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第10章 印刷作業

印刷作業で最も注意しなければならない点は、印刷工程における段ボールの品質劣化を出来るだけ少なくし、正確で美しい印刷仕上りを完成することである。外観的な仕上りには十分注意が払われ、欠陥の発見と対策はたてられるが、品質としての劣化は、作業中に発見されにくいので、作業標準および技術標準を設定しておく必要がある。
印刷作業における段ボールの品質劣化で最大のものは、段つぶれの現象である。

1.印刷における段つぶれ
(1)フィードロールによる段つぶれ
印刷機のフィードロールの間隔の調整が悪いと、段つぶれ、あるいは滑りの原因となる。また、左右に差異があると送りが正常を欠き、斜めに送られることとなる。
ロールに対する加圧力の調整不備も段つぶれの原因となる。これらの調整の基準は、工場において段ボールと機械に適応した管理水準を求めておかねばならない。
(2)版胴と印圧ロールによる段つぶれ
通常、段つぶれと呼ばれるもので、適正な印圧でなければ、段つぶれ、かすれ、マージナルゾーンの原因となる。印圧は、インキの種類、図形、印版硬度により異なるので、工場では適正な管理水準を設定しておかねばならない。段つぶれは、段ボール箱の圧縮強度を低下させる大きな要因であるから、印刷作業で十分注意しなければならない。
(3)印刷図形
印刷図形の面積(ベタ印刷あるいは細字印刷)、印刷位置により、箱の圧縮強度が劣化することは常識となっている。これは、印圧により段ボールの段をつぶすことが原因であり、図形のデザインにも注意しなければならない。
(注)マージナルゾーン=印版の端(ハシ)にインキが盛りあがる現象。印刷面のインキ転移が端部だけ濃くなる。

2.給紙機構の種類および調整
(1)給紙機構の種類
(イ)チェーンコンベヤ方式
縦通しプリンタに使用されているもので、段ボールを1枚ずつコンベヤに乗せ、給紙する方式。段ボール印刷の主流がプリスロ、フレキソ印刷に移行している現在では旧式に属するものである。
(ロ)キッカ方式
プリスロおよびフレキソ印刷機は、高速回転のためキッカ方式が採用されている。この方式は、給紙台上に段ボールを積み上げ、キッカ爪により下から段ボールを1枚ずつ引つ掛け、キッカバーの往復運動により送り出し、フィードロールにより印刷輪転ユニットに給紙される。
キッカの爪の厚さは、段ボールの段の高さ(段ボールの厚さ)により調整しなければならない。通常、A段では2.5mm、B段では1.5mm位のものが使用されている。E段は薄いため、給紙は不可能ではないが、困難である。
(ハ)サクション方式
前述のキッカ爪により送り出す替りに、真空吸引装置のテーブルを用い、下から1枚ずつ吸引しながら送り出す方式である。この方式の特色は、(i)不定形の段ボール、(ii)反った段ボール、(iii)薄い段ボールなど、キッカ方式で給紙不可能、あるいは困難な段ボールを給紙することができる。
(2)給紙機構の調整
印刷位置と給紙のタイミングの調整が必要である。給紙台の目盛を基点に合せ、段ボールの幅方向寸法(段ボールの給紙進行方向の寸法)によりキッカ位置を調整する。給紙機構の調整と、段ボールの品質劣化とは密接な関連があり、印刷工程の重要管理項目となっている。
(i)フィードロールの間隔段ボールの厚さによる間隔調整ロールの平行度の調整
(ii)フィードロールの加圧段ボールの厚さによる調整、左右加圧の調整
これらの調整が不備な場合には、段ボールの送りにスリップを生じ、斜めに曲って給紙されたり、段を異常につぶし、品質の劣化、不良発生を招く結果となる。

3.フレキソ印刷
段ボールの印刷は、高速・高能率化のため、フレキソ印刷が増加し、将来は印刷の主流をなすものと思われる。従来の油性、速乾性インキの印刷方法と異なる点を、十分知識として吸収しておかねばならない。
(1)フレキソインキ
従来の、段ボール印刷に使用されてきた速乾性インキと全く異なり、瞬間乾燥性であり、低粘度で、流動性が高い液状のインキである。このため、印刷の品質に及ぼすインキの特性として、粘度管理が重要なポイントとなる。現場では、簡単に粘度測定のできるザーンカップ粘度計が使用されている。
(2)フレキソ印刷の機構
(イ)フレキソインキは、低粘度で流動性が高い液状であるため、速乾性インキに比較して、インキの練りが必要なく、印刷機にも練りロールがない。ロールは、インキ量を調整するゴムロールと、印版にインキを移すアニロックスロールだけで、インキをポンプにより常に循環させるシステムとなっている。
(ロ)印版にインキを移すロールとしてはアニロックスロールが使用される。アニロックスロールは、金属ロールの表面に機械彫刻を施し、その凹部にインキを保留し、転移する方式である。機械彫刻であるため精度も高く、均一なインキ量を印版に転移することが出来る。インキが液状で少量転移されるため、印版の厚さの均一精度も、必然的に高いものが必要となってくる。
機械彫刻の形状には、次の3種類(図-8参照)が使用されている。
ピラミッド型クオドラ・グラビア型トリ・ヘリコイド型

彫刻寸法は、通常、1インチ幅の網目の数を示すメッシュの単位が使用される。150〜200メッシュで、凹部の深さは30〜50ミクロン位である。
(ハ)アニロックスロールへのインキ転移を均一にするため、ゴムロールが使われている。ゴムロールは広幅の場合、アニロックスロールに押し付けられ湾曲するため、中央部の径を太くしたクラウンの付いたロールが使用される。
ゴムロールとアニロックスロールの周速度は、ゴムロールの方を遅くしている。これはインキの泡立ち、飛散を防止し、絞り調整を効果的に行わせるためのものである。
(3)フレキソ印刷の特色
フレキソインキおよび印刷の機構で述べた事が特色となる。
(イ)乾燥時間が瞬間的で、箱の仕上げ工程へ直結できる。生産性が高い。
(i)フォルダ・グルアへの直結(フレキソ・フォルダ・グルア)
(ii)ダイカッタへの直結(フレキソ・ダイカッタ)
(ロ)液伏であるため、流動性が高く、アニロックスロールを使用するため、低い印圧で細かい印刷も可能である。印圧が低いため、品質の劣化も少なく、マージナルゾーンの発生も少ない。箱の圧縮強度も、従来のインキの印刷と同一条件で比較すれば高くなる。
(ハ)仕上工程との直結による工程時間の短縮と、印刷の高速化により生産性は高くなる。インキの価格は高くなるので、小ロットではインキのコスト高となる。
(ニ)印刷の仕上りが、インキ粘度と関係するため、十分粘度管理を行わねばならない。特に長時間の印刷では、印刷途中の粘度変化に留意しなければならない。

4.インキ量の調整
(1)プリンタ・スロッタ(速乾性インキ)
インキつぼのインキは、常に均一な膜厚としてロールに供給され、各ロールで練られ、印版に転移されねばならない。インキの粘度に関係するが、インキつぼの調整板の調整に注意しなければならない。調整ねじは、中央部より両側へ調整してゆくのが一般であり、これは調整板に歪みが生じないようにするためである。移しロールから印版にインキが転移される場合、強く押すとインキ膜がうすくなり、躍るので、かすれの原因となる。
(2)フレキソ印刷
フレキソ印刷については10-3で述べた通りで、インキの粘度管理が重要である。
アニロックスロールとゴムロールの押し付け圧も関係するが、圧が強く粘度が低くければ量が少くなり、反対の場合は増加する。

5.刷色の順序および位置合せ
(1)刷色の順序
刷色の順序は、淡い色から濃い色に移るのが一般的である。油性、速乾性インキの重ね刷りの場合は、1色目と2色目のタック(ねばり)に強弱を付けておかねばならない。1色目は強く、2色目は弱くする。また、1色目は出来るだけ薄く、インキをしぼる。
(2)印刷位置合わせ
印刷位置合せは、キッカの位置を標準点(0点)にセットすることから始まる。印刷位置は、印版と版胴の取り付け位置の関係で決定される。通常作業標準で、正確に印版が版胴にセットされるように設定されている。
位置合せのため試験刷りを行ない、ずれを測定し、版胴を微調整するが、上刷りと下刷り印刷方式では、調整方向が反対となる。
印刷準備作業の順序をまとめると次の通りである。
(イ)キッカ位置のセット
(ロ)印版と版胴のセット
(ハ)試験刷り
(ニ)版胴の微調整
(ホ)確認、再調整

6.印刷途中の機械停止方法および停止時の処置
印刷途中の機械停止は、運転再開時の安全確認と不良防止に注意しなければならない。
(1)給紙機構の確認(キッカ部のバックガイド)
(2)回転速度の確認(低速)
(3)フレキソ印刷ではロールを回転させ、インキの固化を防止

7.印刷終了後の処置
(1)各調整箇所の標準位置の確認(2)インキつぼおよびインキロールの洗浄(3)印版の洗浄と点検(4)保全点検(5)工具点検

8.印刷不良
(1)油性・速乾性インキの印刷不良
(イ)かすれ印刷インキが、かすれる状態で、インキが均等に印版に転移しないため生ずるのが主原因である。インキの練り、移しロールの圧、印圧の調整が対策となる。
(ロ)マージナルゾーン印版の端に生ずる現象で、印圧の過大、インキ量の過剰等に原因する。
(ハ)逆トラッピング2色刷りの場合、下刷りインキのタックが、上刷りインキのタックより低いため、上刷りが出来ない状態を云う。通常、下刷りインキのタックを高くし、2色目の上刷りインキのタックを弱くする。
(ニ)細字のつぶれ印圧が掛けられるため、圧を受ける面積の小さい細字は、ベタ印刷部より荷重が大きくなり、つぶれ易い。通常、細字のゴム硬度を高くして防止している。
(2)フレキソインキの印刷不良
(イ)かすれ印刷インキがかすれる状態で、インキが均等に印版に転移しないために生ずる。アニロックスロールの磨耗、インキ粘度の不適正、ゴムロール圧の不適正が原因となる。
ロ)よごれ印刷されていない部分がよごれる状態で、インキの乾燥が遅いか、インキ量が多いために発生する。
(ハ)およぎベタ部分にインキが不均等につく状態である。インキのうすめ過ぎが原因となるので、新しいインキを使用すればよい。
(ニ)あわインキが発泡する状態で、少量の消泡剤を添加する方法がとられる。また、粘度が高いために発生することもあるので、粘度の低いものを使用する。