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王子チヨダコンテナー(株)石田隆社長に聞く 2008-07-15(第1010号)

王子チヨダコンテナー(株)では、7月2日、段ボールシート及びケース価格を10月1日出荷分からおよそ15%アップの価格修正を実施すると発表した。これは、段ボール原紙メーカー各社が発表した段ボール原紙全品種の「10月1日出荷分からキロ10円以上」の値上げ、及び最近のシート・ケース加工コストの上昇分を価格転嫁するもので、シートの15%アップは実額ではおよそ8円程度としている。これにともない、本紙では7月16日、同社石田隆社長にインタビュー、今回の価格修正の詳細について聞いた。

<問い>先日、レンゴーさんが段ボール製品についてはシートで平米当たり8円以上アップ、ケースで13%以上のアップを10月1日納入分から実施すると発表されました。王子チヨダコンテナーの場合は、その点、どういう設定でしょうか。

<石田>当社では10月1日からシート・ケースともおおむね15%の値上げを実施します。シートの場合は、比較的、計算が簡単と言いますか、原紙代プラス、シート加工サイドでのコストアップで、これには今後の運賃値上げ、そのサーチャージ法制化の動きもありますが、それも含めて平米当たり1円50銭〜2円ぐらいありますので、原紙代とそれを合わせると、当社の計算でも大体、平米8円ぐらいになるんです。

ですから、パーセントで言うと15%、単価で言うと8円ぐらいというのがシートの場合です。まあ、シートは、各社さんがどこをどう計算しても、コストアップの完全転嫁という前提でやれば、たぶんそれぐらいの数値になると思います。

ただ、ケースの方は、千差万別ですから、なかなか平米幾らということが言いにくいといいますか、不可能に近いことなんです。言えば、その数字が独り歩きして、お客さんによってはその数字が多すぎたり、足りなかったりしますから、われわれが個々に計算してその原紙代のアップと加工コストアップで総平均しますと、大体ケースも15%ということになりますので、シート8円、ケース15%というのもヘンですから、当社では、全部ひっくるめて「シート、ケースともほぼ15%アップ」という表現でお願いを始めております。

<問い>ケースの場合も、運賃のアップ分はその15%の中に含まれるということですね。

<石田>もちろん、そういうことです。

<問い>段ボール製品値上げの場合、一番問題なのは、交渉開始から終結まで時間がかかることだと言われています。俗に「100日かかる」と言われる長期交渉ですが、今回はそんな悠長なことではなく、発表の10月1日から即実施という方向のようですね。これは、もし実現すれば、第一次石油危機(昭和48年)と第二次石油危機(昭和54年)の二度のオイルショック時以来の出来事になると思いますが。

<石田>そうでしょうね。タイムラグの問題は、厳密に言うと、原紙在庫との関係もあることですが、段ボール工場の在庫は、いまは3日分とか、多くてもせいぜい5日分とか、そんなものでしょう。ですから、原紙値上げに、即段ボール製品値上げを実行しないと、間違いなく加工の方がその分をかぶることになります。

原紙サイドは本当に余裕がないと言いますか、10円アップで大丈夫なのかというぐらいに、コストアップがすごいですから、原紙は少なくとも「10月1日・キロ10円」という線は、どう揺さぶろうが、何をしようが、後でどうかしようが、何も起きないでしょう。もうビタ一文、負からんということだと思います。
そういう中で、段ボールの方は価格転嫁をして行かなければならないわけで、しかも上げ幅が10円ですから、100日掛かるなんて言っていたら(笑い)、その間に会社そのものが潰れてしまいます。

今回は本当に短期決戦です。王子チヨダの目標を申しますと、お客さんとの価格交渉は10月1日には完了ということです。そういう目標でいるんですが、これが文字通り出来るかどうかは分かりませんけれども、少なくとも2カ月も3カ月もズレるというようなことは、現実問題として出来ませんね。ですから、本当に短期決戦で、早期決着ということです。

<問い>そのための方策として、なにか妙案でもあるのでしょうか。

<石田>これは、ひたすらお願いする以外にないことで、もう既に動き出しているんです。もちろん、実際の価格というのは、品目ごとに全部違いますから、その品目ごとに新しい見積書を作って、きっちり価格を決めて行くという作業をやらなければいけないので、これはどうしても、お盆前後ぐらいからになると思うんですが、ただ、特にお客さんの中でも予算で動いているようなところですね。まあ、割合大きいところになりますが、これは広域ユーザー、地場ユーザーさんを問わず、かなり多いですから、そういうところに対しては、「とにかく下期の予算に、段ボールは15%アップということで折り込んで下さい」ということを、いま、全国の各工場と、それから本社の営業部隊がお願いに回っているという状況です。

<問い>差し当たっての感触としては、どんな具合に感じておられますか。

<石田>まだ、スタートしたばかりで、具体的にまとめてということは難しいんですけれど、それに、良い話だけしか聞こえてきていないのかも知れませんが、一般論としては、コストアップが大変で、これは価格転嫁をしないと段ボール業界がやって行けないということ自体は理解する、というようなユーザーさんからのコメントは、幾つか、私も聞いています。

ですから、いま、大袈裟に言えば世界中の色んなものの価格体系が大きく動いているわけですから、とても自助努力だけで吸収できるものではないということは、一般論としては理解していただいていると考えております。そういう意味では、入口としては、去年の加工賃改定よりもご理解は得られ易いと思っております。

加工賃改定というのは、言ってみれば、われわれの利益を増やして下さいとお願いしたわけです。これは、値上げの理由としては、どっちかと言えば異例ですよね(笑い)。もっと儲かりたいから値上げしますという話ですから、入口としては、なかなか大変だったですし、それが、今回の場合は、誰の目にも明らかなコストアップの転嫁ですから、まあ、それが本当にキロ10円なのかとか、加工コストで本当に平米2円も上がるのかとか、全体はそうでも、ウチの場合はどうかとか、そういうことは個別にあるにしても、一般論として、大変なコストアップで、その転嫁を頼みに来ているんだなということは、受け入れていただき易いと考えております。

まあ、取りあえずは、そういう段階だと思います。

<問い>漁船が20万隻も一斉休漁するという大変な時代ですが、いまになってみると、段ボールは、こういう大変な時代の先頭走者だったような気もしますが。

<石田>そうですね。

<問い>そういう意味では、業界としてもPR不足じゃなかったかと、最近、そう思うようになりました。ところで、前回の加工賃値上げをお願いしたけれど、足りなかったというような不満の声も聞くのですが。

<石田>その辺になると、各社さん、ばらばらだと思うんです。勿論、価格は高いほど良いし、利益は大きいほど良いわけですけれども、これは競争社会の中でやっているわけですから、去年の加工賃改定幅が満足か、不満かと言われれば、それは常に不満ですよ。給料は高いほど良い(笑い)とか、そういう意味ではそうなんだけれども、この競争社会の中で、一番コスト競争力のある段ボール会社さんだと、利益率で5%とか、あるいは5%を超えるようなところもあるかも知れません。

王子チヨダは残念ながらそこまで行っていないんですけれど、大体、物の値段というのは、みんなが生きて行けるような値段になるということは滅多にないわけで、やはり競争力の強いところは平均よりも利益が出るけれども、競争力のない、あるいは営業力のないところはやって行けなくなるぐらいのところで、市場価格というのは決まります。

そういう面から言いますと、多いに越したことはないんですが、去年、あれだけ努力をした結果というのは、それなりに、経済合理性という意味での必然性があるんだろうということです。ですから、上げ足りなかったから、今回の原燃料コストアップに乗じて、利益分の積み増しまでやるというのは、それはちょっと違うんじゃないかなという気がしますね。

できれば、それに越したことはないですが、そういう風には、この競争社会の価格というのは動いて行かないと思います。やはり、自助努力と言うんですか、コスト競争力の強化というのは、自分でやって行かないといかんでしょうね。

<問い>以前は、業界の先頭に立って、強力なリーダーシップを発揮してくれるリーダーがいないことがいつも嘆かれました。だから、全体のまとまりようがないんだということでしたが、御社はいま、レンゴーさんと並んで強力なリーディング・カンパニーの立場に立っておられます。なにか、その辺のメッセージはありませんでしょうか。

<石田>まあ、冷たいように聞こえるかも知れませんが、業界の足並みが完全に揃うというのは、普通は無いと思っているんです。そういう状況というのは異常ですね。協調か、競争かとかというような言い方もありますけれども、協調しようが何をしようが、基本はやはり競争ですから、自由競争であって、しかも段ボールの会社は全国に貼合メーカーだけで二百数十社あって、それ以外にボックスメーカーさんが沢山いるわけですから、全部の足並みが揃わないと、うまく行かないと言っていること自体が問題だと思うんです。

やはり、競争社会というのは、一定の価格レベルでやって行けるところと、やって行けないところが常にあって、やって行けないところが淘汰されて行くということを通じて、全体の生産性が上がって行くというのが基本ですから、私が過去の話として聞いた耳学問でしかないんですが、何かこう足並みを揃えよう、揃えようとして、業界がもの凄い努力をする。それで、どこか一社でも二社でも、足並みが揃わないところが出てくると、それを理由にして、「だからうまく行かなかったんだ」というようなことで、なにか傷口を舐め合って終わってしまう事例も多かったようです。

私は、何が問題かと言ったら、そっちが問題だと思います。足並みが揃わないことの方が普通であって、揃わない理由を見付けて、だからオレたちはこんなに苦労しているんだと言っていたら仕様がないわけで、やはり、各社がそれぞれ自分たちの収益レベルとか、操業度とか、そういうものを見ながら、どういう形でコストアップを価格転嫁して、自助努力でどれだけ頑張ってという、その組み合わせを各社がそれぞれお考えになって、主体的に行動するということに尽きると思うんです。

王子チヨダ・森紙業まで含めた王子グループとしては、今回のコストアップは大変申し訳ないけれども100%転嫁をお願いしたいということで進めて行きます。その理由は、去年、加工賃を上げていただいて、最低限の再生産可能と思われるような利益率にはなったので、労働条件とか、労働環境のレベルを少し上げて、老朽化した設備の更新もして、ちゃんと安定供給が続けられるような、そういう最低限の利益は何とか確保させていただくところまで来ました。

そこから先、われわれが自助努力をしなければいけないのですが、ここでコストアップ100%の転嫁が出来なければ、せっかく去年上げていただいた加工賃を半分以上食いつぶしてしまうというようなことになってしまうのです。そうすると、モトの木阿弥なんです。ですから、去年の加工賃改定を生かすという意味でも、今回については100%の転嫁をお願いしたいという趣旨なのです。

私ども王子グループはそういう方針で行くということですが、ほかの会社さんで、例えば、ウチはそこまではいいよ、まあ原紙代は転嫁してもらわないと困るけど、加工コストの上がった方は、半分も転嫁できればそれでいいというような力のある段ボール会社さんが仮にあったとして、そこはそれで行くとします。

それで足並みは若干乱れることになります。値上げしないといった、大きい乱れではないですけれども、価格交渉の最終段階で、これで手を打とうというところと、もうちょっと頑張ろうというところが出てくることになります。それで、競争力の強いところに収斂して行くということですから、それはそれで仕方がないんじゃないでしょうか。そうなったとすれば、ですが。

多分、今回はそうはならんと思うんです。昨年の値上げで、結構な利益率を取られた中堅・中小さんもあると思いますけれども、今後のことを考えたら、やはりせっかくの加工賃改定を生かすためには、各社ともコストアップを100%転嫁したいという風にお思いになるだろうと思っておりますけれども、だから結果的には足並みが揃うだろうと思っていますけれども、それを、足並みを揃えないと自分たちの値上げが出来ないというような、そういう考えは、ボクはおかしいと思いますね。

<問い>最後になりますが、ユーザーの方々へのメッセージを、もうひとこと、お願いしたいのですが。

<石田>先ほども申しました通り、ただただお願いする以外にないと思っております。収益が無いのに事業を続けるということはあり得ないので、その最低限のところは、ご理解いただけると思うのですが、それにしても、ひたすらお願いする以外にありません。

現在のような物価の大変動に対して、段ボール単独の力だけではいかんともがたい事情をお酌みとりいただきたいということを、ひたすらお願いする以外にないと思っております。