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王子板紙(株)安藤温社長に聞く 2008-06-30(第1009号)

日本大昭和板紙が6月17日、9月21日出荷分から段ボール原紙をキロ当たり10円以上値上げすると発表したのを皮切りに、6月18日には王子板紙、6月23日には大王製紙がそれぞれ10月1日出荷分から段ボール原紙をキロ10円以上値上げすると発表、更に7月1日、レンゴーが段ボール原紙及び段ボール製品の値上げについて別項の通り発表、4大メーカーグループの原紙値上げ発表が出揃った。こうした情勢の中で、本紙は6月25日、王子板紙(株)安藤温社長にインタビュー、今回の値上げ発表に至る経緯などについて聞いた。

<問い>一年ぶりに、また同じような環境でお話をうかがうことになりましたが、昨年の場合は「9月1日出荷分から値上げ」という打ち出し方でした。それが、今回は「10月1日出荷分から」ということで、実施時期に1カ月の違いが起こっております。ということは昨年の経験に基づく学習効果(笑い)とか、そういうこともあるのでしょうか。

<安藤>当社の段ボール部門の方はまだ値上げを発表しておりませんが、昨年から今年に掛けて、原紙値上げを受けた製品値上げという大きな価格改定の経過があって、段ボール製品の方も、ある程度は採算の改善が出来ましたし、また、その過程で大きなエネルギーを必要として、みな相当疲れ果てているということもありますから、当分はこのままでいたいという状況がありました。

当社は一貫メーカーですから、そういう事情は、よく承知しておりました。ですから、段ボール業界が再び製品値上げに大きなエネルギーを費やさなければならないということは、われわれとしても、出来れば避けたいという気持ちが強かったのですが、段ボール原紙のコストは、去年値上げしたあとも、原料の古紙を中心に上がり続けて、また年明けからは、エネルギーコストの方も急上昇して、収益がどんどん悪化する状態が続いてきたものですから、どこまで耐えられるかという状態のまま、ずっと耐えてきたのです。

それがもう限界だなという感じが3月〜4月ごろからありました。これ以上、原料が上がるなら、もう製紙として辛抱できない。従って、原紙の値上げも打ち出さなければならないというところまで行っていたんです。それが、たまたま、古紙の輸出価格がそのあと2カ月連続で下がって、そのことによって、国内の古紙価格の上昇も止まったということがありました。4月〜5月ぐらいから少し下げられたということがあったのですが、ただ、その時点でも、非常に採算が厳しい状況は同じでしたから、値上げをしなければならない状況には何も変わりはなかったのです。

そこで、これから先、値上げしなければならないにしても、ここまで我慢してきた以上、出来れば製品と一緒に値上げができるような、そういうタイミングにしたいという希望が社内に出てきました。去年の場合は、ご承知の通り、段ボール加工賃の改定を目指す動きからはじまって、そのあと原紙の値上げも加わって、ただし、実質的な客先への値上げ実施時期としては10月からという結果になりました。

一年経ったいま現在は、それ以降に更に大きなコストアップ要因が生じて、そのために原紙が上がり、それを受けて、段ボール箱も上げなければならない状況ということで、最近の世界的な原燃料コスト上昇に共通するパターンとして、需要家さんからも最低限の理解は受けられるんじゃないかという合意が、まず王子グループの中で、原紙部門と加工部門との間で出来たということです。それで、段ボール原紙が10月1日から、同時にシートおよびケースも10月1日から値上げを実施させていただくという運びになったわけです。ですから、今回は、やはりタイムラグのない「同時値上げ」ということでやって行く考えです。

<問い>問題が段ボール原紙のコスト事情という一点にしぼられているわけですから、そのコスト事情の細かい点まで分かりやすく、段ボールのユーザーの方々にご承知いただく必要があるかと思いますが。

<安藤>先日、新聞社の取材があって、その際、キロ当り12円と説明しました。
これは、去年の値上げを決断した時期と比べてキロ12円上がっているということですが、大ざっぱに言いますと、古紙で6円上がっています。
それにエネルギーですが、当社の場合は、重油と石炭が大体同じぐらい。あと都市ガスと一部バイオマスのボイラーを使っているということですが、それらを加重平均すると4円50銭ぐらいです。

重油の価格は、厳密には、仮決めしておいて最終的に3カ月ごとの価格があとから決まってくるのですが、その仮決めしていたものが、最終的にもこの単価におさまるだろうという想定でのコストです。それ以外の要素としては薬品とか、まだ値上げを認めていない輸送費です。船もありますし、多くはトラックですが、この料金をずっと据え置いてきたのですが、これだけガソリンや軽油が上がりますと、輸送費の価格改定の要求も非常に強いものがあります。国土交通省の指導もありますし、これは、近く改定しなければならないのは必至という状況です。そういうことも加味して輸送費が1円50銭ぐらいということで、以上の6円と4円50銭と1円50銭を合計して12円というコスト上昇の金額になるわけです。

<問い>それだけのコストをかぶり続けるには限界が来たということですね。

<安藤>そうです。

<問い>そのコストアップはいつ頃から始まって、どんな経過なのでしょうか。

<安藤>古紙価格の当社の実際に買っている価格から傾向値で言いますと、昨年5月の実績買値に比べて、今年5月までに6円30銭上がっているんです。この最新の経過ですが、今年2月までに6円、そして5月には6円30銭です。この5月がピークかというと、実は4月がピークで6円60銭上がっています。ですから、4月から5月にちょっと価格が動いているんですが、当社の場合で、4月〜5月で30銭下がっているという意味です。首都圏では4月から下がっているという市況もあるんですが、当社は名古屋や大阪、九州など全国から買っていますから、総平均だと、先ほどのような結果だったということです。

以上は段古紙の価格ですが、雑誌古紙も大体、それに準じるような価格になっています。段古紙の関東の店頭価格は、高いところで21円とか、安いときの何倍かになってしまいました。

<問い>こんどの段ボール値上げは、原紙とタイムラグを置かないということですが、同時に実施して行かないと、こんどは段ボール側が被ることになります。そこで、原紙の方からの援護体制と言いますか、段ボールケースまで値上げを浸透させるためには、需要分野ごとの契約の時期の問題などもあるかと思います。飲料水の問題とか。

<安藤>指定紙のことでしょう(笑い)。

<問い>その問題をどうクリアされるのか、その点については如何でしょうか。

<安藤>指定紙の価格の絶対値と一般の価格との絶対値で、指定紙の方が安いということになりますと、やはり段ボールメーカーさんからみると、指定紙に甘いじゃないかというご批判を当然されますし、時期の問題も、特に最近、一貫化が進んだことが非常に影響していると思うんですが、製紙メーカーの数がかなり減って、そうした中で大手が実施時期の絶対性ということについて、かなり強い意志でのぞむものですから、発表時期とのズレが無いというか、柔軟性が非常に乏しい状況になりました。

ですから、それと比べて指定紙が遅いということでのご批判なんですが、ひとつは、段ボールメーカーさの場合は、紙の専門家といいますか、段ボール原紙の市況についてよくご存じになっておられるわけだし、それを改定するということになれば、ご自分のいままでの経験、それから持っている情報収集網などから、本当にその時期に値上げが通るか通らないかということは、そういうことで判断できるわけです。
ところが、エンドユーザーの資材の方たちは、段ボール原紙だけを扱っているわけではありませんから、判断材料としては、より客観性のあるものをベースに置かなければ安心できないという事情がわけです。ですから、皆さん、新聞などに判断基準を求めるということで、ということだと、どうしても業界一般の場合に比べて、判断上の遅れやズレが生じ勝ちだということなのです。

そういうことから、浸透したという事実を、出来るだけ同時性を持ってアピールして、指定紙も同時に値上げを認めていただくように努力しているのですが、努力しても、なお多少、時期的にズレが生じるという点については、ご理解いただきたい状況もあります。

それから、私どもは一番近いところで王子チヨダ・森紙業があるわけですが、こういう王子グループの段ボールメーカーに値上げをするときに、実施の時期とか幅で差を付けますと、ほかのお客さんにそういうことが分かったら、非常な非難を浴びて、一般の商売ができなくなります。ですから、常に公平性をもってお願いをして、価格を決めるということをやっているんですが、同じ意味で、指定紙についても、繰り返すようですが、昨年の場合も、差を付けない契約で改訂をお願いしました。

それは、一回一回の交渉の積み重ねですから、何回も重なると、後から修復の仕様もなくなるぐらい大変な差を生じるということですから、そのことは、肝に銘じて実行しております。