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王子チヨダコンテナー(株)石田隆社長に聞く 2008-03-15(第1002号)

段ボール原紙は再値上げ必至

本紙では、3月12日、王子チヨダコンテナー(株)本社で石田隆社長にインタビュー、昨年の段ボール加工賃修正を中心とした値上げに関連して、同社としての達成状況などの総括した判断と、さらに段ボール原紙の最近動向を含めた今後の見通し等について聞いた。10数年ぶりの値上げの浸透により、加工業界はようやく収益の回復を果たし、一息ついた状況だが、実はその裏側で、段ボール原紙部門が原料・燃料・薬品等の高騰による猛烈なコストアップに見舞われており、「再値上げ」も避けられない状況となりつつある。

〈問い〉昨年の段ボール値上げについては、統計面でも徐々に全体像が浮かんできているわけですが、統計だけではよく分からないナマの部分が大きいかと思います。そういう意味で、昨年の値上げは一体どういう結果だったのか、その総括してのお話を、まずうかがいたいのですが。

〈石田〉仕上がった形が十分に満足の行く加工賃復元になっているかというと、少なくとも当社については、そこまでは行っていないというのが実態です。まあ、ゼイタクを言えばキリがないじゃないか、良くやったじゃないかという思いも一方ではありますが、目標に対する達成率という面からは、もう一歩だったという思いが強いですね。

他社さんのことはよく分かりませんけれども、当社の実態から類推すると、おしなべて大手さんは当社と同じような思いなんじゃないでしょうか。それに比べると、中堅・中小の貼合メーカーさんは、多分、総体的にはかなり満足度が高いんじゃないかという感じがします。ヒガミかも知れませんが(笑い)。単価的にもそうですし、量的にも、恐らく特にシート販売が悪くないんじゃないかな、と思っています。というのは当社グループのシート販売が、非常に落ちているんです。

勿論、昨年の全国統計でも、シート販売量は対前年97.5でしたか、落ちていますから、全部が全部シェア移動ということではないと思いますけれども、当社はその97.5よりもかなり落ちていますから、まあ中堅・中小さんの方に少しずつ行っているんだろうな、という状況です。ですから、数量的にも中堅・中小の貼合メーカーさんの方が、われわれよりも若干良いでしょうし、ユーザー構成から見ても良いでしょうし、まあ、大手に比べると、今回のメリットはかなりフルに享受されているんじゃないかという感じがします。結構なことだと思いますね。

金銭的に言うと、そういうことなんですが、これはこれでもう終わっちゃったんで、いまさら、ああすれば良かったとか言ってみても始まらない、まあ答が出たわけですから、ここからあとは内部努力でどう頑張るかということになるわけですけれども、実は今回の加工賃改定で、私が本当に良かったなと考えていることが、金銭面を別にして二つあります。

一つは、段ボールメーカー各社の経営スタンスといいますか、経営マインドといいますか、それが概ね同じ方向を向いているということが、この9ヶ月にも及んだ長丁場の値上げ活動の中で実証されたことです。私自身、これまで段ボール業界については、ネガティブな側面を色々聞かされてきました。大手と中小とのミゾとか、一貫と専業との溝とか、必ず下をくぐるやつがいるから気をつけろ(笑い)とか、まるでチミモウリョウの世界(笑い)みたいな話でしたけれども、実際やってみると、そんなことは全然ありませんでしたね。

勿論、自由競争に疑心暗鬼は付きものです。この業界から疑心暗鬼が無くなったとは思っていませんし、ある程度の疑心暗鬼は、ある方がむしろ健全な姿でしょう。しかし、結果として、皆さんがそれを乗り越えたから、今回の加工賃復元が実現したわけで、これは大きい自信になったのではないでしょうか。「なんだ、みんな同じ事を考えてたんじゃないか」(笑い)ということでしょう。

もう一つは、皆さん儲かるようになったことです。特に、先ほども申しました通り、中堅・中小の専業メーカーの方たちが、かなり収益力を回復したということで、世間的にも遜色無い利益率になった会社も多いと思います。これは実は、M&Aだとか、経営統合とか、こういうものをもの凄くやり易くするんですね。

段ボール業界は、オーナー系の会社が多いわけですから、創業者がいまでもやっておられるところもあれば、二代目、三代目に代替わりしておられるところもありますが、基本的には、そういう会社というのは、会社がその人の人生そのものですから、やはり当然なんですけれども、思い入れもあるし、自分が育ててきた会社というのは、当然、値打ちはかなりあるとお考えなんですが、ところが従来のような収益の状態では、いわゆる企業価値計算という計算の仕方があるんですね。まあ、経済合理性に基づく会社の価値計算のやり方ですが、これでやると、値段が付かないわけです。ですから、オーナーの人が思っている、或いは思いたがっている主観的な価値と計算で出てくる客観的な価値が全然違うわけです。

そうすると、売るに売れない、買う方も、そんな高いことを言われても買いようがないというような、そういう状態だったということなんです。これが、いまの状態でその企業価値計算をすると、収益力がついたから、かなり値打ちが上がってくるわけです。そうすると、先ほどの主観的価値と客観的価値がかなり近づいてくる。つまりM&Aがやりやすくなるということです。

私は、大手が中堅・中小を買うだけが、この業界の将来の姿ではないだろうと思っておりますけれども、例えば中堅・中小の人たちが、これはなかなか難しいのですが、個人のポケットと、会社のポケットをはっきり分けて、会社の方はそれじゃあ共同でやろうというようなことを考えても、分けたときに、会社の方に経済的な価値の計算が出来ないと、経営統合とか、そういう話にならないわけです。これも今回、企業の値段がちゃんと付くようになりましたから、出来ることになりました。商権にも価値がある、会社にも価値があるということです。

これからの段ボール業界は、とにかく数も多いし、能力も過剰だし、需要は頭打ちだし、経営統合とかM&Aが、放っておいても起きてくるという客観情勢が完全に出来上がっているわけですから、今回、収益性が付いたということで、本当に動き出せる状態になったんじゃないかと考えているわけです。

以上二つ、すなわち各社の経営スタンスが同じ方向だという信頼感と、疑心暗鬼のバランスが良くなったことと、企業価値計算がちゃんと出来るような収益力になったという、この二つが、これからの段ボール産業の将来に、すごく大きい要素で、本当に良かったなと思っております。

〈問い〉段ボールの価格修正が本当に久しぶりに出来たという背景には、ちょうど世間的に物価が動き始めたというタイミングの問題も大きかったかと思います。物価は年明け後も上昇が相次ぐ状況ですが、ということは、段ボールの実施時期が少し後ろにズレた方がラクだったんじゃないかと思えるフシもあるようですが。

〈石田〉さあ、どうでしょう。春に打ち出した値上げというのは、うまく行った試しがないとか、そういう話も聞きます。本当かどうか、私は経験が無いから分かりませんが、一理あるとは思っています。というのは、例えば、われわれ王子グループ全体の資材調達の仕組みを見ても、値上げを受け入れる節目というのはやはり期の変わり目なんです。4月と10月ですね。

まず予算で枠を取って、その範囲内でサプライヤーと交渉して値上げに応じるという、これが基本パターンですから、段ボールの場合も、特にユーザーさんが大手であればあるほど、このパターンに合わせる方がスムーズに行くのではないかと思います。さらに段ボールの場合、大口需要業界である飲料業界が12月決算が多いということも加味すると、やはり夏に打ち出して秋から冬にかけて実現していくという、今回のパターンが、一番成果が出やすい形なのかもしれません。

さらに、今回の場合は、加工賃を上げるという、しばらくやったことのないことをやったわけですから、ユーザーさんとの交渉で、とにかく粘りに粘ってですね、こいつら、何か返事をしないと諦めないな(笑い)と思っていただくまで粘らないと、なかなかうまく行かないんですよね。そういう意味では、あれぐらいの時間は必要だったと思うし、まあ、タイミングは悪くなかったと思いますね。

ただ、ここに来て、原紙の方が大変なんです。原紙のコストアップが、です。ですから、原紙のコストアップを転嫁するということで、もう一回、やらざるを得ないでしょうね。私は立場上、王子製紙のボードメンバーでもありますし、王子板紙の予算会議などにも出ますし、原紙のほうの状況も一通り分かっているんですが、原紙価格は上げざるを得ないでしょうね。とにかくすごいコストアップですから。

〈問い〉そうすると、時期的には、どういうことになるとお考えですか。

〈石田〉これが難しいんです。原紙の方の立場に立てば、もうすぐにでも上げたいし、上げなければやって行けないというぐらい厳しい状況なんです。仮に、原紙と加工はお互いに関係無い、違う業界だということなら、明日、原紙値上げの発表があってもおかしくない程の状況です。

しかし、そういうことではないし、あってはならないと思っています。確かに原紙の市場価格というものを間に挟んで、原紙業界と加工業界に一応分かれているけれども、結局は両方の業界を併せて一つの段ボール産業ということだし、その大きい意味での段ボール産業にとって、本当の価格転嫁というのは、原紙価格が上がることではなくて、段ボールケースの価格が上がることです。ケース値上げにつながらない原紙値上げでは、同じ産業内での利益移転に終わってしまいますから、余り面白くないですね。

我々は一貫メーカーですから、このことを肌身に感じているわけで、ケース値上げに一番つながりやすい原紙値上げのタイミングは何時か、という議論も内部で始めていますが、一貫であろうとなかろうと、本質的には同じことだと思います。

いま、われわれ加工側がしっかり認識しなければならないのは、実際に原紙のコストアップが凄まじいこと、その結果、大きい意味での段ボール産業の収益性が、加工賃復元にもかかわらず、どんどん悪化していること、そして、その悪化を、もう何ヶ月にもわたって原紙メーカーがじっと我慢してかぶっていること、つまり、我々加工側の利益は原紙側の犠牲の上に計上できているのにすぎない、ということなんです。

この歪んだ状況を、どうすれば最も早くスムーズに解消できるか、本当に難しい局面だと思います。同一資本の王子板紙、王子チヨダコンテナー、森紙業で議論しても難しい話を、産業全体として、自由競争の中で乗り越えなければならないわけですから、本当に大変ですが、ここを乗り越えられれば、大きい意味での段ボール産業は、本当にいい産業になると思います。本当に頑張りどころだと思います。もちろん、私もベストを尽くす決意です。