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段ボール値上げ大詰め、20%アップ浸透へ 2007-10-15(第992号)

適正加工賃の回復を目指す段ボールケースの値上げが、目標とされた現行価格の20%アップに、ほぼ満額近い水準で浸透が見込まれる状況。これには、極めて大きな要因として、過去数年、個々の段ボール納入会社が、年々悪化する収益事情にも関わらず、誠心誠意、サービスに努めてくれたことに関し、ほとんどのユーザーが軒並み好意的に反応していること、更に、最近の原料・燃料コスト上昇による物価変動局面にユーザー自身が巻き込まれ、その対応の上で段ボールと共通する環境に変わったことが特に指摘されるようだ。

9月中は、段ボール各社のそれぞれユーザー先へのアプローチがやや盛り上がりに欠けた印象だったが、10月入りとともに局面が一変、全国的に共通の、しかも統合大手が正に先頭を切って走る形で、これに専業大手、中堅・中小各社、ボックスメーカーがそれぞれ"息を切らして"追いかけるといった、業界の誰もかつて見たことがないし、想像したこともないような状況が出現している。いま、段ボール業界では日中、会社幹部及び営業担当者がほとんど出払って、誰もいない。特に、代表者や営業責任者は、それぞれのユーザー担当窓口のセールスと同道して、一軒一軒、値上げのお願い説明にとび回る毎日で、業界全体がいわばフル回転の様子ともなっている。

ユーザーの反応も、こんどは、前までの拒否反応と違って、明らかに状況が変化しているようだ。「話を聞いてくれる」ことを、その一番の違いと語るセールスが多い。そして、段ボール業界の状況についての認識や関心が、これまでになく深まっていることも注目される事情のようだ。

実際問題として、段ボールケースの値上げは、ある規模以上の重要納入先に対しては、業界全体としてみると、もう何年も成功した試しのない事柄だから、言い替えれば段ボール各社の販売担当者の誰もが、いわば負け組だったわけで、それが今度はじめて勝ち組の名乗りを上げられそうな流れになった。それだけに会社全体、業界全体の士気、モラールの向上効果も大きくなりそうである。

従って、一見、万事順調な進展ぶりではあるが、もちろん何も問題が無くなったわけではない。とくに中堅・中小段ボール各社の間にあるのが"疑心暗鬼"だといわれる。
こんどの場合は、統合大手をはじめとするいわゆる「大手」が先頭に立って、価格の面では一歩も退かない態度でユーザー交渉に臨んでおり、その面で中堅・中小各社もそれぞれの交渉場面で大いに助けられているわけだが、ただ、本音を探ると、決まって返ってくるのが「もう三回も五回も裏切られつづけだから、どこまで信じてよいか」というような言葉になる。

これは、いまや統合大手自体の環境が様変わりとなって、収益基盤がもはや原紙ではなく、段ボール箱以外には無くなっている現実があって、だからこそ加工賃、つまり最終製品の箱の収益向上という、中堅・中小規模と全く共通する基盤が生じて"一枚岩"の産業に変わったと思われるわけだが、業界の大多数の人々は、過去の記憶に災いされて、最終結果を見るまでは疑心暗鬼を棄てきれないということのようでもある。

段ボール原紙は、礼儀上誰もあからさまに言うことを控えるわけだが、ずっと以前のカルテル時代に既に成熟期を通過して斜陽産業化し、そこで有名企業多数が統合化された。それは、基盤である段ボール加工産業の斜陽化によって生じた結果であったが、統合大手は、斜陽という面では以前と何も変わりない原紙部門の重荷に耐えながらこの産業の基盤を支えているわけで、そういう認識が必ずしも確立されていないのは、統合化の過渡期に生じた摩擦熱、つまり価格問題の後遺症だと思われる。そういう意味では今年末までに、業界は価格問題と合わせて、これまでの精神障害的な面でも、それなりの解決を果たすことによって、収益の抜本的改善と、モラールの向上との両面で一つの境界を通過することになると期待されるし、楽観的には「成熟化の中での安定」の果実を手に入れることにもなりそうである。

段ボール業界に限らず、日本人そのものが過当競争体質を生まれながらにして持っているわけだから、その面での特に大きな変化は期待できない。ただ、負け組であり続けた販売部門が恐らくこんど勝つ味を十分に知ることは、先行きに向かってのかつてない好材料であるに違いない。それから、段ボール業界ではとりわけ「大手」の影響力が大きいが、その大手を構成する人々が、こんどの業界あげての段ボール値上げ活動を通じて、自分自身の収入がどこから生まれてくるかという現実にあからさまな形で直面し、解決して行く経過を通じて、自身と、そして業界一般に対する「責任の自覚」のような事柄もあるだろう。

大手が自負心を持つことは結構だが、同時に連帯の義務感も持ってもらいたいというのが、業界の大多数を占める中堅・中小企業の人々の意見だし、それが業界そのものだからである。