特大


海外取材報告

パリ、ブダペスト、ロンドン

アッシードーマン社で

左上:工場見学は定められた紙製のキャップ・上っ張りに耳栓の見学スタイルで 左下:原紙搬入・製品出荷の広いトレーラーパーク 右上:オペレータのアレックさん 右下:原紙係のマークさん

工場見学には、まず腕時計を外し、ポケットにしまい込むように要請された。腕時計の表面のガラスが割れて、飛び散るのを防止するためとのことだった。
それから、いかにも清潔な、真っ白な不織布状の紙製の衛生帽と上っ張り、それに耳栓を全員が着用して工場内に入った。どこか、宇宙服を着て月面をさまようような趣もなきにしもあらずで、また、北欧企業の徹底した安全衛生観念・清潔感覚を実地に体験する貴重な体験でもあった。一行の何人かが、あとで使用済みのこの3点セットを大事にしまって、日本に持ち帰った。
日本の段ボール工場で、これほど徹底した衛生意識のプレゼンテーションを実施しているところはまずあるまいが、アッシー社で体験してみたら、アッシー社に対して、「実に清潔な会社」という非常にいい印象が残ったのは、一行の誰にも、まさに実感だったのではないかと思われた。

1975年設立のアッシードーマン・パッケージング・リミテッドは、現在資本金5,100万ポンド。先述のニール・オスマンさんの話にある通り、英国内に3つの段ボール工場を持つが、一行の訪問したノーザンプトン工場は、従業員が200〜240名で、季節工、パートの関係で人員は必ずしも1定しないようであった。工場は4直3交代制で、製紙工場と同様の24時間フル運転が、コルゲータ部門・製函部門とも行われているという。
コルゲータは、機長兼品質管理担当が1名と、原紙係1名、及びオペレータ3名の計5名が1クルーとなっていて、このほかシート搬送ラインに2名がつき、製函機はオペレータが各2名、そして、保守要員としてエンジニア1名がそれぞれ各シフトごとの構成人員となっている。

同工場の段ボール生産量は、年間1億2千万平方m(月産1、000万平方m)で、フルート別にはCフルートが20〜25%、Bフルートが60%、Eフルート5%、CBダブルが10〜15%程度の比率ということである。コルゲータは、三菱H300—2200で、機械速度は最高300m。

一行に会議室で説明中、ケビン・ニケルさんが実は嬉しいことがあるんだと明かしたのが、同機の最近の平均速度が、4クルーでの3直24時間連続運転で、1時間当たりの平均運転速度が13、000m(毎分210〜220m/分)をオーバーしたことだという。因みに、同工場では、みんな、コルゲータのことを「コールガイター」と発音していたが、やはりこんなところが英語と米語の違いなのかと、妙に実感するところもあった。
オーダー替えは非常に頻繁である。ドライエンドで1シフト当たり150〜200回、ウエットエンドで15〜40回ということで、フルート替えは1シフト当たり4回程度、また、BフルートからEフルートへの段ロール交換によるEフルートの生産は、毎週1回まとめて生産を行うことにしているという説明だった。

ロットも小さく、最小オーダー長は100mというものもあるという。
工場見学中、パレットの話を聞いているうちに、ケビン・ニケルさんが言い出した言葉には、すっかり驚かされた。「ユーザーから土曜日の朝に、ワンパレット分だけ注文が来て、その日のうちに作り、月曜日の朝1番に届けるようなこともある」と。段ボールの世界は、東洋も西洋も無いのかと、ふと思ったわけである。

糊の消費量は8・5〜10・0g/平方m、使用原紙巾は最大2200m〜1100mで、ライナー7種類(150〜280g)、中芯8種類(80〜220g)ということだった。
原紙倉庫をみたら、必ずしも自社製の原紙ばかりではなかったが、主として北欧品で、1部、南ア産があった程度。アメリカのものは、ライナーも中芯も全くないとのことだった。
製函ラインも4直3交代と既に述べたが、製函機はフレキソフォルダグルアがマルタン製3色機2台とS&S3色1台、それに印刷機がボブスト4色1台、同じくボブスト2色2台、デリテンド3色1台、ボブストのプラテン1台などとなっている。
実は、帰国後に聞いたのだが、アッシードーマン社は「タナベ」のワンタッチケースグルアーの大のお得意先で、各地の工場に合計21台設置しているという。欧州の段ボール企業で最も多い設置台数で、ノーザンプトン工場にも1台あったはずだが、製函部門の撮影は禁止ということだったので、つい見落としてしまったようである。

以下、話がいろいろ前後して、とりとめがないかも知れないが、思いつくままに記すことにしたい。工場を見学していて、ある人が激賞していたことが2点あった。本紙のテープレコーダから再生して、その言葉通りにお伝えする。

一つは、金網のシャッターである。
「気がつきましたか。コルゲータにクランプリフトが入れないんです。原紙を持って行くのに入れない。2mの高さしかないから絶対に入れません。だから非常に安全性が高いんです。われわれだと、いつもクランプリフトを気にしながら作業をしている(笑い)、いつハネられるか分からないような状態でやっているんだが、ここではそういうことが絶対ないんです。勿論、緊急には入れますよ。だけど、シャッターがきちんと下りているから、普段は入れない。入らないというルールなんですね。こういうことは本当にすばらしいですね」。

もう一つは、右側に掲載したマテハン・ロボットである。
「これはS&Sの3色フレキソフォルダグルアの160枚/分の運転で、給紙側1名、排紙側はマニュアルスタッカー、結束なしでやっています。何がすごいかというと、バーコードリーダーをターンテーブルで自動的に読んで、サイズがバラバラであっても、シュリンク包装で自動で、寸法・位置決めをして、そのあとP・Pバンドを4本掛けるという、非常にマテハンのすばらしいところです。ドイツ製のミンダというマシンですが、これはゴミが出ない。結束機も、日本の場合は結束紐を2本使っていて、カネがかかっている上に、得意先でゴミが出て困っています。この工場では、そういう考え方が全然、全くないんです。すばらしいことです」。

記者は、今度の三菱重工欧州視察団に同行取材することになった際、旅の報告の最後は、一行の一人一人にコメントをもらって、それをまとめにしたいと思っていた。しかし、合計5カ国をほぼ2日ごとに移動する忙しい旅では、パリに着いた終わりごろには全員、疲労困憊で、インタビューどころではなく、結局、帰国後に折をみてということで、見送ることにした。
従って、いささか未完のままではあるが、本稿もひとまずここで締めくくり、以後は後日としたい。