造なのだろう。付け加えると、このツインタワーの間には各階ごとに行き来する回廊が設けられていて、色んな交渉ごとが行われる。需要塔に出掛けて行くのは、主として段ボール会社とボックスメーカーの販売担当者だが、そこで材質だとか印刷、箱の形式、納期や値段などが頻繁に打ち合わせられて、ビジネスが進行して行く。

ただ、この生産・需要の間の会話は、いわば「ハード情報」で、互いに秘密厳守のルールだから、他には滅多に漏れない。つまり、ビジネスを進める上では不可欠の要素ではあるけれども、唯一のマイナス点として、周辺を「情報砂漠化」する原因ともなってきた。

ハード情報の対極には、ソフト情報がある。新聞・雑誌・テレビなど、誰もが共有できるメディア情報である。ただ、需要塔にソフト情報を提供できるのは、何百万部も配布できる新聞社に限られ、その五大全国紙の中でも、製紙や段ボールの情報となると一紙。つまり担当記者の配置や、経済記事の掲載スペースが大きいかどうかで事情が違うことになる。

全国紙のパワーはとにかく凄い。いま取材した記事が明朝全国の各家庭に届けられる。それと、通過儀礼というか、毎期の決算関連に始まって、企業間の合併統合、代表者の交代、そのほか全ての社会的・世間的メリハリや時代色を決定づけて行く役割は、明治の昔から今日でも何も変わりはない。

ただ、それだけに厖大なコストがかかるシステムだから、経済でいえば、大産業・大企業優先の順位が生じるのも否めないことだし、段ボール産業のような中小企業業種には、大新聞社のソフト情報力の恩恵が及びにくいのも、その一方での現実だろう。

ところが、ネットのお陰で、大新聞社の情報力の相当部分が、業界専門紙にも代替可能になってきた。業界紙は、正確には「業界内紙」だが、専門ソフト情報のネット提供によって「業界外紙」に変身できる時代になっている。製紙や段ボールの場合だと、全国紙は月に100行〜200行を割けるかどうかの程度。専門紙は1ページ分だけで500行あまり、ネットのスペースは無限大だから、月間送出データ量は約11ギガバイト(3,700ページ分)。データ量の差は格別に大きい。

そして、専門紙のソフト情報が、ネットで流し込めるように変わったら、ハード情報と違うから業界内外、誰にも共有の情報として全体に浸透する。これが、「段ボール事報db-jiho.jp」へのアクセス数の急伸長の真の背景なのだろう。

大新聞社に頼らずに、自前で調達できる専門のソフトメディアを、ハード実務にどう活かせるか。それが、ツインタワーに住む人々の、これからの課題と思われる。