特大


業界動向

2005-09-15 レンゴー 大坪社長にインタビュー

大坪清社長

大坪清社長

本紙では9月2日、レンゴー東京本社で大坪清社長にインタビュー、最近の段ボール動向や価格問題、今後の業界のあるべき姿などについて聞いた。大坪社長は今日の板紙・段ボール業界に向けての構造改革、業界安定化への道を切り開いたトップ・リーダー。ちょうど日本製紙連合会第2回訪中ミッションの一員として8月29日北京で開催の中国造紙協会との意見交換会に出席、帰路、大連に移動して同地区の造紙協会幹部と懇談、前々日帰国されたばかりで、中国問題についても、非常にホットな話題を聞くことができた。

――色んなところで最近の状況をお訊ねすると、段ボール会社も、ボックスメーカーも、それぞれ立場による差はありましても、骨身を削るような合理化、コストダウンを経て、ようやく安定状態に近づいてきた様子です。ここに至るまでの大坪社長のご活躍が目覚ましかったことから、中には、大坪社長を土着文化の人ではなく、外来文化の人ということで「段ボール業界によくぞ来てくれた」というような意味のことを口にする人もおります。

大坪 亘理さんは、得能さんの「発明街道」を書かれた人でしょう。業界には大変詳しい方ですから、私のことも何もかもご存じと思っていたのですが、思い違いだったのでしょうか。私は、もともとこの業界の人間なんです。いうなら土着文化の人間です。得能さんが昭和36年に斉藤了英さんと喧嘩して、大昭和を出てレンゴーに来て、37?38年は大阪の上本町四丁目のマンションで単身生活をしていました。私は住友商事に入って、すぐ摂津板紙に出向したわけですが、得能さんは当時の飲み相手だったんです。要するに、大昭和や、得能さんの親戚の井出製紙は、得能式抄紙機で白板紙などを生産していたし、摂津板紙は増田式抄紙機です。摂津はそれから42年に段ボールに進出しましたが、その当時の板紙や段ボールの基礎知識が、今の私の土台になっているんです。2000年にロンドンから帰ってきたときがスタートではないんです。

――摂津に出向されてCGP設備、それに国産初めてのCGP中芯の建設を手掛けられたことも、以後のこともよくうかがっております。ただ、平成15年の賀詞交歓会で、幹事役の大坪社長が業界の主立った方々を一人一人壇上に呼び込んで、最初に森紙業の藤定社長、それから王子の鈴木社長というように、10人以上もおられたでしょうか、それらの人たち全員で一緒に乾杯するという派手なハプニングがありました。あのような情景は、それまでの業界にはあり得ないものでしたし、以前と以後とで業界の歴史が変わった印象を業界の人はみな強くお持ちのようです。それに、ご就任後すぐは日本語より英語が先に出てくるような感じでしたから(笑い)、そういう言い回しで、従来の業界人に出来なかったことを達成した大坪社長に謝意を表しているということだと私は思うんですが。

大坪 そうですか。まあ私がレンゴーに来るまでは、生産の管理技術ばかりが幅を利かせていました。それを見てレンゴーの改革と同時に、業界改革の必要性を感じました。ですから、最初は内部改革から始めましたが、それには昭和37年から42?43年ごろの仕事が土台となって活かされているわけです。

――私は「夜のプラットフォーム」しか知りませんでしたから(笑い)、「段ボール原紙のプラットフォーム」と聞いて、仰天しました。大坪社長が言われてから、そういう概念がこの業界に初めて根付いたわけですが、率直に言えば、当初は専業メーカーやボックスメーカーの反感が非常に強かったのに、今になってみると、逆に評価の声も多くなっている感じです。そういうことも踏まえて、業界の現状をどう見ておられるのか、お訊ねします。

大坪 段ボール業界は、歴史的に見て現在は第三世代の過程なんです。1909年から終戦の1945年までが井上貞治郎氏に始まる黎明期で、45年から60年代が第一世代、これは増田義雄、井川伊勢吉、斉藤了英、川口善一、大津淳一、森一夫といった人たちがどんどん出てきた時代でした。そして、60年代後半から90年代後半にかけてが第二世代で高度成長期、さらに、2000年以降は第三世代の時代と言えるわけです。レンゴー社内でも、そういう大きな流れの中での時代変化を自ら感じて行動するようにと、いつも言っているんです。
コルゲータで言えば、黎明期は段繰り機の時代、第一世代はフィンガー付シングルフェーサの時代、第二世代がフィンガレス、すなわち、得能さんが開発したものですが、私は正にその現場にいたわけです。そして、では第三世代はどうなるのか、今のままでよいのかどうか――それが大きな課題だろうと思います。
例えば、スプライサーでは、黎明期から第一世代は手継ぎでしたが、第二世代から現在までオートスプライサーで、性能的にはどんどん進化を続けてきましたが、では、これからもシングルフェーサとスプライサーは別のままでよいのか、新聞輪転機の技術などを応用できないかどうか、あるいは機械メーカー任せではなく、段ボールメーカーがリードして技術革新を進めて行かなければならないだろうと考えております。
時代が一つ大きく変わりました。われわれの業界でも、もうシェアがどう、価格、原料がどうとかだけを言っていたのではダメじゃないか、もっと大きな歴史認識の上に立った生産技術そのものの技術革新をしなければいけないと思っております。

――バブル崩壊から10数年のデフレ不況時代を経て最近、景気がようやく上昇軌道に移りつつある感触ですが、今後についてはどう見ておられますか。

大坪 私はレンゴー100周年を一つのメドに考えているのですが、100周年に当たる2009年?2010年のGDPは580兆円、また、段ボールはご承知の通りGDP相関係数が限りなく1に近いので、段ボール生産量では140億?程度と見ております。

――レンゴーグループは、かなりの設備統廃合を進めてこられましたが、いま現在の設備状況はどう判断しておられますか。

大坪 レンゴーの設備状況は、いまの水準、レベルがいいところだと思っております。というのは、2直の残業なしで考えるとバランスしております。それでレンゴーの取るべき道は、前にもお話ししましたが、あくまでもセーフティネットの考え方で、中小とのアライアンスを考えてやって行くということですから、レンゴーだけが勝手にやるのではなく、設備も総合的に考えるということです。

――以前は、レンゴー1社だけが飛び抜けて大きくて、どこか「お山の大将オレ一人」みたいなところがありました。その反面、孤独だったんじゃないかと思うのですが、最近の数年の間に、王子が段ボール加工部門も整備して、森紙業グループを含めると、レンゴーとほぼイーブンの大勢力になりました。ということは、お山の大将オレ一人にパートナーが出来たと同時に、強力なライバルが出現した形です。お訊ねしにくいことをお訊ねしますが、王子の鈴木正一郎社長をどう思っておられますか。

大坪 業界リーダーとして非常に尊敬しておりますし、お互いの考え方を100%理解し合っていると考えております。私の尊敬する経営者は、米国ではGEのジャック・ウェルチ、英国ではブリティッシュ・ペトローリアムのジョン・ブラウンです。
ジャック・ウェルチの本は以前に出た2冊も、日本ではまだ出版されていない近刊本も早速買って、よく読んでいるんです。そのジャック・ウェルチが経営者に必要な資質は「ガット・コール」と言っています。ガットは日本でいうガッツです。腹の底から出る叫びとでもいいますか、鈴木正一郎社長は、そういう種類のガッツを持っておられると思っております。
こんどの王子製紙と森紙業の問題は本当に良かったと思っております。これから、レンゴーと王子グループが核になって板紙・段ボール業界をリードして行くことになります。仰有る通り、お互い競争しながら、同時に良きパートナーでありたいと考えております。板紙・段ボール業界の基盤である「段ボール原紙のプラットフォーム」の上に、第三世代の新しい世界を作るということだと考えております。

――大坪社長は以前に、段ボール原紙のプラットフォームの次は段ボールのプラットフォームということを言われましたが。
大坪 段ボール原紙のプラットフォームの上での段ボールのプラットフォームですが、正確には板紙・段ボールのプラットフォームですね。原紙と段ボールと一体型で考えるべきでしょう。そして、最終的には、古紙も加えた三位一体での業界改革だろうというように考えております。

――いま、中国が世界中から古紙原料を集積し、欧米製の最新設備をどんどん新増設して、段ボール原紙の生産が急拡大していると聞いております。ということは、やがて将来は中国の段ボール原紙の輸出、日本から見れば輸入の問題が浮上してくるのではないかと思いますが、この点はいかがですか。

大坪 一昨日まで製紙連合会のミッションで中国に行って来ました。板紙部会を代表して説明したり、中国の事情を色々聞いたりしたわけですが、中国の一番大きな問題は統計の不備なんです。古紙回収も30%ぐらいということですが、実際に何トン回収されているのかが分かりません。古紙の必要量、国内発生量、必要輸入量等、数字を正確につかまないと正しい対応は出来ないわけですが、それが無いんです。段ボール原紙の生産量にしても、中国は2004年に5,000万トンの生産量だと言っているんですが、これも数量計算での合計生産ではなくて、売上金額(元)の合計から換算して、数量は幾らと言っているんです。
それから、製紙メーカーは何社あるのかと質問したら、三千数百社だということでした(笑い)。どう考えても、これだけの数を本当に把握できるはずもないし、ではこれからどうなるかと聞いたら、三百社になるというんです(笑い)。日本では、中国のことがとかく誇大に考えられる傾向があるのだと思うんです。実際に、いまのエネルギー事情ひとつとっても、際限なく生産が拡大して行くなどあり得ないことですし、つまり、日本からの古紙輸出も、これ以上伸びるとは思えません。
段ボール原紙も、国内で消費されて、日本には入ってきません。先ほど言いました製紙メーカー三千社のうち、二千社の原料はワラを使っているということです。要するに、伸びる部分の一方で減る部分があると考えたらいいでしょう。

――大坪社長は年初の懇談会で、年央には再び強気情勢に変わると見通しを述べておられますが。

大坪 その判断は基本的には変わりません。段ボールの生産で見ても、5?6月はまあまあの状態、7月は足踏みしましたが、9月?12月にはまた伸びると見ております。

――価格問題についてお訊ねします。段ボール箱の価格については、専業メーカーもそうですが、特にボックスメーカーの不満が強くて、昨年あたりは一貫メーカーがシート代を取り切った反面で、ケースの値上げに努力が足りないじゃないかと不満の声が非常に強烈でした。ただ、昨年から1年半経って、このデフレ時代、たとえ大手だろうが段ボール箱だけが値上げできるはずがないという諦めも浸透しましたし、上がったら必ず下げる人が出てくるから、かえって不安定になるだけだということで、わが身を削るコストダウンの努力をして、その成果も出てきたため、なんとなく安定したムードが生まれてきているように思います。段ボール箱の価格は、レンゴーの業績にとっても重大な要因ですが、この問題をどうお考えでしょうか。

大坪 以前は、この業界ではレンゴーの背中ばかり見てどうこう言う状況だったと思います。段ボール箱は、個々のユーザーと個々の段ボール会社、ボックスメーカーとの間の個別取引なんです。ですから、最近は、価格決定の面でそういう本来の姿が自然に出てきて、各自が自分の意志で考えるようになってきたと思いますし、そのことを喜んでいるわけです。それもひとつの段ボールのプラットフォームと言えるのではないでしょうか。大手が、大手がとよく言われますが、いまは一斉に値上げするという状況ではないし、それ自体がおかしなことです。
ただ、いま原油問題を注意深く見ているところですが、段ボール原紙がエネルギーコストの問題、古紙が今後どう動くかという先行き読みにくい状況を抱えていることも確かです。
それと、ナショナルユーザーの一部には、小売り段階での飲料その他商品の値下げに関連して、協力してくれというような動きさえあります。第三世代に移行してきた中での段ボールの作り方の研究、生産の合理化、軽量化などで、ユーザーを満足させることが大切だと思っております。

――平成17年3月期は創業以来最高の記録的な増収増益決算で、平成18年3月期も更に売上高4,000億、経常利益220億、当期純利益130億の予想とそれぞれ2.3%、5.6%、19.1%増の増収増益予想と発表されました。この中で、コスト削減についてはどんな取り組みが行われているのでしょうか。

大坪 04年度(平成17年3月期)の実績だけを見ても、生産コストの削減で11億円、人件費削減4億円、エネルギーコスト2億円など合計24億円の合理化効果をあげました。コスト削減のかなりの部分を占めたのが、原紙製造部門の改善です。抄紙機のヘッドボックスは原料の流れを安定させて、プレスパートでの水分比率を通常50%とされるものを、それ以下にすることで、ドライヤーパートでの負荷を軽減した結果、7億円近いコスト削減効果が生まれました。
これは現場からの提案によるものですが、現場にはまだまだ優れた技術とパワーが秘められていると再認識しました。これからの05年度計画、次の06年度計画までの3年間で約45億円のコストを削減する計画を掲げてきましたが、この勢いで進めば05年度の14億円、06年度13億円を加えて、04?06年度合計では51億円のコスト削減も十分可能と考えております。