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業界動向

2004-06-30 ユタニ工業(株)ダンロール事業部織田夏樹事業部長

織田夏樹ダンロール事業部長

織田夏樹ダンロール事業部長

織田 昨年末、ニューロングさんが挨拶に見えて、段ロール事業をやめるので、あとをよろしく頼みたいということでした。ニューロングさんが止められると、段ボール工場の方々が早速にも困ることですからお受けしました。しかし、それで当社の段ロール製作能力もいっぱいになり、ここで削って、岡山工場で研磨するのですが、1年中24時間、フル稼動でも余裕がなくなってきております。
機械的な問題以上に心配なのが、当社でも段ロールの若い技術者、専門家の育成が、なかなか思うように進まないことです。私はコルゲータがメインで経験年数はほぼ20年近いんですけれど、まあ、蒸気が入って、熱が入る機械のああいう調整ですけど、これはやはりノウハウが要って、熟練が要ります。例えば、不良シートが出来た場合に、何が原因かというのを見極めるにも、すごい熟練が必要なんです。ですから、短期間に人材を養成しようと思ってもなかなか難しいことなのです。
私自身の例で言えば、段替え工事を100回ぐらいやるのに、毎週出て、1年で40回として2年半ですか。まあ3年ぐらいしてロールの取付・取外しが出来て、あと研磨機の加工、それもまず研磨作業の習得に少なくとも1年かかります。それであとは24時間運転で表面加工するだけなんですが、その24時間も夏、冬といった気温差の激しいときも全部同じ製品を作らないといけないんで、機械のクセとか、まあ機械はNCなんですけど、やはり機械のクセが分かってないと目標のクラウンや真円度とか、ヤマ型、そういったものが出ないんで、目標のクラウン・真円度・ヤマ型を出そうと思ったら、最低でも3年は掛かるんじゃないでしょうか。それから、ロールの取付け・取り外し、ロールの合わせ方、そのどこが一番のポイントかということを理解して、実際に加工の一人前になるまでには、あれこれ合わせてやはり10年ぐらい掛かるんじゃないでしょうか。
私が丹羽鉄工所にいた当時でも、ロール製作の人間といったら、やはりそんなに人がいないんです。丹羽がマチソンの研磨機を入れてから、それまではプレーナーですね、ボクの前です。プレーナーでヤマを削った時代から、マチソン研磨機を入れて、結局一人だけ、内海さんという人が一人、そのあとが有園という人、その次が私ですから、結局、丹羽ではロール製作をまともにやったのは3人だけです。その専門の人間以外は出来ないという、まあ、そういう環境なんです。
また、ロールの検査なんていうのは、カーボンテストを社内でやってから出荷しますけれども、これはロールを組み合わせて、回して、中にカーボン紙を通して、その色の濃淡を見るんですが、そのカーボン紙の良し悪しを判読できる人は、やはりそうなるまでには、何年も掛かります。結局、検査して出荷OKを出すのは、その時、その時に一人しかいませんね。代わりに誰かやってくれと言ったって、やれる人がいないから、その人がダメと言ったらダメなんです。仮に出荷してクレームが付くんだったら、出荷しない方がマシですし、もし出荷してクレームが付いたら、工事費が二重に要ります。一回工事するだけで100万近い工賃が飛んで行きますから、利益は出ません。これは、どのメーカーでも同じです。例えば三菱さんでも、ロールの専門家と言ったらIさんという人で、私もいつもご挨拶しますが、その方がいないと判断できないと言われています。
問題は、そのほか研磨機があります。いま、マチソン研磨機はもう会社がないんで、ああいうコルゲータの専用機はドイツのコブルク社、ワールドリッヒ・コブルクという会社が作っている研磨機しかないんです。コルゲータ用専門の研磨機は世界で1社だけです。国内には岡本工作機械がありましたけれど、いま作ってないと思います。まあ、研磨機はマチソンが最高でしたけれどね。それが、いまは無いんです。ウチにもこのワールドリッヒ・コブルクが1台と、マチソンが1台と合計2台ありますが、やはりマチソンが使いやすいです。ドイツのコブルクは高い機械ですけれども、使いにくいんです。
これからは更に、難しい溶射ロールが増えると思います。だから、すべてが良い条件でないと加工できないんで、人も熟練度が要りますけれども、機械も、やはり良いものが欲しいですね。いまは、どちらにしても充分ではないんです。
段ロールの場合は、特に据付の専門家たちも高齢化で、いまの状況では、若い据付の専門家も育っていませんから、段ボール工場にとって将来の大きな問題になると心配です。私の丹羽当時は、サービスで大体10人ぐらいはいたんです。全員、工事が出来ましたからね。社内はシングルフェーサの組立があんまり出ていなかったので、実際に現場に行って工事できる人は、丹羽が倒産してから6年目ですけれども、ほぼ10名ぐらいはあちこち、いまでも工事に出ているはずです。内田さんの関係もそうですが、こういう人たちが、例えば3人とか4人で組んで、外注工事の形で据付を請け負っているんです。
まあ、工事費も抑えられていますから、コルゲータはあちこちにあるし、大体土・日が工事日です。ですから、メーカーが必要人員を全部自社から派遣するというのは経費も掛かるし人数も足りないし、難しいんです。それで、自社からは専門家を一人、あと必要な3人は地元の下請に外注ということが多いんです。
段ロールの寿命は、Aフルートなら短いところで1年、うまく行けば2年近くいけます。Bフルートはやはり使用頻度が落ちますから、短くて2年、長いところで3年?4年ですね。ただ、年数が経てば必ず摩耗するものですから、必ず戻ってきます。ですから、キチンとした仕事をしていれば、間違いなく仕事は来てくれることになりますが、一番大きな問題は若い人材が育ちにくいことです。
段ボール会社でも同じことが言えるのですが、製造の現場では人が高齢になっておりますし、新規の人材が入ってきませんからね。製造の現場は、やはり汚い仕事なんです。段ロール関係などは、みなグリース方式ですから、現地工事に行っても分かりますけれど、全身がグリースだらけになるんです。ロールも、グリースが焼け付いた状態のロールを最初にいただいて、それをキレイに仕上げるんですが、現地でもグリースだらけの機械をバラして、掃除しながら組み込んで行くんです。それも土曜・日曜の仕事です。ウチだってロール製作は土日だからといって研磨機を止めるわけにはいかないんです。研磨機は岡山工場でやっているんですが、24時間、どうしても稼動し続けないといけないし、グリースだらけで土曜・日曜に休めないとなると、彼女とデートもできないし、若い人に給料をはずんでも長続きしないということなんです。
将来、必ず大問題になると思うのです。技術の継承という意味からも、何とか解決の道を探って行かなければならないことです。エンドユーザーさんは値引き、値引きをすごく要求されますけれども、製造している立場、工事している立場から考えたら、そればっかり要求されたら、もう人材がないということで、こういう業界は、本当にお互い助け合ってやって行くほかないので、そこのところをぜひ考えて欲しいですね。