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原紙値上げ、王子板紙(株)安藤温専務に聞く 2007-07-25(第986号)

安藤温専務安藤温専務

本紙では7月24日、王子板紙(株)本社で安藤温専務(営業本部長)にインタビュー、このほど同社が発表した段ボール原紙の値上げ問題を中心に聞いた。段ボール業界は、原料高・製品安による典型的な"総貧乏"状態。段ボール原紙を中心とした統合・再編成の結果としてレンゴー、王子の2大グループが並び立つ一方、最重要課題の段ボール価格の採算性回復が遅れ、全ての段ボール事業が毎期何10%かの収益減が続く状況。そうした中で、新たな加工賃修正への動きを追うように、古紙高による原紙値上げが急浮上してきた。

<問>こんどの場合は、7月5日にレンゴーが段ボール製品価格の値上げ、しかも加工賃主体の値上げを即時実施するという形で口火が切られました。原紙については末尾に「いずれ原紙の値上がりも必至の情勢」という表現でしたが、三連休明けの7月17日には日本大昭和板紙が9月1日からライナー・中芯ともキロあたり7円以上の値上げを実施すると発表、更に王子板紙が数日後に同様、9月1日からの値上げを発表されました。最初の「加工賃主体」の形を聞いたとき、これは業界で全く初めての出来事ですから"原紙ヌキで大丈夫か"という印象と同時に、根幹の課題にマトを絞り込んだ勇気ある決断だと思ったのですが、1カ月後に段ボール原紙も値上げということになると、これまでの例から勘案すると、加工賃という建て前はともかく、後から出て来た原紙の方が結局は先行して、次がシート、そして、ケースは一番最後というような、またまた不完全燃焼になりはしないのかと懸念されます。

その上に、王子板紙の場合は年間収益170億もの完全な黒字体質で、他の原紙メーカーとは、収益状況に大きな差があるわけですが、それが、ここに来てどういう状況変化が生じているのか、そのあたりの事情も含めて、お訊ねしたいと考えて参りました。

<安藤>まず、当社が値上げしなければならなくなった事情から説明します。コストアップは、体力のあるところも、ないところにも同様に生じているわけですが、これは主原料の古紙が、今年になってから急騰して、表面的に出ている価格だけでも既に4円50銭上がりました。加えて、特に中国での引きが強いことと、これからまだマシンの新増設に伴って古紙の出荷が更に活発になるという見通しの中で、いわば先高感のプレミアムの分が増加していることがあるものですから、その分のコストアップは、確実に当社を圧迫しています。

去年の3月と今年7月以降を比べますと、段古紙価格は大体6円50銭ぐらい上がっています。雑誌古紙もそれに近い上昇です。王子板紙の年間生産量は段ボール原紙で260万t弱、紙管原紙、石膏原紙などの特殊原紙で13万t、白板紙34万tを合わせますと、ざっと300万tになります。歩留まりがありますから、これを作る古紙も段古紙と一部雑誌で、約300万tが使われます。この300万tの古紙がキロ6円50銭上がれば、それだけで年間200億近いコストアップになります。

これに加えて、燃料も、一旦下がった重油が再び上昇して、高止まりしています。当社は、あまり重油に頼らないように、早くからガスや石炭、バイオマス等、色んな熱源を求めてやっていますが、時間の経過でそれら色んなエネルギーも価格上昇でコストアップに揃って来るんです。

それで、燃料で0.50円〜0.70円、あと、石油関連ということで製紙用の薬品関係で0.20円〜0.30円、この三つを足しただけで、7円を越してしまいます。一方で当然、生産の効率化とか、人員削減による人件費の削減とか、色んなコストダウンの取り組みによって、今年も、最低30億はコストダウンにより成果を出そうとしているのですが、古紙の値上がり分がこれだけ大きいと、その分だけは吸収が全く不可能ということになります。

古紙で200億、燃料その他で30億上がれば、コストダウンで30億吸収しても、200億の収益悪化となります。200億も収益が悪化したら、当社は30億以上の経常赤字ということになりますから、このような事態は何としてでも避けなければなりません。

2001年の王子板紙発足以降、大変な苦労をしてきました。さかのぼれば、王子板紙の前身の会社は15社ぐらいあるのですが、それが最後は一社になって生き残り、2002年から何とか期ごとに収益を出せる会社になってきましたのでそれだけは絶対崩したくないという思いがあります。

王子板紙は最後に四社が一つになったわけですが、その一つひとつの会社の生い立ちとか、従業員の立場をかまう余裕などありませんでしたから、新しい会社をどういう会社にしていったらいいか、工場・マシンの組み合わせ、品質設計、販売の仕組、そういうことを全部、一番あるべき姿は何かということを求めて、それを時間をかけずに実行したことと、そういうことによって生産体質の再構築とか、販売体制の確立が早期に実現し、早く軌道に乗れたし、コスト競争力も出来たと思っています。ですから、一度出来た収益体質を常に維持しながら発展して行く。もちろん、競争力は常に高めながらというのが当社の考えです。

今回の古紙の急騰をはじめとするコストアップは吸収の限界をはるかに越えてしまいました。4月以降、毎月増大する負担に耐えて来ましたが、もう限界と判断し、9月1日出荷分から7円以上の値上げを決断させていただきました。重油や古紙は完全に国際市況ですから、私たちがどう交渉しても限界がありますし、古紙を安定的に確保する仕組み作りも、すぐ出来るわけではありません。その分のコストアップは皆さんにアピールしてご理解をお願いするより方法がないという事情から、先日、発表させていただいたということです。

前回の段ボール値上げがうまく行かなかったことについては、幾つかの原因と反省があります。ですから、今回はその反省に立って同じ過ちを繰り返さない行動をとって行きます。まず、だいぶ遡りますが、まだ段ボール業界の再編が今のようには進んでいない一昨年の夏から冬にかけて、王子の段ボール部門もその当事者でしたが、大手の段ボールメーカー間で、ナショナルユーザーを巡って競争が激化し、お互い鎬の削り合いとなりました。新年度の飲料の入札がそのピークとなりましたが、結果、各社の厳しい加工賃が更に圧縮され、相互不信が一層増すこととなりました。

その余韻も消えない年明け、二月半ばには急な重油および古紙の値上がりにより、当社をはじめ段原紙メーカー各社は4月からの値上げを打ち出さざるを得なくなりました。王子グループ、レンゴーグループ等、製紙一貫段ボールメーカーは4月からの製品同時値上げを打ち出し、実現に努力しましたが、需要家さんの値上げに対する壁は厚く、また段ボール各社の足並みの揃い方ももう一つで、結果はご存じの通りとなってしまいました。

成功しなかった理由として、まず第一に値上げに至るプロセスから、一貫メーカーに対する不信感があったこと、第二に事前予告もない2月後半の値上げ打ち出しでは、新年度の予算に間に合わず、製品値上げは大幅に遅れるとの不満感があり、原紙値上げを受け入れ、すぐ製品値上げに向かうという行動にはつながらなかったこと等がありました。この結果、段ボールの経営はさらに悪化してしまい、このままでは設備投資もできないし、従業員の待遇改善、採用もままならない、だから何としてでも経営改善しなければならないと皆さんが実感される状況にまでなりました。
ですから、今年に入って、一貫も専業もなく共通の危機感、共通の目的を持って、業界の体質改善に取組んで行こうという意識が急速に高まり、段ボールの業界団体も結束が高まる強いリーダー体制が出来たのだと思われます。

いま、段ボール業界の最大の課題は極端に落ち込んだ加工賃の改善で、7月の初めから原紙代に関係なく加工賃を改善する取り組みが始まっています。過去に例のないことですから、大変難しいことと思いますが、王子チヨダも高い目標を掲げ、必ずやるんだとの強い覚悟で行動しているのを間近で見ておりますので、必ず成功につながるものと確信しています。

昨年の反省から、当社は段ボール業界の動向をよく知り、行動することが大切と考えております。我々のコストアップも大変ですが、今回の段ボールの加工賃改善が出て来ては原紙の値上げ発表は一定期間、間を置かざるを得ないと判断しました。結果、当社は7月19日発表、9月1日実施ということで、準備、交渉期間が短くなりますが、今回は、一連の流れから、段ボールメーカーさんにはご理解をいただけるものと思い、精力的な行動を開始しております。また青果物、飲料、加工食品、電機をはじめ、原紙指定をいただいている需要家さんも多くあるわけですが、これら指定紙も例外なく、時期、巾を違えること無く値上げをお願いし、認めていただく考えです。

<問>今回の段ボールの箱の値上げについては、どうお考えですか。

<安藤>箱については、王子板紙は直接の当事者ではないので、そのことは、王子チヨダコンテナーの方にお訊ね下さい。ただ言えることは、価格の競争はもう終ったということです。王子社内では、段ボールの問題点は、やはりナショナルユーザーさんの価格、特に飲料関係の不採算価格に尽きるという位置付けになっています。他の大手段ボールメーカーさんからも同じ声が聞こえてきますので、段ボール事業の収益改善には、ここの部分の適正化が喫緊の課題だと思います。

<問>レンゴーと王子と、リーディングカンパニーが二つ揃って、これで決まりと思いました。段ボール業界全体の収益も良くなるに違いないという期待でしたが、この2〜3年、一向にそうはならずにおります。

<安藤>レンゴーさんがご発表のように、覚悟を決めて行動すれば、王子の段ボール部門も改善はしたくて仕方がないわけですから、全く同じ気持ちで取り組むことになると思います。この二社が引っ張って改善に取り組めば、足を引っ張る会社も出ず、段ボール業界全体が良い方向に向かうと思います。機は熟していると思います。
王子のような一貫メーカーの場合、紙の部門で儲けても、段ボール部門で赤字を出していたのでは全く意味がないわけですから、トータルで、しかも、お客さまに最も近い段ボール部門がキチッと適正な収益が出るような体質を社内でまず作らなければなりませんし、業界としても同じことだと思います。これが出来てはじめて段ボール産業の健全な発展が可能になります。

王子の組織体制は、山本信能副社長が王子板紙の社長であると同時に、王子チヨダコンテナー、森紙業を統括しますので、今回は原紙も箱もそれぞれが値上げ行動をするわけですが、一貫メーカーとして、それこそ一貫した行動が社内外で求められますので、今まで以上に原紙部門と加工部門がよく連携を図りながら、値上げを推進して行く考えです。

<問>今度はうまく行くとお考えですか。

<安藤>はい。

<問>レンゴー、王子のチャンピオンが前面に出て下さらないと、ほかのその他大勢にはどう仕様もないことが、この2、3年の経験で誰にも実感されたような印象です。リーディングカンパニーとしての決意をもう一度お聞かせください。

<安藤>やはり、業界のリーディングカンパニーは、その業界が良くなるようにリードする責任があると思います。リーダーがリードしないで業界が自然に良くなるということなどありませんから、業界の向かうべき目標にどういう行動が必要か、明確な考えを持って、まず自分が行動する。そのことに理解、信頼が得られれば他社もそれについてくる。そういうみんなを引っ張って行く行動には、時には犠牲も必要ですから大変ですが、業界を良くするには、そういう覚悟の行動が必要ですね。

冒頭に、王子板紙は利益が出ているのに、なぜ値上げかと仰有られましたが、業界全体があれだけ苦労して統合が行われて現在があるわけですから、残ったところは、みんなが苦労して得た果実と良い風土を損なわないよう更に前進しなければなりません。国際競争に負けないコスト、品質、サービスの競争力をつけるためには、設備の改善が不可欠ですから、常に一定の収益を出し、設備に投資することが欠かせません。

王子の段ボール部門がどんな覚悟でリーダーシップを取るかについては、石田新社長のもと、相当明確な方針でやることははっきりしております。ぜひ直接、王子チヨダコンテナーに話を聞いて下さい。