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韓国1985年(昭和60年)

1985-02-10(第299号) 大栄包装に「30C」三菱フィンガレス/韓国向け輸出第1号

韓国段ボール包装工業協同組合・金昇武理事長の説明によると、1981年以降の韓国の段ボール生産量は、推定で81年9億4,200万平方m、82年11億2,000万平方m(前年比18.9%増)、83年13億平方m(16.0%増)、84年15億平方m(15.4%増)程度となったことが見込まれている(但し、シングル換算で計算)。つまり、第二次オイルショック後の不況下でも、段ボール需要の伸長は続いたわけであり、景気が回復、上昇に向った83年から84年には、金昇武社長の大栄包装(株)の場合で、売上げ金額でみると前年比40%増、また他の企業でも大手は軒並み30%前後の売上げ増加を示し、シェアを拡大した形になっているという。

大不況下でも、量的には生産の拡大がつづき、段ボール企業間の競争が激化し、さらに国内段ボール原紙供給能力の天井に突き当ったことと、原紙メーカー自体にも倒産が続発し、景気が回復に向った83年以降、俄かに原紙需給が逼迫化した。月産能力6千tの或るメーカーの場合で、在庫は常時1千tを割り込むような状況。段ボール会社は、みな現金を持って買い付けに押しかけるような事態だったという。
原紙価格も急騰し、83年末から84年半ばにかけて平均して18%アップ、また値上りの著しかった中芯は、83年夏までのトン175,000ウォンが210,000ウォンに上昇した。
その後、84年末にかけて、原紙の増産が軌道に乗ってきて、需給が緩和、また段ボール価格の値上げが思うようにいかなかったこともあって、市況は最近、若干弱含みに転じたという実態のようだ。
84年に、数量では前年比15.4%の伸び、それに段ボール価格がピーク時で平均7%程度アップ(年央までは上昇、年末には再びダウン)だから、単純な算術計算では売上げ金額でみて20%増ならまずまずの成績だろう。そうした中で、なぜ大栄包装が40%増もの記録的な増収を達成したかの背景を、まだ説明していない。

勿論、第一は金昇武社長の経営の冴えであるが、更にもう一つ、同社の主力コルゲータ(20年前の日本製輸出マシン)のシングルフェーサ入れ替えによる大幅な合理化、能力アップがあげられる。実は、これが三菱重工の韓国向け輸出第1号で、1800mm幅、毎分速度170mの30C形フィンガレス・シングルフェーサ(A・Bフルート計2台)が昨年6月、同社向けに船積みされ、京畿道始興郡君子面原始里725-8の工場で、わずか3日間で入替え工事を完了、同7月24日からスタート・アップした。
「これからはハイスピードであると同時に、品質の高級化および省力化が韓国の段ボール産業に強く要求される時代だと思う。中でも高級品質ということが、これからの競争の眼目だと判断して、まずコルゲータの大改造に踏み切ったものです。設備面ではまだまだやりたいことばかりですが、工場スペースが狭いのが悩みの種で、これは韓国の段ボール工場がいま抱えている共通の問題点の一つだろうと思います」と、金昇武社長は述べていた。

三菱重工の紙工機械関係の韓国における代理店は善一商事(株)(本社・ソウル特別市中区太平路二街69-5、三井ビル9階、電話ソウル755-6543、金昶震社長)である。1980年に3,800万人だった韓国の人口は、昨年初めて4千万人の大台に達した見込み。うちソウルの人口が約1千万人、そして韓国全人口の20数%、つまりソウル市民全体にほぼ匹敵する1千万人弱の人々が金(キム)姓であるといわれる。金昶震社長は、金昇武社長と同じ慶州出身。いにしえの新羅(シラギ)の貴族、両班(ヤンバン)の後裔である。氏が、つまり善一商事が三菱重工の紙工機械代理店になったのが10年前。そして三菱マシンの第1号は昨年7月24日、大栄包装で稼働の30C型フィンガレス2台が、ついで今年2月10日、富平板紙餅店工場で大型コルゲータ一貫プラント第1号機が稼動という経緯である。

金昶震社長は、この10年を次のように語っている。

「私は韓国における三菱の代理店ですから、全国の段ボール会社を一軒一軒訪問して歩き回りました。カタログを持って行って説明をしようとするのですが、5年前までは誰も話を聞いて呉れないし、せめてカタログを置いて帰ろうとしても、見ても仕方ないから持って帰ってくれと、カタログさえ受け取ってくれない状況でした。それが、5年前ごろからは、買う気はないが、あとで見るからカタログは置いて行ってくれと時折いわれるようになりました。3年前ぐらいから、機械の値段はいくらぐらいだと訊いて貰えるようになりました。しかし、その頃はただ値段を訊くだけでしたが、ここ一年余り前からは具体的な商談の形が急に広がってきました。韓国の段ボール業界は、三菱の機械を販売する私の立場でいうと、そのように変ってきたといえます」。

三菱重工が「売れても売れなくても、この人に」と10年前に白羽の矢を立てた人だった。記者は、たまたま幸い、そういう何か、ドラマが最高に盛り上った場面での取材旅行だったようである。

韓国の段ボール業界はもちろん、他の産業界も全般に、この一両年来、設備投資の面で従来と違った新しい流れが出て来ている。これは景気回復やオリンピックをめざす国民全般の士気向揚ばかりではなく、もう一つ大きな背景がある、といえるようだ。それは、高金利で有名だった同国の金利体系が2年前に、全大統領により抜本的に改革されたことである。

それ以前は、定期預金利率が23.8%、一方、企業の借入金の場合は33%という高金利だった。高成長にともなうインフレの関係もあったが、この高金利だと、新規の設備投資を仮に借入金で調達すると、よほど高利潤をあげないと追いつかない。設備投資して、その償却を行い、金利を支払うより、預金して利子を得る方が確実である。それが、二年前の改革により、定期預金金利は8%に引き下げられ、借入金利は10%に引き下げられた。「先進祖国政策」の一環である。
こうなると、設備投資をめぐる環境も、すっかり一変したことになる。生産性向上、合理化をめざす投資意欲が、韓国の全産業界にいま大きく広がりつつあり、それが83年以来の景気回復・上昇のサイクルと重なって、またソウル・オリンピックを一つの節目(ふしめ)にテーク・オフを果そうとする国民的合意にも裏づけられて、大きな盛り上がりをみせてきている情勢と思われる。

段ボール産業については、日本での先例から類推して、量的規模としてごく大まかには「20億平方m」ぐらいが近代的産業基盤の構築上、どうしても必要な"目安"になる数量と思われる。そして、この境界を通過するためには、生産手段、つまり設備面の革新が不可欠の条件であるし、同時に原紙の面でも単なる量の拡大にとどまらず、大きな革新が必要と考えられる。
因みに、韓国の人口は日本の3分の1強だから、「国民一人当り」のベースでいえば、韓国の10億平方mは日本の30億平方m、韓国の20億平方mは日本の60億平方mに当ることは勿論であって、以上はあくまでも一国一産業を一つの単位としての議論である。
ともあれ、韓国の「先進祖国政策」は、前途に物的流通の飛躍的な拡大を想定することになる。物的流通はすなわち段ボールであり、目的地がそのように定まっているわけだから、要は今後、どういう経過で、どう効率的に事態が進行するかであろう。

前号では、富平板紙(株)餅店新工場の建坪四千坪の工場写真をお目に掛けた。右上掲載の写真は、記者が訪れた時はまだ巻取が何本か置いてあるだけで、空っぽの二千五百坪の製品・原紙倉庫のスナップである。カメラを左右に移動して、左手に一枚、右手に一枚の計三枚をつなげば、この全体のスペースがわかるかという大きさだった。
これまでの仁川本社工場は製品置場のスペースがない狭さだったため、雨が降ると余程困ったらしい。「雨が降ると工場を止めねばならなかった」と韓錫理事は語った。「こんどはいくら雨が降っても大丈夫。これだけのスペースがあれは、雨が降っても止めなくて済む」と、同氏は「雨」のことを何度も笑顔で繰り返し語った。
需要は、工業品関係が年率10%以上のペースで伸びており、今後もその方向であること、それに農産物の転換が軌道に乗ってきており、段ボールの高度成長は当分続くだろうと、確信の響きを持った答えが返ってきた。そして、輸出品包装のみならず、需要全般の傾向として、段ボールの高級品質化が最近特に強い要求として出ており、そのために一段と努力しなければならない状況を種々説明した。
富平板紙としては、物量的にはそれほど増やすつもりはない。それ以上に、まず品質の改善をこの韓国随一の工場で達成したいと述べた。

同社は現在、Kライナーは国際製紙、韓昌製紙の2社、ジュートライナーは大洋製紙、永豊製紙、三原紙管の3社、中芯は華城製紙とテスト中のもう1社、計2社から購入しているが、先ごろこれら製紙メーカーを呼んで品質の一段の向上を要請したという。
韓国の段ボール原紙メーカーは現在100社ほどあるとのこと。日産15トンといった小規模な会社も多く、富平板紙の今回の三菱プラントが、原紙の品質向上への極めて大きな衝撃ともなりそうである。
同機の主要仕様は、機種名H-150-2000。A・Bフルート、30C形フィンガレスシングルフェーサ、50-1C形オートスプライサ5台、55Cグルーマシン、56Cダブルフェーサ、37Cオートスリッタ、58Cインスタントカットオフ、Σ40ほか。日本でもそうだったように、高性能コルゲータが原紙の品質チェックを厳しくしそうである。

そうした状況下で、大洋製紙がクラフトペーパーマシン(長網3.3m幅)を一部改造して長網中芯に転抄する計画が進んでいる。2月末〜3月上旬から操業の予定という。「非常に期待している」と、韓錫氏がニコニコ笑顔で語っていた。