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シート市況 研究

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昭和62年シート市況(全)

  • 図1図1

  • 図2図2

  • 表1表1

(1月上旬)
新年早々、「値上げ」の声がしきり。円高デフレと「原紙値上げ、それにバーコードと秋の売上税と、3つも4つもにらみながらの市況展開となりそうである。循環という観点からみると、弱材料がほぼすべて解消した原紙が、まず上り坂にさしかかる頃合いの局面。「長すぎた冬」を抜け出して、明年までも上り坂といった相場観が持たれている。
(1月中旬)
「原紙値上げ」が予告されているのに、段ボール市場の気配は、折柄の不需要期、円高デフレの重苦しいムードが重なって、これまでと何も変わっていない。もっとも、火がつき出すのは2月以降との観測が専らのようだ。値上げがいわれる中で、その前夜、逆に値下がりしてオーバーランということがよくあった。底流で、何がなし気配は動いているのだろうか。
(1月下旬)
「原紙値上げ」の火の手がいよいよ盛んである。昨年と打って変わって、メーカーの本腰ぶりがめだっている。「こんどは上がりそう」という声が広がってきている。しかし、まだ、段ボールメーカーはシンと静まり返ったまま。ただし、値上がりを見越して黙々と在庫の積み増しに動いている気配。不需要期ながら、原紙の荷動きは活発のようだ。
(2月上旬)
「毎度お騒がせ」のチリ紙交換の声が、少しずつ賑やかになってきた。また街の中で、リヤカーにいっぱい段ボール古紙を積んだ回収人の姿がぐんとめだってきた。末端の、こうした動きが期せずして社会全般、ユーザー全般へのPR基盤を形づくり、先行きの「段ボール値上げ」への熟成過程ともなる。それにしても、昨年は、こういうことも何もなかった。
(2月中旬)
業界のムードが、年明け後どんどん明るい方向、前向きに変わってきている。折柄、オーストラリアで開かれたICCA国際会議で、諸外国の段ボール業界事情が明らかにされ、「日本だけ例外」といった状況がかなり大きな刺激にもなっている。シート市況は、各地区とも完全に底入れ状態。値上げへの準備過程の形勢に移りつつあるようだ。
(2月下旬)
段ボール値上げが、いよいよ来る4月出荷分から実施の大勢。業界の諸々方々にまずは観測気球が打ち上げられ、つれて「値幅」の頃合いの感触打診、シートとケースのバランスなど、業界のコンセンサス形成に向けてのうごきがはじまった。趨勢的には昭和55年6月のピークから7年間下げ続けたあとの市況反転。国際市況の制約下で、しかし、先は長い。
(3月中旬)
「段ボール値上げ」がはじまると、いつもそうだが、いわゆる"安値品"が瞬間的に消滅してくる。とくに、原紙市況の反転期には、スソ物ほどコスト上昇の影響を受け易いから、なおさらだろう。市況の流れが漸く変わった。実質的には指折り数えると6年半ぶり。これを反映して日銀のシート市況指数は2月から反転している。情勢の先どりだろうか。
(3月下旬)
まだ多少、過去のまぼろしが残っている。だが、後もどりはないのだろう。だから、製函メーカーにとって、いま値決めするシートの仕入れ価格が、期待できる販売価格との見合いでどのあたりまでが限度か、これまでになくはっきり浮かんでいる。こんどは、「まあ」や「大体」が交渉当事者の双方にとって禁物の様子。3月下旬、漸く中盤にさしかかる形勢。
(4月上旬)
シート値上げの大勢がほぼ固まった。シートメーカーでは「99%まで交渉完了、いよいよこのあとケース値上げの本番に全力投球」という雰囲気に変わっている。安値が一気に整理されて、実勢50円以上の新相場に書き替えられてくるものとみられる。ただし、目下は「了解がとりつけられた」段階。まだ多少の起伏はありそう。
(4月中旬)
「不安の時代」である。米政府高官の発言ひとつで円平価が上に下に大きく振れ動く。一体全体、いまの円高がどこまで進むのか、誰にも皆目見当さえつかめない。日本航空はドルの先物予約で巨額の差損を蒙ったというし、半導体摩擦で米政府の制裁というドラスチックな問題も遂に現実となった。段ボール市況へのこの不安のはね返りが要警戒だろう。
(4月下旬)
シート市況が反転して、公平な見方で知られる日銀卸売物価のシート指数も4月上旬上昇した。実勢価格が本当の意味で出揃うのは5月下旬から6月にかけて。但しケース指数は何の動きもなかった。需要動向はどうも一進一退というより、更に一段の円高がひびいて、ムード的に逆風ぎみ。天気と景気との綱引きの感触のようだ。
(5月上旬)
「波」は、一定の方向から「風」が吹きつけることによって起こる。最初は細かなさざ波も、風が吹きつづけるうちに、波と波とが次第に合体して白波が立ち、やがて大きなうねりに高まって行く。段ボールの市況は、一つの波動という意味で、波と同じ原理であるに違いない。風はこの場合、「コスト条件」だろうか。条件が変わらない限り波は次第に高まって行く。
(5月下旬)
段ボール値上げの時期になると、この欄の表示には非常に気苦労が多くなる。事実、段ボール市況というのは、他の多くの原材料と違って、単純な数字では表示しにくい性質である上に、ともかく一旦仕切っておいて、あとで世間一般の情勢をみて手直しをするとか、いわゆる定価販売がなかなかなじまないものだから、変動期が厄介である。6月中旬には出揃うのか。
(6月上旬)
段ボール市況の立て直しが進み、ちょっと振り返ってみただけでも、半年前(昨年)とは様変わりの情勢。大手メーカーが相当以上にハラをくくってやっている気迫が市場に顕著に現われている。「市況はムード」の要素も大きいが、以前の"後向き"が前向きに変わると、あれもこれもと変わる。製函メーカーも「流れには逆らえない」といった表情。
(6月中旬)
今回の段ボール価格修正は、終結宣言なしのような形で、7月までも引きつづき進行形となりそうだ。ケース価格の修正交渉が押しつ押されつで、一歩一歩の歩みであるほか、大どころの青果物が控えている。おそらくは夏休みまで各社、営々たる努力がつづきそうである。シートも大勢決着だが、地固めはまだ少々。「3カ月」では終わらなくなったようだ。
(6月下旬)
昨年のいま頃は、猛烈な円高デフレ不況の直撃を受けて、段ボール需要も早晩マイナスに変わるに違いないと思われていた。1年経ったいまは、ちょうど潮が次第に満ちて来るような需要の手応えが感得されつつある。ごく静かに、先行き展望の幕が上げられてくる印象である。とはいっても、まだ不況の真っただ中。「あと半年」の経過が必要だろうか。
(7月上旬)
どうやら、今年の前半戦は終わった。市況は確かに反転したが、実勢は公称からはだいぶ下回った。やがて、夏にでも公称の手直しが必要になりそうだ。ごくごく常識的にいえば、円高不況でこれほど周囲の環境が悪い中だから、第一ラウンドから希望通り世の中、向こう様が動いてくれるはずがないのかも知れない。原紙情勢も微妙にひびいている。
(7月中旬)
局面が、また微妙に変わってきた。シートメーカー大手各社が「シート価格は形の上で、完全に通っているが、内実は、何となくはっきりしない玉虫色。いわば綱引き状態で、これからがコンプリート化する正念場」として、7〜9月も引き続きケース値上げとも交渉継続の姿勢を更に強めて行く方向を鮮明にした。製函メーカーの立ち遅れたケース値上げに催促のムード。
(7月下旬)
昨年の場合は、5月の東京サミットのあと、いちだんと激烈な円高情勢が繰り広げられた。おかげで折角の段ボール値上げも、原紙値上げも白紙に戻った。需要も、ユーザーの生産手控えで急速に落ち込んだ。そんな昨年の「下がり藤」に対して、今年の5月→6月は「昇り龍」。需要の伸びも6月は8%台に達しそう。あと3月か半年経つと、市況のモヤモヤも完全に雲散霧消だろう。
(8月上旬)
猛烈な円高の影響でマイナス成長は必至と思われた昨年ですら前年比2.9%伸びた段ボールが、この6月以降、すっかり本来の調子を取り戻してきたようだ。ここまで来る過程が大変だったが、景気の先行き展望もまずまずだし、この先は大体において楽観していてもよいようである。来年の春は、もう一段がっちり腰の入った値上げになるか。
(8月中旬)
景気上昇過程の、いまは入口にある。市況感、相場観もこの春先から夏場にかけてが、これまでの本質的な弱気から、これからの本質的な強気に向けての移行期の形勢。「もうひとつ、はっきりしない玉虫色」といわれたシート市況の綱引きも、そうした中で、旧盆休みの水入りをはさんで、いよいよ最終決着の段階。過渡期がもうすぐ終わろうとしているようだ。
(8月下旬)
ジュートライナー、および中芯原紙が、10月出荷分からキロ当たり5円の再値上げを実施するむね、アナウンスされた。かねて予想されていたところだが、景気回復・上昇期におけるいつものパターンがはじまったようである。値上げが値上げ(前回)を踏み固め、更に上をめざして波状的にやってくる。段ボール市況も、同様に踏み固められる方向に向かったようだ。
(9月上旬)
本州製紙が、先にゴールド製紙の閉鎖を決めたと思ったら、返す刀で鶴崎パルプの吸収合併を決め、いずれも10月1日から新体制でスタートすることになった。長い間、不振にあえいで来た段ボール原紙も、設備廃棄や企業撤退、合併、その他もろもろの合理化と需要回復が重なって、もうあとひと息。段ボール産業の基盤の変化が大いに注目されるだろう。
(9月中旬)
9月17日、公取委の立ち入り調査が中部地区の段ボール事業所で行われて、当面、その市場への影響が注目されている。中でも、段ボール原紙は、ジュートライナー、内装用ライナー、中芯原紙が10月分からそれぞれキロ5円アップの線で動いてきているが、公取委の調査を機に、段ボールメーカーの原紙値上げへの抵抗も強まりそう。
(9月下旬)
日銀を中心に「インフレ警戒論」がいわれ出している。それに対して、大蔵省筋ではこれまでの卸売物価の大幅下落を指摘して、多少の反騰にそう神経質になる必要はないとしているようである。段ボール産業の立場からみると、大蔵省の解釈の方が得心いくようである。古紙や原紙の状況だけを考えても、ただ抑えつけるだけで済むこととは思えないのだから。
(10月上旬)
今年の段ボール需要の推移は、大方の予想以上といって差し支えないだろう。特に、6月以降の夏場からは、景気回復に好転の影響が重なり合って大きく伸びた。しかし、需要の量的な伸びの反面で、"価格の伸び"は全くさえず、業界の収益回復状況は、どこか中途半端な様子がつづいている。ここまで来ると、年内はもう情勢変化が特になさそう。
(10月下旬)
性急な考え方からすれば、今年の段ボール値上げは「失敗」の範疇に入るのかも知れない。しかし、値上がりした翌月から値下がりが始まるといったような、過去の段ボール価格の特徴的な動き方からみると、弱みを内在したままの見掛けだけの値上がりよりも、いまの状況の方がよほど健全というか、ハッピーな状態といえなくもない。市況は全く堅調そのもの。
(11月上旬)
6月から一転して大幅増加に転じた段ボール需要は、9月〜10月は各地で正に記録的な活況だったようだ。10月をピークに、11月に入ってからは「10月ほどではない」感触とされるが、それでもなお忙がしさは何も変わりない。昭和62年は、業界の誰にとっても"思いがけぬ好転"だったようである。株安・証券安・ドル安の影響など、懸念材料は残るが。
(11月中旬)
段ボール市況がいまのように「安定」したのは、何年ぶりだろうかと思われるほど堅調に推移している。市況商品の市況というのは、いつもいわば"綱引き"のようなもので、引く力の強弱次第で"じわじわと引く"のか"ジリジリ引かれる"のか、大概はそのどちらか。いまは、需給双方の力が何年ぶりかで全く均衡というような形勢である。
(11月下旬)
需要と供給のバランスが、いま微妙に重心を供給側の方に移動しつつある感触。いいかえると、需要が供給力に一旦追いついてしまうと、現在の情勢では容易に供給力が補充できないだろうから、"売手市場"的な様相が一層強まるとか、相当の期間つづくとかということになりそうである。段ボール産業界も漸く好況期を迎える形勢。
(12月中旬)
鉄鋼とか、セメントとか、他の基礎的な資材で、いま実際に日本国内の市況を左右しているのは韓国や台湾などのアジアNICSだという見方が多いようである。段ボール原紙も、潜在的にはそういう要素が極めて大きいから、今年の台湾の大増設で、あるいは相当量が日本に流れてくるかとも観測された。現実には内需で手いっぱいの様子。問題はまだ先か。
(12月下旬)
今年は段ボール原紙価格もシート価格、ケース価格も、もうひとつはっきりしない、中途半端な形で終わった。しかし、来年はいよいよ本格的な価格修正の年になると思われる。もっとも、以前と違って、供給側の一方的な、恣意的な値上げが通るような基盤は何もない。円高メリット、オイル安、コストダウン努力をおり込んだ上でのリーズナブルな値上げだろうか。