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王子チヨダコンテナー(株) 石田隆社長に聞く 2007-08-30(第989号)

石田社長石田社長

本紙では、8月3日、王子チヨダコンテナー(株)本社で新任の石田隆社長にインタビュー、王子製紙グループをあげて強力に推進中の段ボール原紙および段ボール加工賃を主軸とする段ボール価格の抜本的改訂に向けての方針について聞いた。石田社長は、周知の通り一貫して経営企画本部を担当、王子製紙グループの戦略中枢を担ってきた人。片や段ボール産業界は、大中小企業入り乱れての無差別的乱戦が今日の窮状を招いた、いわば戦略志向から最も遠い産業。内側から見て感じられた事柄のありのままを、詳しくうかがった。

<問>石田社長は王子製紙の経営企画本部長ということで、長く経営戦略の中枢におられたわけで、ということは、段ボール業界にその戦略中枢がそのまま引っ越してきたようなことではないかと考えております。それで、まずお伺いしたいのは、前の立場で段ボール業界をご覧になっていて、こんどは、実際にご自分で段ボールを直接担当されるようになって、どう感じられたか、その辺からお話を伺いたいのですが。

<石田>まあ、値上げの話につながってしまうんですが、中に入って、すぐ工場を見て回ったわけですね。いまも回っている途中なんですが、工場に行って実際に工場の中を見ると、その工場の問題点とか、色んな話を聞く。去年の夏は従業員が熱中症になったとか、そういう話を聞いたり、従業員あるいは管理者の給与水準、年収の水準のようなものを実際に見て、社長として、すごく心配になりました。このままでは事業を継続して行けないんじゃないか、ということです。

もちろん、明日あさってに王子チヨダコンテナーが赤字でつぶれるかといったら、そんな状態ではないんです。僅かですけれど、利益も出ているし、まあ、そこそこやっているようには見えるんですけれども、結局、例えば設備はどうかということになると、当社は全部で29工場、コルゲータが30台あるんですが、この30台のコルゲータの設置年度、何年に据え付けたコルゲータかということで、単純に設置年を平均すると、1975年なんです。32年前です。設備年齢は平均32才ということです。勿論、色々改造していますから、部分、部分はずっと新しくはなっているんですが、設備というのは、基本的な骨組みを越えて近代化できない制約がありますから、すごく古いわけですね。

一方の製函設備の方は、もう少し入れ替えたりはしてきておりますが、それでも、すごく古い製函機械がまだ、いっぱい残っています。それから、建物がボロボロです。昔は開けっ放しで操業していたわけで、いまだに、そういう前提で、ちゃんとした空調、或いは部分的な空調というようなものも何にも無いといった、そんな状態です。

ですから、一方で、品質要求がどんどん厳しくなってくると、どうしてこんな工場でやらなけりゃならないんだというような工場でも、品質要求の非常に厳しい製品の生産までやらざるを得ない状態です。寸法精度にしても、ものすごく厳密になりました。また、バーコードに紙粉がついたら読めないとか、段ボールはディスプレイでもありますから、印刷も綺麗でなければいかんとか、色んな品質要求があるのに、機械的に対応できないところがいっぱいあるんです。ですから、結局は、それを全品検査というような手段で、クレームが外に出ないように凌いでいるというのが精いっぱいとか、そういう状況です。

食品の包装容器に虫が入ってはいかんから、古い建物をむりやり締め切る。すると、建物自体に温度対策が何もないわけですから、夏になると室温がもの凄く上がってくる。それで気をつけてないと、建物の中で熱中症で倒れるようなことも起こるわけです。それに対して会社で何が出来るかというと、スポーツ飲料とか、水とか、そういうものを配って歩いて、とにかく水分を補給しようというようなことしかできないんですね。

率直に言って、当社は段ボール業界の平均からは上の部だとは思いますが、それでも、現実はこうです。そういうことを製紙工場と比べてみると、段ボールの方は、設備と人間とが非常に近い距離で仕事をしますし、しかも立ちっぱなしです。非常に室温が高い、労働環境が厳しいという中で、立ちっぱなしで、かつ回転体の固まりであるコルゲータとか、製函機と非常に近い距離で仕事をするわけで、これは相当以上にきつい仕事ですね。肉体的にきつい上に、精神的にも注意力を維持し続けなければならない必要がありますから、大変厳しい労働です。

では、それに見合った労働条件が払えているかというと、全産業平均と比べてどうなのか、まあ、明確な統計はないんですが、われわれ王子グループの中でも段ボール部門の労働条件というのは低いし、おそらく業界全体としても、賃金水準というのは、相当低いんだと思います。

この状態で放置して、5年間過ぎて、一体、従業員を雇えるかということを考えると、いまのままでは、何か絶望的というような気がするんです。大体、段ボール産業で上位管理者、あるいは役員、社長というようなポジションにいる人たちがずっと仕事をしてきた時代というのは、新規労働人口として、年間200万人ぐらいの日本人が毎年いた世代なんです。ところがいま現在は、15才から20才ぐらいまでの日本人というのは1年当たり130万人とか120万人とか、それぐらいしかいないんです。以前の半分とは言いませんが、ほとんど半分近いぐらいまで減ってきています。

それでも、いままで何となく人が雇えてきたから、これからも雇い続けられると、漠然とみんな思っているわけですけれども、こんな状態では、本当に人が雇えなくなるんじゃないか。そうすると、もう会社は成り立ちませんね。個々の会社が成り立たなければ、産業として成り立たなくなります。これから、ますます少子化して行きますから、段ボールの消費量も減って行くかも知れませんが、それでも、段ボールの総量というんですか、いまと比べてそう極端に減るわけではありません。いま140億m2近くあるものが、130億m2とか120億m2ぐらいには5年後、10年後にはなるかも知れませんが、でもそれだけのことです。

では、どうするんだ、ということです。それには、まず、どうして、こんなことになってしまったんだということ、これが、やはり一番、私がこの会社の社長になって、2カ月間ぐらいで感じたことですね。外から何となく見ていた時と、入って見たときとの一番の違いと言いますか、まあ、ショックを受けたことです。結局、みんなきちんとやりたいんだと思うんですよ。従業員が熱中症で倒れるなんて、そういうことを放置して置いていいんだと思っている経営者など日本中、一人もいないはずです。できるだけ従業員に金銭的にも、或いは労働環境としても、出来るだけ良いものを提供する、頑張って働いてもらうようにしたいというように、全ての経営者が思っているはずだと思うんですけれども、実際には出来ていないんです。

これは、王子チヨダだけが出来ていないわけではないと思いますから、日本中の段ボール工場の大部分が出来ていないはずです。結局、みんなやりたいんです。働いている人たちは勿論、やって貰いたいと思っているし、経営者もやりたいと思っている。だけどやってない。なぜかというと、カネが無いから出来ない。これに尽きるんです。

どうしてこんなにカネがないのか、産業全体としてですね。結局、加工賃を食いつぶして、会社としては僅かであろうと利益を出して行かないと、銀行からお金を借りることが出来ないし、事業が継続できない。どんな状態だろうと、利益を出さなければいけないということになると、コストを削るしかないわけです。それで、本来、削ってはいけないところまで、この産業はコストを削ってしまっている。それでまあ、何とか、その日暮らしをしている。明日、明後日はまあ大丈夫かも知れない、でも5年後はどうですかといったら、誰も自信がないというような状態だと思います。

コストダウンは当然しなければいけないんですが、掛けなければいけないコスト、事業継続のための最低限のコストまで削ってしまったのが、いまの業界の状態です。せめて必要コストを掛けられるだけの利益が欲しい、そうじゃないと産業の存続ができないという段階です。

問題は原紙代の転嫁ですが、結局、なぜこういうことになったかというと、特に2001年以降ですが、原紙の方が非常にいいペースでと言いますか、コストも上がっているわけですが、原紙価格が上がって、これがきっちり浸透するという状況になって、段ボールの方も、そのつど値上げにトライはしたけれども、原紙代の完全な転嫁が出来ていない。過去3回、10円、5円、5円と値上げがありましたけれども、このときに原紙代の上がった分を転嫁できていないわけです。

それも、まあ一割、二割は転嫁が出来ていないというぐらいなら、本来やるべきコストダウン努力でカバーできるし、それぐらいはしなければいけないわけですが、現実には転嫁できた割合が低いので、結局、仕方がないから掛けるべきコストを掛けないで、凌いで来ているということです。ですから、これはもう、やはり適正な加工賃をきちんと取れるようにしない限り、事業の存続が危ないということです。儲かる、儲からない以前の問題です。そういうことなんです。

<問>ユーザーさんの方には、そういう実態認識がもう一つ行き届いていないんじゃないかと思うんです。というのは、要求すると、簡単にまけてくれる反応がある。それと、こちらのセールスが、舌足らずというか、十分な説明が出来ていない要素もあるのではないかということのようです。ユーザーさんの方に、別に悪気があって、無理矢理、安値を強いているばかりではないと思うのですが。

<石田>確かに、ユーザーさんは、段ボール業界でもこれだけの付加価値というか、人と設備に対する再投資、つまり、これをきっちりやって行かないと事業が継続できないんですが、そういう人と設備に対する再投資が出来ないぐらいまで段ボール業界の付加価値をむしり取っているんだ、というような自覚は持っておられないと思うんです。

というのは、買う方は一円でも安くということはごく自然な動きですから、自分たちの当然の仕事としてもうちょっと安くならないかというような話は常にしますよね。その時に、結局は、端的に言ってしまえば、段ボール業界の方から勝手に値段を下げてきたということだと思うんです。ですから、ユーザーさんの方は、まだまだ下がるんだ、ちょっと言えばこうも下がるのかということで、サプライヤーの方が下げた価格でどんどんオファーするわけですから、これは有り難く下げた値段でいただきますということの積み重ねでこうなったんです。

ですから、別にユーザーさんが悪いわけでもなく、結局、自分たち自身がこうしてしまった。それで、自分たち自身でこういう状態を作ってしまっておきながら、ここに来て、突然、もうオレたちはやって行けない、大幅な値上げが必要だと言っているというのは、ユーザーさんの方から見れば、ずいぶん身勝手な話じゃないかということだとは思うんです。

そこを突かれると非常に辛いんですけれども、正直に言ってですね。ただ、現実にこのままではやって行けないのは確かですから、とにかく、その状況はこうですということをねばり強くお願いして、上げていただくしかないということではあるんですけれども、それはそれとして、この産業に帰属する色んな会社が、やはりこれから考えて行かなければならないことというのは、そういう本来、自分たちが必要利益までも棄ててきたようなことを二度と繰り返さないようにするために、各社がそれぞれどういう風にこれから企業として行動しなければならないか、それを一方でよく反省して考えないと、今回は一旦上げていただいたとしても、また同じことが繰り返されるようなことになりかねません。そこが、一番問題だと思っております。

<問>ユーザーさんと直接接触するのはセールスの方たちで、同時にそれぞれの会社で最重要なポジションにいるわけです。これまでのお話も、これら第一線のセールスの双肩にかかっているわけですが。

<石田>そうですね。要は需給の客観条件が変わったことを、よく認識してもらうことに尽きると思うんです。段ボールというのは、ずっと伸びてきていたんです。伸びているときには、過当競争になるのは当たり前だと思うんですが、常に新しいビジネスチャンスがあるわけで、みんな増設もどんどんするし、新しい段ボール工場、新しい段ボール会社も生まれてくるし、利益を少々犠牲にしても、設備能力を増やして、これをいっぱいにする、そのために一生懸命注文を取る。それで、いっぱいにさえなれば、また次に増設が出来る。それで、将来、市場がそういう勢いで大きくなっていったときに、その大きくなった市場の中で、自分の会社が良いポジションを占めようということで、みんなが一生懸命努力をするわけです。

だから、平米当たりの加工賃単価が下がっても、量がもの凄い勢いで増えて行けば、当然、最低限の利益と資金は確保できる、ということだったわけです。段ボール業界は、戦後、それでずっと来ているんです。その時代に、価格を犠牲にして量を求めてきたのは、実は間違いだったんだよと言えるかというと、そんなことはないと思うんです。それはそれで非常に合理的な企業行動であったということです。では、いまはそれが何でこう問題かというと、需要の伸びが止まったということに尽きるんです。

この段ボール業界の、一番問題だと私が思うのは、では需要の伸びはいつ止まったんだというと、もう2000年〜2001年ごろに、すでに止まっているんです。かれこれ7年前に止まっているんです。自由競争で経済活動をしていれば、そのように環境が変われば、大体、みんなが自分なりに新しい環境に適応しようとして行動するから、全体としてはバランスが取れて行くはずなんですけれども、この業界は、もう環境が変わってから6年も7年も経つのに、相変わらず以前と同じようなマインドで経営者も動き、営業の人たちも動いているように見えます。

これは一体、どういうことなんだという、問題はそこに尽きるんじゃないでしょうか。ですから、いままで営業の人たちがやってきたことを、間違っているという必要はないし、別に私は間違っているとは思わないんですが、だけど本当は6年〜7年前に状況が変わったんだから、急にはついて行けなくても、それから2〜3年も経てば、本来、ついて行けたはずなのに、未だについて行けない。それはなぜなんだろうかということを、まず経営者も、営業の人たちも、一緒に考えるということなんだろうと思うんです。

実際は、段ボール産業全体としての需要は伸びなくなっていますが、実は飲料ですが、これはもの凄い勢いで伸びました。みんながお茶を飲むようになった、水にお金を払うようになったために、もの凄い勢いで飲料は伸びました。結局、この需要が伸びているうちは、みんな突っ込んで行くわけで、飲料をめぐって、大手が、あろうことか、本来、一ばん企業行動に責任を持たなければいけないはずの大手企業が、王子チヨダも含めてですが、どんどん飲料に突っ込んで行った、量を取ろうとしたということです。

量を取ろうとするのは分かるんだけれど、度を越えて突っ込んでいったということが、ひとつ、大きい要素でした。それから、一方では、飲料を除くと、実は需要は減少局面に入っている。減少局面に入ると、非常に辛いわけで、これからも伸びるだろうということで、日本国中にいっぱい段ボール工場が出来て、設備が増えて、その状態でこんどは需要が減り始めると、明らかにオーバーキャパの過当競争状態になります。

その過当競争が一方で起きている。飲料以外のところでの過当競争です。飲料以外の過当競争と、飲料の量を取ろうとする販売競争と、この二つのダブルパンチからこうなったというように思っています。飲料については、これはまあ、大手が考え方を変えるということをやれば、自ずと価格は適正化して行くと思います。問題は、過当競争の方です。

もう既に減少傾向に入った飲料以外の段ボール需要を支えるには、設備が多すぎる、会社の数も多すぎるという状態に、残念ながらなっているわけですから、この過当競争を続けて行けば、どんどん潰れて行く会社が出てくる。自由競争のまま戦って行けばですが、そういう格好の、いわばハードランディングで結局は需給が調整されて行くことになると思います。

もうちょっと、知恵を出そうということであれば、これはもうM&Aしかないと思います。幾つかの会社が、一つの資本のもとに集まって、別々には出来ない設備のスクラップ、統合とか、縮小して行く需要のサイズに合うように、生産の方も再編して行くしかないと思います。ですから、この両方を同時にやらなければいけないんだと思うんです。

飲料については、伸びるからといって、大手が責任ある営業姿勢を取ってこなかったことを本当に反省すべきだと思うし、一方では中堅・中小の段ボール会社の人たちも含めて、少しずつ減少して行く需要に身の丈が合ったような生産能力に、この業界を、どのように再編成して行くのかということを、本当にみんなが真剣に考えて行かなければならないと思います。

そういうことで、私が、会社で営業の人たちに実際に話していることは、要は状況が変わったんだから、今までやってきたことが間違っていたとか、そういうことではなくて、飲料はちょっとまずかったが、これからはちゃんとやろう。それ以外は、やはり状況が変わったんだから、この過剰能力の中で自分のところだけ売ろうとすれば、必ず過当競争になって、沈没して行くだけだから、量を売ることだけがもう営業の仕事の目的ではないよ。売ろうったって、需要はないわけですから、これから会社がやるべきことというのはM&Aです、ということを言っているんです。

<問>業界再編・統合が進んで、期待された第一は、統合大手のリーダーシップでした。ところが、もう2年も3年も経つのに、そういう前向きのことは何も無くて、見えたのは統合大手間の激しい競合でした。これからは違うという話を聞きますが、例えば、飲料関係の極端な安値が、段ボール価格全般に甚大な影響を及ぼしております。この問題を本当に解決できるのでしょうか。

<石田>それは、絶対やらなければなりません。それこそ、飲料メーカーさんにしてみれば、まあ下げてくれとは仰有ったかも知れませんが、基本的には、あなたたちが勝手に下げたんでしょうということだと思うんです。

それを、今更なんだということだと思うんですが、それは確かに仰有る通りだけれど、とにかく現状はこうで、実はやって行けないところまでやってしまったので、何とか、まともな状態に戻してくださいと、これはひたすらお願いするしかないことなんです。それをお願いして、やって行く以外に道はありません。